モルタル外壁は、セメントを原料に砂・水を混ぜた素材を塗ることによって仕上げる外壁のことを指し、意匠性に優れ独特の味わいを演出できることから、サイディング外壁が主流の現在においても根強い人気を誇っています。耐久性・耐火性に優れており、コーキングを使用しないことからメンテナンスにかかるコストも節約できるのも大きな魅力です。
本記事では、モルタル外壁の特徴やメリット・デメリット、メンテナンスが必要となる劣化症状などについて解説します。モルタル外壁のリフォーム方法についてもご紹介しているので、モルタル外壁を選ぼうと考えている方、モルタル外壁のリフォームを検討している方はぜひ最後までご覧ください。
外壁材全般に関する詳しい解説はコチラ
モルタル外壁の特徴
モルタル外壁は、セメントと砂を1:2もしくは1:3の割合で配合した現象に水を加えた素材で作られた外壁で、耐久性・耐火性に優れることから1990年ごろまでは国内の住宅の主な外壁材として普及してきました。セメントを使用することから防水性が高いイメージを持たれがちですが、モルタル外壁そのものには防水性はなく、表面に施す塗装によって防水機能を保っているのが特徴です。
耐用年数は約30年ほどとなっており、約10年周期で外壁塗装を行い、定期的に防水性を維持する必要があります。
現代では、パネルやボードを貼り付けるだけで成功できるサイディング外壁にシェアを奪われていますが、モルタル外壁ならではの風合いを好む方は多く、施工に時間がかかるデメリットがあるにも関わらず根強い人気を誇る外壁材でもあります。
旧来は主流だったモルタル外壁
モルタル外壁のルーツは古代ヨーロッパにあり、レンガ造の建物を石造建築に見せるために使われるようになったという歴史があります。日本では大正時代の関東大震災によって多くの家屋が火災の被害を受けた経験から、伝統的な木造建築の耐火性の低さをカバーできる外壁材として、高い耐火性を持つモルタル外壁に大きな注目が集まるようになりました。
それ以降、1990年ごろまでは国内の建物の主流な外壁材として使用され続けてきた実績を持ちます。近年ではより短期間で施工できてデザインのバリエーションも豊富なサイディング外壁が主流となっており、モルタル外壁を使った新築住宅などの数は減少しています。
モルタル外壁の仕上げ
モルタル外壁の仕上げには、主に以下の4つの方法があります。
- リシン
- スタッコ
- 吹き付けタイル
- 左官仕上げ
塗料を吹き付けるときに砂利・樹脂などを混ぜ合わせるのがリシン仕上げで、安価かつ施工効率が良いことから1980年代までに多く用いられてきました。リシン仕上げをより厚くしたものはスタッコと呼ばれ、表面に凹凸が多くザラついた仕上げになるのが特徴です。吹き付けタイルは、複数の塗料をタイルガンと呼ばれる機械で吹き付けることで、独特の風合いを出す仕上げ方法であり、左官仕上げは職人がコテを使って仕上げる方法となっています。
それぞれの仕上げ方法によって、外壁の印象が大きく異なるため、リフォーム業者の施工事例やサンプルなどを確認しながら理想のデザインを探してみると良いでしょう。
モルタル外壁を選ぶメリット
自宅の外壁にモルタル外壁を選ぶメリットには、次の3つが挙げられます。
- 耐久性・耐火性が高い
- 意匠性・デザイン性に優れる
- コーキングのメンテナンスが不要
それぞれ詳しく解説しましょう。
耐久性・耐火性が高い
モルタル外壁はセメントを使用していることから非常に耐久性が高く、不燃性のある原料を使っているため火事にも強いという特性を持ちます。現在主流のサイディング外壁と比べても耐用年数が長くなる傾向にあり、台風や強風によって飛来物がぶつかったとしても破損しにくいメリットがあります。
関連記事:外壁塗装の耐用年数は10〜20年が限度!寿命を延ばすコツや劣化症状を解説
意匠性・デザイン性に優れる
モルタル外壁は仕上げ方法によってさまざまなデザインを選ぶことが可能で、自宅の雰囲気や好みの風合いに合わせた外壁を実現できる意匠性を備えています。画一的で均整が取れたサイディング外壁ではなく、世界に一つだけの外壁を手に入れたい方にもおすすめです。カラーバリエーションも豊富なので、外観にこだわりたい方に向いている外壁材です。
関連記事:外壁塗装のデザイン|おしゃれな外壁にするための基礎知識
コーキングのメンテナンスが不要
モルタル外壁の場合、サイディング外壁の外壁材同士の継ぎ目に使われるコーキングが不要なので、コーキングの劣化に合わせた補修工事が必要ないこともメリットです。いわゆる目地が存在しない外壁材なので、目地に汚れが溜まってしまうことも防げるのが特徴です。ただし、メンテナンスフリーの外壁材というわけではなく、表面の防水性能を維持するための塗装工事が必要になることに注意しましょう。
関連記事:外壁コーキングの補修費用の相場とは?寿命の目安と打ち直し・増し打ちの違い
モルタル外壁を選ぶデメリット
一方でモルタル外壁を選ぶデメリットに挙げられるのは、次の3つです。
- ひび割れを起こしやすい
- 凹凸のある仕上がりでは汚れが目立つ
- 職人の技術力によって差が出やすい
これらのデメリットにも注意しながら、外壁材を選ぶようにしましょう。
ひび割れを起こしやすい
モルタル外壁の大きなデメリットとして、ひび割れが発生しやすいことが挙げられます。モルタル外壁では、サイディング外壁のように衝撃を吸収するコーキング材が使われていないため、地震や道路の振動によって衝撃が伝わりやすく、小さなひび割れを起こしやすい性質を持ちます。0.3mm以下の微細なひび割れであれば外壁の耐久性に影響を及ぼしませんが、大規模なひび割れが発生すると補修工事が必要となります。
関連記事:外壁のひび割れは危険信号!ひび割れ補修の方法と費用
凹凸のある仕上がりでは汚れが目立つ
モルタル外壁で凹凸のある仕上がりを選んだ場合、溝の部分に汚れが蓄積しやすく、汚れが目立ちやすくなるデメリットがあります。汚れや水分が蓄積すると、カビ・コケが発生しやすくなり、美観の悪化にもつながります。そのため定期的な清掃を行うか、防汚性に優れた塗料を使用することをおすすめします。
職人の技術力によって差が出やすい
モルタル外壁は、仕上げを担当する職人の技術力によって、品質に差が出やすいという特徴もあります。仕上がりの美しさはもちろん、外壁の耐久性にも影響することがあるので、モルタル外壁を依頼する際には過去の施工実績も参考に、信頼できる業者を選ぶことが大切です。
モルタル外壁のメンテナンスが必要な劣化症状
モルタル外壁は耐久性に優れる外壁材ですが、防水機能が低下して雨漏りを起こしたりしないよう、定期的にメンテナンスを行う必要があります。メンテナンスが必要となるタイミングの目安として、次のような劣化症状が挙げられます。
- 幅0.3mm以上のひび割れ
- チョーキング現象
- 表面の浮き・はがれ
モルタル外壁のメンテナンスを行う際には、これらの劣化症状がないかを入念にチェックするようにしましょう。
幅0.3mm以上のひび割れ
モルタル外壁に発生するひび割れは、その大きさによって「ヘアークラック」「構造クラック」の2種類に分類されます。ヘアークラックは、幅0.3mm以下・深さ4mm以下の小さなひび割れのことを指し、幅0.3mm以上・深さ4mm以上のひび割れは構造クラックと呼ばれます。ヘアークラックの場合には早急なメンテナンスは不要ですが、幅0.3mm以上の構造クラックは雨水が侵入して外壁からの雨漏りが発生する原因になるため、早めの補修工事が必要になります。
チョーキング現象
チョーキング現象とは、モルタル外壁の表面を手で擦ったときに、チョークのような白い粉が付着することを指します。これは紫外線によって外壁塗装の顔料が欠落してしまうことで起こる現象で、表面の塗装が劣化しているサインです。塗装が劣化するとモルタル外壁の防水性が失われ、雨漏りを起こす原因になるため、早めの塗り替え工事が必要となります。
関連記事:外壁から白い粉が!チョーキング現象とは?
表面の浮き・はがれ
モルタル外壁そのものが浮いてしまう、はがれ落ちてしまう場合には、住宅を保護する機能が大きく失われているため、早急な補修工事を実施する必要があります。浮き・はがれを起こした部分を高圧洗浄で洗い落とし、新たなモルタルを使って外壁を補修します。もし外壁の一部でこうした劣化症状が見られた場合には、すぐにリフォーム業者に連絡して補修工事を検討するようにしてください。
モルタル外壁のメンテナンス・リフォーム方法
最後に、モルタル外壁のメンテナンス方法について、塗り替え工事・張り替え工事のそれぞれの工事内容についてご紹介します。
モルタル外壁の塗り替え工事
モルタル外壁の塗り替え工事は、外壁の表面を再塗装する工事を指します。モルタル外壁の定期的なメンテナンスや、外壁材そのものに大きな劣化症状がない場合に行われる工事で、シリコン塗料・フッ素塗料などを使ってモルタル外壁の防水性を高めることを目的としています。より耐用年数が長い塗料を使うほど塗り替え工事にかかる費用は高価になりますが、塗り替え工事の回数を減らし、メンテナンスコストを節約できるメリットもあります。
関連記事:【2024年版】外壁塗装の費用相場はいくら?10坪〜100坪の適正価格と安く抑えるコツ
モルタル外壁の張り替え工事
モルタル外壁の張り替え工事は、傷んでしまった外壁材そのものを撤去し、新品のモルタル外壁に交換する工事を指します。古い外壁材の処分費用が発生し、下地を含めた外壁全体を交換するので、リフォーム費用は高額に、工期は長くなることに注意しましょう。張り替え工事のタイミングで、サイディング外壁などの別の外壁材に交換することも可能なので、モルタル外壁の寿命を迎える際には外壁材の種類についても検討してみると良いでしょう。
関連記事:外壁の張り替えにかかる費用とは?外壁塗装・カバー工法との違いや選び方を解説
まとめ
モルタル外壁はセメントを原料とした外壁材で、サイディング外壁が普及する前までは代表的な外壁材として用いられてきました。その耐久性の高さや独特な風合いには現在も根強い人気があり、コーキングのメンテナンスが不要なメリットなども踏まえ、モルタル外壁での新築を選ぶ方も少なくありません。
一方でモルタル外壁には、ひび割れを起こしやすく、凹凸のある仕上がりでは汚れが目立ちやすいデメリットも存在します。幅0.3mm以上の構造クラックを起こしている場合や、チョーキング現象が見られる場合、モルタル外壁そのものの浮き・はがれが見られる場合には、早急なメンテナンスが必要になるため、早めにリフォーム業者に問い合わせて塗り替え工事・張り替え工事を依頼するようにしましょう。