クリア塗装は、一般的な色付き塗料と違い、外壁の色やデザインを維持したまま塗装を行えるのが特徴です。
外壁の意匠性を損なわずにリフォームできることから人気が高まっていますが、全ての外壁材に使えるわけではありません。外壁によって向き不向きがあるため、依頼前に把握しておく必要があります。
この記事では、クリア塗装のメリット・デメリットや価格相場などを解説します。クリア塗装が向いている外壁の特徴についても紹介するので、塗料選びに困ったときの参考にしてください。
クリア塗装とは?
クリア塗装とは、無色透明なクリア塗料を用いた塗装のことです。
通常の色付き塗料と違い、クリア塗装に使用する塗料には顔料が含まれておらず、見た目が透明です。そのため、元のデザインを損なわずに外壁材を保護できます。
汚れもつきにくいため、外壁材の耐久性を高めたいときにはクリア塗装が役立ちます。
ただし、同じクリア塗料でも、製品によって機能性や価格が異なるので、住宅環境や予算に合わせて選びましょう。
クリア塗装の価格相場
クリア塗装は通常の色付き塗装に比べて、10~20万円ほど費用を安く抑えられます。
クリア塗装に使用される塗料は、主にアクリル系・ウレタン系・シリコン系・フッ素系の4種類があり、価格はそれぞれ異なります。
種類 | 価格相場 | 耐用年数 |
アクリル系 | 1,000~2,000円/㎡ | 5〜7年 |
ウレタン系 | 1,500~2,500円/㎡ | 10〜12年 |
シリコン系 | 2,000~3,500円/㎡ | 12〜15年 |
フッ素系 | 3,500~5,000円/㎡ | 15〜20年 |
なお、上記4種類の詳細について気になる方・不明な方は下記の記事も参考にしてください。
関連記事:外壁塗装の塗料4種類の選び方を解説!相場・耐用年数から最適な塗料を選ぼう
耐用年数が長いほど価格も高くなりますが、時期や地域などによって価格は変動します。
価格相場はあくまで目安なので、事前に塗装業者から見積もりをもらって実際の施工価格を確認しましょう。
関連記事:【2024年版】外壁塗装の費用相場はいくら?10坪〜100坪の適正価格と安く抑えるコツ
クリア塗装に向いている素材と向いていない素材
クリア塗装には、向いている素材と向いていない素材があります。
サイディングボードや木材には向いていますが、光触媒や撥水処理などの表面コーティングが施されている外壁には塗料がつきにくいため使用できません。
向いていない素材にクリア塗装を施すと、剥がれの原因になります。
塗装をする前に業者と相談して、外壁や屋根に使用できるか確認しておきましょう。
関連記事:外壁材の種類はどれがおすすめ?サイディングの特徴や費用相場とともに解説
クリア塗装のメリット
クリア塗装には、主に3つのメリットがあります。
- 工程が少なく費用を抑えやすい
- ツヤと光沢を出せる
- チョーキングが発生しない
下記から詳しく解説していきます。
工程が少なく費用を抑えやすい
クリア塗装は下地を活かす塗装法なので、施工時間や使用する塗料の量が少なく、費用を抑えやすいメリットがあります。
通常の塗装は、シーラーやフィラーと呼ばれる下塗り材を塗って下地を整えてから中塗り、上塗りを行うため、合計3回塗る必要があります。
対して、クリア塗装の下塗りは中塗りと上塗りの2工程のみなので、通常塗装よりも費用を抑えることが可能です。工程が少ない分、下塗りにかかる時間を省けるため、施工期間を短くできる場合があります。
関連記事:【2024年版】外壁塗装の助成金・補助金まとめ|申請方法・条件や注意点を解説
ツヤと光沢を出せる
クリア塗料は無色透明のため、外壁や屋根に塗装すると保護膜が作られ、美しい光沢感が出ます。外壁にツヤが出れば、新築のように綺麗に見えて、高級感も演出できます。
光沢感には「ツヤ有り」「3分ツヤ有り」「ツヤ消し」などの種類があり、ツヤ度合いの調整も可能です。
チョーキングが発生しない
チョーキング現象(白亜化現象)とは、雨や紫外線によって塗料表面の樹脂が劣化し、その下にある顔料が白い粉になって浮き出てくる現象です。外壁を手で触った際に手に白い粉がついていた場合、チョーキング現象が起きている可能性が非常に高いです。
一方でクリア塗料は、顔料を含んでいないという特徴から、このようなチョーキング現象が発生しません。色あせなどの劣化症状もなく、見た目で劣化が分かりづらいメリットがあります。
クリア塗装のデメリット
クリア塗装にはメリットが多い一方で、次のようなデメリットもあります。
- ひび割れや汚れは保護できない
- 色褪せの補修はできない
- シーリングは塗装できない
下記から詳しく解説していきます。
ひび割れや汚れは保護できない
クリア塗装は外壁や屋根の表面を保護する役割がありますが、ひび割れ汚れなどの劣化症状 の保護はできません。
塗装前に劣化部分の補修は可能ですが、補修跡は透けて見えるため、かえって見栄えが悪くなります。
劣化が激しい外壁や屋根には施工できないので注意しましょう。
関連記事:外壁のひび割れは危険信号!ひび割れ補修の方法と費用
色褪せの補修はできない
経年劣化によって色褪せした外壁にクリア塗装をしても、色の補修はできません。クリア塗装は透明なため、色付き塗料のように補修はできず、色むらがある外壁の補修も難しいです。
若干の色褪せや色むらであれば目立たなくすることは可能ですが、色褪せが激しい外壁には不向きです。
シーリングは塗装できない
シーリング部分にクリア塗装をすると剥がれや割れが起こるため、施工できません。
シーリング材は、ボードとボードのつなぎ目に用いられるゴムのようなものです。塗装工事では、シーリング部分をマスキングテープで覆って塗料がつかないように対策する必要があります。
関連記事:外壁コーキングの劣化を放置するリスクとは?ひび割れの原因や補修費用も解説
クリア塗装がおすすめな外壁
ここまでご紹介したクリア塗装のメリット・デメリットを踏まえて、向いている外壁の特徴を3つ紹介します。
汚れや劣化が少ない外壁
新築時または前回の塗装から10年以内の外壁には、クリア塗装がおすすめです。
比較的劣化が進んでいない状態であれば、クリア塗装を行っても劣化症状が目立たないため、新築時のように綺麗な仕上がりになります。
なお、外壁の劣化状態は新築から8~10年程度で出始めるため、それまでにクリア塗装を使用するのがおすすめです。新築や外壁リフォームなどのタイミングに合わせて行うと良いでしょう。
デザイン性の高い外壁
クリア塗装は無色透明で、外壁の色やデザインを損なうことなく塗装できるため、石目調やレンガ調などのデザイン性の高い外壁材に適しています。
色付け塗装の場合、外壁を塗りつぶすため、元の外壁と同じ色の塗料を選んでも完全に同じ色で仕上げることはできません。
クリア塗装なら色を塗りつぶさずにすむため、気に入った外壁の色やデザインをそのまま残したい場合に適しています。
また、施工後はツヤや光沢が出るため、新築のようにツヤのある外壁を蘇らせたい場合にもおすすめです。
素材の風合いを活かしたい外壁
レンガやタイルなどの素材の風合いを活かしたい外壁には、クリア塗装が向いています。
上述した通り、クリア塗装は無色透明で下地が透けて見えるため、素材の風合いを塗りつぶすことなく、表面をカバーしながら塗装できます。
関連して、打ちっぱなしのコンクリートにもクリア塗装がおすすめです。コンクリートそのままでは防水効果が弱く汚れも目立ちますが、クリア塗装によって表面を保護でき、現代的でおしゃれな雰囲気を維持できます。
クリア塗装が向いていない外壁
続いて、クリア塗装が向いていない外壁の特徴を3つ紹介します。
光触媒コーティングされた外壁
光触媒やフッ素、無機などの特殊塗料でコーティングされた外壁には、クリア塗装ができません。
光触媒とは、抗菌・防臭などの効果を発揮する素材のことで、光触媒コーティング剤を施工した外壁は優れた低汚染性を発揮します。
そのため、特殊塗料が用いられた外壁にクリア塗装をすると、コーティングによってクリア塗料の樹脂が弾かれ、塗膜がすぐに剥がれてしまいます。
その結果、本来の耐用年数より塗料の劣化が早く進む可能性もあるので注意が必要です。
ただし、無機塗料やフッ素塗料にはクリア塗装を行えるものもあるので、一度塗装業者に確認しておくことが大切です。
劣化が進んでいる外壁
前回の塗装から15年や20年以上経過している外壁には、クリア塗装は不向きです。
劣化が進んでいる外壁に無色透明の塗料を塗っても、劣化症状を隠すことはできません。かえって劣化が目立ち、見た目が悪くなる場合もあります。
また、チョーキング現象のある外壁の上からクリア塗装をすると、白ボケしたような仕上がりになってしまいます。
チョーキング現象が起きている外壁にどうしてもクリア塗装をしたい場合は、事前に色付けの塗装をしておくと良いでしょう。ただし、通常より工程が増えるため、コストが高くなる点に注意が必要です。
汚れが目立つ外壁
高圧洗浄でも落としきれないような頑固な汚れが目立つ外壁には、クリア塗装は不向きです。
クリア塗装は無色透明の塗料を使用するため、塗っても汚れは隠せません。汚れが目立つ外壁には、色付きの塗料を使いましょう。
クリア塗装のメリットを活かして外壁を美しく仕上げよう
クリア塗装は、外壁にツヤを出したり保護したりできる優れた塗装方法です。
意匠性の高い外壁をリフォームするときや、外壁の色やデザインを保ちたい場合は、クリア塗装が適しています。
ただし、汚れや傷などが目立つ経年劣化が激しい外壁には施工できないため、劣化症状が出る前に行うのがポイントです。
また、施工できる外壁材は限られており、外壁材の状態によっては色つき塗料を使用したほうが良い場合もあります。
素人では判断できない部分が多いので、外壁塗装について困った際には、下記の記事を参考にしながら、専門知識がある業者に相談してみましょう。