「上塗り」とは、外壁塗装の仕上げとして最後に行う塗装工程です。
外壁の見た目や保護性能を決定づける最重要工程ですが、その重要性や基本的な作業工程について詳しく知らず、依頼に不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、外壁塗装における上塗りの重要性や下塗り・中塗りとの違い、作業間隔や乾燥時間などを詳しく解説します。
上塗りに使用する各種塗料の費用相場も紹介していますので、外壁塗装の依頼を検討している方はぜひ最後までご覧ください。
外壁塗装の「上塗り」とは?下塗り・中塗りや2回塗りとの違いは?
外壁塗装は、基本的に「下塗り」「中塗り」「上塗り」の3段階に分けて塗装を行います。
上塗りは3段階のうち仕上げとして最後に行う工程となっており、外壁の見た目や保護性能を決定づける役割を持つため、全工程の中でも特に重要な作業です。
上塗りに手抜きやミスがあると、外壁の美観が損なわれることはもちろん、塗料の性能が十分に発揮できず、メンテナンスコストの増加や建物の寿命短縮などといった大きなトラブルにつながる可能性があります。
以下からは、下塗りや中塗り、2回塗りとの違いについて詳しく見ていきましょう。
上塗りと「下塗り」の違い
上塗りと下塗りは、外壁塗装における役割や、使用する塗料が大きく異なります。
上塗りが外壁の見た目や性能を決定づける、外壁塗装の中心的な役割を持つのに対し、下塗りが持つのは外壁と塗料を密着させる接着剤のような役割です。
下塗りなしで施工すると、塗膜が剥がれやすくなったり、塗料が外壁に浸透してムラができたりと、せっかくの塗装もあまり意味をなしません。
また、使う塗料も上塗りとは異なり、下塗りでは「プライマー」や「フィラー」といった専用塗料を外壁の劣化状況などによって使い分けます。
下塗りの重要性や塗料についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:外壁塗装で下塗りは不可欠!下塗りの重要性と役割、作業手順を解説
上塗りと「中塗り」の違い
上塗りと中塗りは、基本的に同じ塗料を使用するため、大きく異なる点はその役割のみです。
上塗りは外壁の見た目や保護性能を決定づけることが主な役割ですが、中塗りは塗装を均一に整えたり耐久性・性能を高めたりと、上塗りの質を向上させるための補助的な役割を担っています。
あくまでサポート的な作業ではありますが、中塗りを省略するのはNGです。省略した場合、ムラや凸凹ができて完成後の見た目が悪くなるだけでなく、十分な厚みを確保できず、耐久性や保護性能の低下を引き起こします。
中塗りの重要性についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:外壁塗装の「中塗り」とは?上塗りとの違いや乾燥時間、費用相場まで解説
「上塗り2回」は「中塗り・上塗り」と同じ意味
外壁塗装の見積もり書などでよく見る「上塗り2回」とは、「中塗り・上塗り」の工程とまったく同じ意味を持ちます。
これは、上述したとおり、中塗りと上塗りが同じ塗料を使うことが主な理由です。
外壁塗装の工程を「下塗り・上塗り2回」と表記する業者もいれば、「下塗り・中塗り・上塗り」と表記する業者もいるため、勘違いのないように注意しましょう。
なお、施工ミスや手抜き工事を防止する観点から、中塗りと上塗りに使う塗料の色を変える「色分け施工」を勧められる場合があります。
色分け施工には、塗装作業の進捗が一目瞭然となるメリットがある一方で、塗装の耐久性・保護性能を低下させるうえに、塗料代や将来的なメンテナンスコストも高くなる可能性があるため要注意です。
たしかに施工ミスや手抜き工事は防止できますが、そのような心配がない業者に依頼するのであれば、基本的には同じ塗料での施工をおすすめします。
外壁塗装における上塗りの重要性3ポイント
上塗りは、外壁塗装の仕上げ工程として非常に重要な役割を担っています。
ここからは、上塗りの重要性についてさらに詳しく見ていきましょう。特に注目すべきポイントは以下の3つです。
- 外壁の見た目・仕上がりを決定づける
- 外壁を風雨や紫外線から保護する
- メンテナンスの手間・コスト削減も期待できる
外壁の見た目・仕上がりを決定づける
上塗りは、外壁の最終的な見た目や仕上がりを左右する重要な工程です。
外観の大部分を占める外壁に大きく影響するため、家の印象を明るい雰囲気にするのも落ち着いた雰囲気にするのも、おおよそは上塗りで決まります。
上塗りが適切に施されなかった場合、気泡や色ムラができたりと見た目を損なう可能性がありますが、下塗り・中塗りの上からさらに重ね塗りすることで、ムラのない均一で美しい外壁に仕上がるのです。
外壁のみならず家全体の印象に影響を与える特に重要な作業のため、信頼できる業者とよく相談しながら適切に施工してもらいましょう。
なお、用いる塗料によっては、規定以上の厚さを確保するために、上塗りをさらに2回3回と重ね塗りする場合もあります。
外壁を風雨や紫外線から保護する
上塗りは、外壁を風雨や紫外線から保護する役割も担っています。
上塗りに使われる塗料には「防水性」や「遮熱性」などの機能が備わっており、メーカー指定の塗布量・方法に沿って塗装することでその効果が発揮され、様々な外的要因から外壁を守ることが可能です。
塗料が本来持っている保護性能が、上塗りの施工ミスや手抜きなどで十分に発揮されなかった場合、風雨や紫外線による影響をもろに受け、劣化の進行が著しく早まります。
結果的に、建物そのものの寿命を縮めてしまう可能性も。長く住む家だからこそ、上塗りを適切かつ確実に行うことが重要です。
メンテナンスの手間・コスト削減も期待できる
上塗りを適切に行うことは、外壁の見た目や性能だけでなく、メンテナンスの手間・コスト削減といった、経済的なメリットも期待できます。
下塗り〜上塗りまでの塗装を適切に施工した場合は、塗料の持つ性能がしっかり発揮されるため、塗膜や外壁に起こる経年劣化の進行を遅らせることが可能です。
結果として、頻繁な補修や耐用年数を待たずして塗り替える必要性が減り、将来的なメンテナンス費用を削減できます。また、防汚性や防カビ性などが付加された塗料を使用することで、清掃・洗浄などの日常的なメンテナンスの手間も減らせます。
もちろん、塗料が耐用年数を迎えた際には再塗装が必要です。しかし、適切な上塗りをしなかった場合に比べて、長期的な手間やコストを大幅に削減できるのは非常に大きなメリットとなります。
上塗りおよび外壁塗装の作業工程・乾燥時間
上塗りは、外壁塗装の全工程の中でも特に重要な作業です。以下からは、外壁塗装・上塗りを施工依頼するにあたって知っておくべき、以下2点について詳しく見ていきましょう。
- 外壁塗装の作業工程・スケジュール
- 上塗りと中塗りの間隔・乾燥時間
外壁塗装の作業工程・スケジュール
外壁塗装の一般的な作業工程は以下の9ステップです。そのうちの上塗りは、中塗りが完了し、しっかり乾燥させた翌日以降に行います。
工程順 | 施工内容 | 施工スケジュール |
1 | 足場の仮設 | 1日目 |
2 | 高圧洗浄 | 2〜3日目 |
3 | 下地調整 | 4日目 |
4 | 養生 | 4日目 |
5 | 下塗り | 5日目 |
6 | 中塗り(上塗り1回目) | 6日目 |
7 | 上塗り(上塗り2回目) | 7日目 |
8 | 完了検査(最終チェック) | 8日目 |
9 | 足場の撤去・引き渡し | 9日目 |
外壁の状態や塗装規模にもよりますが、上塗りの作業自体はおおよそ1日。工事全体は約1〜2週間ほどで終了します。
ただし、雨が降っていたり高湿度・低気温だったりと、乾燥しにくい環境下で施工した場合は、さらに工期がかかる可能性もあるため注意が必要です。
適切な工程で無理のないスケジュールが組まれているかは、見積もりや打ち合わせの段階でかならず確認しておきましょう。
上塗りと中塗りの間隔・乾燥時間
外壁塗装を行う際は、下塗り・中塗り・上塗りの段階ごとに一定間隔を設けて、塗料をしっかり乾燥させる必要があります。乾燥時間の目安は以下のとおりです。
- 春〜秋:3〜4時間以上
- 冬:5〜6時間以上
施行日の気温や湿度、使用する塗料などによっても前後するため、かならず使用する塗料の説明書や注意書きを確認しましょう。
なお、乾燥時間が短いと、塗膜に以下のような施工不良が生じる場合があります。
【乾燥不足で起こる症状】
外壁の見た目が悪くなるだけでなく、塗装の劣化進行を早めることになり、メンテナンスの手間やコストも余計にかかってしまいます。
また、施工直後では症状が分かりにくく誤魔化されてしまう場合もあるため、かならず信頼できる業者に依頼し、手抜きやミスのない施工をしてもらうことが大切です。
関連記事:外壁劣化の原因は?主なサイン・種類と補修方法を解説
上塗りに用いる塗料の種類と費用相場
外壁塗装に使用する塗料には様々な種類がありますが、一般的な住宅に使われる主な上塗り塗料は以下の4種類です。
リフォーム予算や自宅の条件を考慮して、自分のケースに適した塗料を選びましょう。
種類 | 耐用年数 | 費用相場(平米単価) |
アクリル系塗料 | 約3〜8年 | 約1,000〜1,800円/㎡ |
ウレタン系塗料 | 約5〜10年 | 約1,800〜2,500円/㎡ |
シリコン系塗料 | 約7〜15年 | 約2,500〜3,500円/㎡ |
フッ素系塗料 | 約12〜20年 | 約3,500〜5,000円/㎡ |
※費用相場は中塗り〜上塗りまでを合計した単価です。
価格・性能面でのコストパフォーマンスを重視する方や、どれにするか迷っている方には「シリコン系塗料」がおすすめ。多少コストをかけても、将来的なメンテナンスの手間やコストを抑えたい方には「フッ素系塗料」がおすすめです。
なお、塗料を選ぶ際の注意点として、上塗り塗料は乾燥すると色が濃くなる性質があることを理解しておきましょう。塗装してから「思っていた色と違う!」とならないように、塗料についても施工業者としっかり相談しておくことが大切です。
外壁塗装に用いる塗料の特徴や選び方について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事もあわせて参考にしてください。
関連記事:外壁塗装の塗料4種類の選び方を解説!相場・耐用年数から最適な塗料を選ぼう
上塗り塗装は外壁の見た目・性能に直結する最重要工程
本記事では、外壁塗装における上塗りの重要性や下塗り・中塗りとの違い、乾燥時間や費用相場などを解説しました。
上塗りは、外壁の完成後の見た目や保護性能を決定づける最重要工程です。
手抜きや施工ミスがあると、外壁の見た目が悪くなるのは前提として、メンテナンスの手間・コストがかさんだり、建物そのものの耐用年数に影響を及ぼしたりと、大きなトラブルにつながる可能性があります。
そのため実際に依頼する際は、上塗りを適切に施工可能な、実力や実績のある優良業者を選ぶことが大切です。かならず3社以上から相見積もりを取得し、自分の依頼条件や希望に適した、より信頼できる業者に依頼しましょう。