ウレタン塗料は、プロの建築現場からDIYまで幅広く採用されています。価格が比較的安いことから外壁に採用されるケースも多いですが、実際に使用する際にはいくつか注意点もあります。
ここでは、ウレタン塗料のメリット・デメリットを解説するとともに、費用相場を紹介します。外壁塗料選びに困っている方は、ぜひ参考にしてください。
外壁塗装の塗料に関する詳しい解説はこちら
ウレタン塗料とは?
ウレタン塗料とは、ウレタン系樹脂を主成分としている塗料のことです。各メーカーからさまざまな種類が発売されており、外壁だけでなく家具や車、バイクなどにも使用されています。幅広い塗装に使えることから、近年はDIYにも人気があります。
ウレタン塗料の種類
ウレタン塗料には、「ポリウレタン樹脂塗料」と「アクリルウレタン樹脂塗料」の2種類があります。
ポリウレタン樹脂塗料 | 化合物であるポリオールと硬化剤のポリイソシアネートを配合して製造した塗料。耐久性・弾力性などの性能を向上できる。 |
アクリルウレタン樹脂塗料 | アクリル樹脂を用いたポリウレタン樹脂塗料。仕上がりや耐候性に優れる。 |
現在使用されているウレタン塗料は、アクリルウレタン塗料が主流となっています。
水性ウレタン塗料と油性ウレタン塗料の違い
ウレタン塗料は、溶剤にウレタン樹脂を混ぜて作られているため、塗料を溶かすときの溶剤の違いによって「油性」と「水性」の2種類に分けられます。
水性ウレタン塗料 | 水を用いて作られた塗料。硬化まで時間がかかり、塗膜の密着性が弱いが、臭いがきつくないため室内や住宅街でも使用が可能。 |
油性ウレタン塗料 | 石油系溶剤を用いて作られた塗料。耐久性・密着性は良いものの、臭い(溶剤臭)が強く、人体に害を及ぼす危険性も。 |
水性塗料は化学物質を使っていないため、油性に比べてリスクが少なく、壁に密着しやすい特徴があります。
対して油性塗料は耐久性と密着性に優れており、低コストで作業が早く終わるメリットがあります。しかし、溶剤臭が強く人体に害を及ぼすリスクがあるため、取り扱いには注意が必要です。
ウレタン塗料の費用相場と耐用年数
ウレタン塗装は他の塗装と比較して、施工費用が安く、耐用年数も低い傾向にあります。
塗料の種類 | 施工費用(1㎡あたり) | 耐用年数 |
ウレタン塗料 | 1,500~2,500円 | 5~10年 |
アクリル塗料 | 1,000~1,800円 | 3~8年 |
シリコン塗料 | 1,800~3,500円 | 8~15年 |
フッ素塗料 | 3,000~5,000円 | 12~20年 |
耐用年数が高くなるにつれて、施工費用も高くなる傾向にあります。
施工費用が安いのはアクリル塗料ですが、ウレタン塗料はアクリル塗料よりも耐用年数が多く、コスパは良好です。そのため、一昔前まで外壁塗装といえばウレタン塗装が主流でしたが、近年は耐久性の高いシリコン塗料が主流となっています。
とはいえ、価格はシリコン塗料よりもウレタン塗装の方が安いため、こまめに塗り替えたい方や、建て替えや引っ越しなどの予定がある方におすすめです。
なお、ウレタン塗料には屋内用と屋外用があり、屋内用の耐用年数は15〜20年程度になります。屋根や外壁などの屋外に屋内用塗料を使うと、数年も経たないうちに劣化するので注意しましょう。
シリコン塗料のメリット・デメリットや金額など、詳細については下記の記事をご覧ください。
https://gaiheki-madoguchi.com/articles/1540
ウレタン塗料のメリット
ウレタン塗料には、主に下記3つのメリットがあります。
- 塗料のバリエーションが豊富
- ひび割れや変形に強い
- 高級感ある外観に仕上がる
それぞれについて説明します。
塗料のバリエーションが豊富
ウレタン塗料は、昔から親しまれている塗料ということもあり、各メーカーからさまざまな種類が販売されています。色のバリエーションも豊富で選択肢が多いため、「使いたい色が見つからない」という心配はありません。
また近年は耐久性や防カビ性能を高めた塗料や針葉樹向けハードコート塗料など、さまざまな付加価値を持つ塗料も販売されています。種類豊富なウレタン塗料なら、イメージ通りの仕上がりを期待できるでしょう。
ひび割れや変形に強い
ウレタン塗料の塗膜には、ゴムのように伸びる弾力があるため、ひび割れや変形が起きにくいといえます。
弾性のない塗料を木材に塗る場合、木材は時間とともに形を少しずつ変えるため、経年劣化でひび割れが生じます。しかしウレタン塗装で塗れば面の形に合わせて伸縮するため、ひび割れを防ぐことが可能です。
コンクリートやモルタルなどのひび割れしやすい外壁に塗る場合も、弾性のない塗料だとひび割れが生じます。しかし、ウレタン塗料は密着性や柔軟性に優れているため、下地部分にひび割れが生じても塗装表面にまで及ばず、塗膜の防水性を維持できます。
高級感ある外観に仕上がる
ウレタン塗料で塗装すると、光沢のある塗膜が作られるため、高級感溢れる美しい外壁が仕上がります。新築のようなピカピカの外壁を取り戻せるため、満足できるクオリティに仕上がるでしょう。
ウレタン塗料のツヤ(光沢)には、以下の5種類があります。
- ツヤ有り
- 7分ツヤ
- 5分ツヤ(半ツヤ)
- 3分ツヤ
- ツヤ消し(ツヤ無し・マット仕上げ)
高級感のあるツヤを演出できることから、外壁だけでなく、高級家具やフローリングにも使われます。光沢保持率はシリコンに比べて劣りますが、価格はウレタンの方が安価なので、価格重視で選びたい方におすすめです。
ウレタン塗料のデメリット
ウレタン塗料にはさまざまなメリットがありますが、下記のようなデメリットもあります。
- 耐久性が低い
- 汚れやすい
- 扱いにくい
良い面だけでなく悪い面も把握したうえで、使用すべきかどうか判断しましょう。
耐久性が低い
ウレタン塗料の耐久年数は長くても10年ほどで、シリコンやフッ素などの他の塗料と比べると耐久性は劣ります。塗り替えの頻度が高いため、長期的なコストパフォーマンスは高くありません。
また紫外線の影響を受けやすく、塗膜が黄色く変色することがあります。湿気の影響も受けやすいため、時間の経過とともに光沢感が失われて変色するといった劣化現象が起きやすくなります。
立地条件や気候によっては10年経つ前に劣化する可能性があるため、業者と相談しながら、グレードの高い塗料も検討してみましょう。
関連記事:外壁塗装の耐用年数は10〜20年が限度!寿命を延ばすコツや劣化症状を解説
汚れやすい
ウレタン塗料の塗膜は柔らかく、汚れが付着しやすいという欠点があります。特にツヤ消しの場合、汚れが目立ちやすくなることもあります。
そのため、屋上型の建物で庇や屋根がない場合は、雨だれが目立つため不向きです。
ただし近年では低汚染性に優れたウレタン塗料も登場しているため、ウレタン塗料のメリットを活かしながら、汚れを防ぐことも可能です。
扱いにくい
ウレタン塗料は作業性が悪く、保管や管理面も気を付ける必要があるため、知識と経験豊かな職人でなければ扱いにくい塗料です。
ウレタン塗装で使用される硬化剤は水や湿気との相性が悪く、雨上がりや湿度が高い時期に塗装すると、性能が落ちる恐れがあります。天候や気温などに左右されるので、夏場と冬場では施工のしやすさが変わります。
そのため、ウレタン塗料で外壁塗装を実施する前に、職人やその塗装会社にウレタン塗料での実績があるかどうかもチェックしておくと安心です。
関連記事:優良な外壁塗装業者の選び方を解説!警戒すべき悪徳業者の見極め方とは
ウレタン塗料が向いているケース
ウレタン塗料のメリットとデメリットを踏まえたうえで、ここからはウレタン塗料をおすすめできるシチュエーションを3つ紹介します。
- 外壁塗装の予算を抑えたい
- ベランダを塗装したい
- こまめに塗り替えたい
上記のケースに当てはまる場合は、ウレタン塗料を選択肢に入れてみましょう。
外壁塗装の予算を抑えたい
ウレタン塗装は重ね塗りができるため、廃材が少なく、施工費用を安く抑えることが可能です。外壁塗装にあまり予算を割けない方にはピッタリの塗料だと言えるでしょう。
価格が安い分、耐久性は劣りますが、定期的な塗装が必要とされる店舗等の場所では、コスト面から見てもメリットが大きい塗料だと言えます。住宅の大規模リフォームをする場合も、外壁塗装で浮いた費用を屋内の工事や住設交換に回せます。
施工費用だけでなく、将来のメンテナンス費用も抑えたいなら、耐久性の高い商品を選びましょう。
その他、外壁塗装を安く済ませるためのコツについては下記の記事をご覧ください。
関連記事:外壁塗装を安く依頼する12のコツ!費用相場よりも割安に工事するには
関連記事:【2024年版】外壁塗装の助成金・補助金まとめ|申請方法・条件や注意点を解説
ベランダを塗装したい
ウレタン塗料は密着度が高く弾力があるため、ベランダやコンクリートなどの防水塗料に適しています。
伸縮性が高いため、雨樋や雨戸など複雑なパーツで構成された設備・場所でも塗装が可能です。ひび割れも広がりにくいため、屋根の雨漏り対策にも適しています。
ベランダや雨樋の塗装方法を検討するときは、ウレタン塗料も選択肢に入れてみましょう。
こまめに塗り替えたい
ウレタン塗料は他の塗料と比べて安価ですが、耐久性に劣るため、こまめに塗り替えたい方や、近いうちに建て替え予定がある方におすすめです。
近年は、変色が少ない無黄変タイプや低汚染性・耐候性などに優れた高機能タイプも増えているため、塗り替えの際に検討してみましょう。
ウレタン塗料の特徴を知り外壁塗装に活かそう
ウレタン塗料は商品ラインナップが豊富で、さまざまな場所に使えることから、これまで外壁塗装の主流でした。最近はウレタン塗料よりも耐用年数の高いシリコン塗装に人気が集まっていますが、施工費用が安いことから、現在でもウレタン塗装は高い人気を集めています。
ただし、汚れやすく扱いにくいといったデメリットがあるため、実際に施工すべきかどうかは慎重な判断が必要です。こまめな塗り替えが必要になるので、メンテナンス費用も考慮する必要があります。
近年は低汚染性や耐候性に優れた高機能タイプも登場しているため、ウレタン塗料のメリットを活かした塗装が可能です。塗装業者とも相談しながら、ウレタン塗装を施工すべきか検討しましょう。