新築のときはピカピカでも、月日が経つごとに目立ってくるのが外壁の汚れ。
汚れは塗料の劣化にもつながるので、放置しないことが大切です。汚れにはどのような種類があり、どのような対策を取ればいいのでしょうか。今回は外壁の汚れの原因と洗浄のやり方、そして気になる外壁洗浄の費用相場もご紹介します。
さらに、汚れが付きにくくなる方法や汚れが付きやすくなってきたときの対策も説明します。外壁汚れにお悩みの方はぜひご一読ください。
1 . 外壁の汚れの原因
外壁の汚れを放置していると美観が損なわれるだけでなく、やがて塗料が劣化して外壁の耐久性が低下し、ひび割れたり雨水が漏れ出したりする可能性もあります。このような深刻な事態まで引き起こす外壁の汚れには、どのようなものがあるのでしょうか。
1-1 外壁の汚れの原因
外壁の汚れと一口に言っても、排気ガスのような人為的なものからカビやコケのような自然現象によるものまでたくさんの原因があります。それぞれの特徴をご紹介します。
1-1-1 チリ・ホコリ
突然ですが皆さんは、夕日が赤く見える理由をご存知ですか? 波長の短い青い光が空気中のチリやホコリにぶつかって散乱し、波長が長い赤い光だけが地上に届くためです。
チリやホコリはとても細かいため、普通に生活しているとあまり気にならないかも知れませんが、それくらい大量に空気中を漂っており、外壁にも広範囲に付着するのです。とくに凹凸のある壁に溜まりやすい傾向があり、外壁全体に灰色や茶色を帯びたようなくすみが出てきます。黒寄りの外壁で目立ちやすい汚れです。
1-1-2 排気ガス
車から出る排気ガスはススや油分を含んでおり、これがチリやホコリ同様に外壁の広範囲を汚してしまいます。汚れの色もチリやホコリに似ており、灰色や茶色のようなくすみが出てきます。毎日少しずつ蓄積していく汚れなので、その住宅に住んでいると逆に気づきにくいことも。
ただし、都市部の交通量が多い道路沿いの住宅は汚れの進行が早いので、排気ガスの汚れが気になる方が多いです。チリやホコリとは反対に、白寄りの外壁で目立ちやすい汚れです。
1-1-3 カビ
日当たりの悪い北側や、風通しが悪くジメジメした場所に発生しやすい汚れがカビです。とくに日本は湿度が高く、気候も温暖な地域が多いため、カビが繁殖しやすい条件が揃っています。黒っぽいものが多いですが、青や緑に見えるものも。
菌糸を伸ばしてコロニーと呼ばれる集合体を作る性質があるため、放置しているとどんどん範囲を広げていきます。菌糸を外壁の深くまで侵入させて耐久性を落としてしまうほか、アレルギーの原因になることもあります。
1-1-4 コケ
湿気が多くジメジメした場所に発生する、緑っぽい汚れです。カビとは逆に日光の当たる場所を好みます。これはカビが菌類である一方、植物の一種であるコケは光合成を行うためです。
カビと見分けるためには日当たりの状態を確認するといいでしょう。ただし、湿気がないと繁殖できないため、日差しが強い場所には発生しにくいです。
自然が豊かな地域や緑の多い公園などに近い住宅にはコケの胞子が付着しやすく、これが繁殖すると外壁が常に湿って傷みやすくなります。
1-1-5 雨だれ
窓サッシや配管、換気フードなどの下に筋状に伸びる、泣いているような黒っぽい汚れが雨だれです。実は雨にはマグネシウムやリンのようなミネラル類のほか、大気汚染による硫黄酸化物や窒素酸化物など多くの成分が含まれており、これが外壁の汚れと一緒になって流れると、下方向に伸びる汚れができてしまいます。
雨だれができる場所はずっと同じなので雨が降るたびに汚れが重なって濃くなり、どんどん落ちにくくなっていきます。
1-1-6 サビ
金属製の外壁に発生する汚れです。中でもトタンを使用している外壁にはよく見られます。サビといえば赤褐色の赤サビを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
この赤サビは金属の酸化による腐食現象で、外壁に傷があるとそこから進行して外壁をボロボロにしてしまいます。このほか、アルミニウムや亜鉛に発生する白っぽい白サビもあります。こちらは金属を腐食から保護する作用があるため、美観は損ないますが外壁の機能的にはさほど心配いりません。
1-1-7 塗料の変色
日夜風雨や紫外線にさらされている外壁の塗料は、時間の経過とともにどうしても劣化して変色します。色褪せた外壁は、住宅の外観を古ぼけた印象にしてしまいますが、これを放置し続けるとさらに塗膜が傷み、白い粉が浮いてくるチョーキング現象が起こります。
これは塗料に含まれる白色顔料の酸化チタンが分離した結果です。ここまで劣化が進行してしまうと楽観視はできません。早急に外壁の塗り替えを検討しましょう。
1-2 汚れを放置していると…
外壁の汚れは住宅の機能を損なう訳ではないので、つい見て見ぬふりをしたくなる人も多いのではないでしょうか。しかし、外壁の汚れを放置し続けるといずれさまざまな問題が起きてきて、補修に多額の費用が必要になることも。どんなことが起きるのか、段階を追ってご説明します。
1-2-1 見た目の変化
まずは美観が損なわれます。せっかく気に入った色で外壁を仕上げたのに、汚れが目立ってきたら気分も落ち込んでしまいますよね。
実は、この時点ですぐに対策を取った方が、後々の煩わしさを避けられる可能性が高まります。なぜなら、排気ガス汚れは油分が積み重なって頑固になり、カビやコケは増殖を繰り返して範囲を広げるなど、汚れは時間が経つほどに落ちにくくなるためです。
後回しにすればするほど大がかりな清掃が必要になり、専門業者でなければ対応できなくなってしまいます。
1-2-2 雨漏り発生のリスク増大
「見た目だけなら問題ないだろう」と思って放置していると、問題はさらに大きくなってしまいます。なぜなら、塗料が劣化した状態では風雨や紫外線などによるダメージを十分に防ぐことができず、外壁そのものが劣化し始めてしまうからです。例えば赤サビは進行速度が早く、すぐに塗膜を腐らせて外壁の建材をむき出しにしてしまいます。
こうなると外壁の防水性が著しく低下して雨水が侵入しやすくなり、壁材まで腐らせてしまうことに。症状がもっと進行して壁材に穴ができてしまえば、雨漏りの危険性はとても高くなります。
1-2-3 多額の修理費がかかることも
さらに放置を続けると建材の破損が進み、大規模な補修が必要になってしまいます。目に見える症状が雨漏り1つだけだったとしても、そこに水が流れ込む経路がかなり複雑になっている可能性は十分に考えられます。そのような場合、想像以上に高額な補修費用がかかってしまうでしょう。
外壁の汚れが気になったら、その時点できちんとメンテナンスした方が、結果的に手間も費用もかけずに済むのです。_
2 . 外壁の汚れを落とすには
外壁の汚れにはさまざまな原因があることを理解したところで、実際に汚れを落とす方法をご説明します。ご自分で作業するDIYの場合と、業者に依頼する場合の2パターンがあるので、汚れの度合いに応じて選んでください。
2-1 DIYで掃除する
「外壁の汚れが少し目立ってきた」という程度なら、洗剤やブラシなどの必要な道具を用意すればDIYでの洗浄が可能です。DIYの一番のメリットはなんといってもコストパフォーマンスが高いことでしょう。道具は一般的な家庭にあるものやホームセンターで手軽に購入できるものばかりなので、チャレンジしてみる価値はあります。
ただし、無理は禁物です。天気が悪い日や体調がすぐれない日は危険なので作業を見送ってください。
2-1-1 用意する道具
外壁の洗浄に必要な道具と用途、一般的な価格帯は以下の通りです。
■ 外壁用洗浄剤ホコリや排気ガスのほかカビやコケまで除去できるマルチタイプの洗剤が便利です。汚れの程度が軽ければ、キッチンやバスルーム用の中性洗剤や重曹を使ってもいいでしょう。
研磨剤が入っているものは外壁を傷付けてしまうので使用しないでください。価格帯にはかなり幅がありますが、1,000円~5,000円ほどで購入できます。
■ 1つの汚れに特化した洗剤とくに目立つ汚れがある場合は、マルチタイプのほかに特化型の洗剤もあるとより効果的です。カビ取り剤や外壁雨だれ洗剤などがあります。
ただし、複数の洗剤を同時に使うと有毒ガスが出るなどして危険なので、きちんと分けて使いましょう。外壁用洗浄剤と同じような価格帯で購入できます。
■ スポンジ手作業で汚れを落とすときの必需品。外壁を傷めることのない柔らかいものを選びましょう。柔らかければブラシでも大丈夫です。
外壁を掃除するのにちょうど良い洗車用のものは、100~500円ほどで購入できます。
■ 歯ブラシ外壁の凹凸など、細かい部分を洗浄するときに便利です。100円前後で購入できますが、外壁洗浄のためにわざわざ新しいものを買わなくても、使い古しのもので大丈夫です。
■ 高所洗浄用ブラシ高い部分を洗浄するとき、脚立などに乗って作業すると落下の危険性があるため、長い持ち手が付いたブラシを使用してください。価格帯は2,000~8,000円ほどです。
■ バケツスポンジやブラシを洗うために使用します。また、使用していないスポンジなどをバケツに入れておくようにすれば、置いた場所を忘れて探し回ることもなくなります。300~1,000円ほどで購入できます。
■ ホース汚れや洗剤を洗い流すときに使用します。1,000~3,000円ほどで購入できます。
■ ゴム手袋洗剤や水で手が荒れてしまうので、ゴム手袋をして作業しましょう。300~1,000円ほどで購入できます。
2-1-2 掃除の手順
洗浄の手順は3ステップのシンプルなものですが、理にかなった落とし方になっています。
1. ホースで外壁の上から下へ水をかけ、汚れを洗い流します。 2. 水だけでは流せなかった汚れに対して、スポンジやブラシに洗剤を乗せて洗います。 3. 最後にホースでしっかりと水をかけて洗剤を洗い流します。
洗浄のポイントは2つあります。まず1つめは、汚れを強い力でゴシゴシこすらないこと。塗料を傷めて剥がしてしまう可能性があります。そして2つめは、最後に洗剤をキレイに洗い流すこと。
洗剤には汚れなどを分解する力があるので、流し残しがあると外壁を傷めてしまう可能性があります。せっかく洗ったのに外壁を傷めてしまう結果になるのは残念ですよね。ぜひこの2点に気をつけて洗浄を行ってください。
市販の高圧洗浄機を使うときの注意点スポンジに洗剤を乗せて洗っても落ちない汚れがあるときは、高圧洗浄機を使います。これは水を勢いよく噴き出し、高い水圧で汚れを弾き飛ばして洗浄する機械です。「ケルヒャー」などのメーカー名でご存知の方も多いのではないでしょうか。
カビやコケ掃除に効果的ですが、使用するときにはいくつか注意点があります。
とくに気を付けてほしいのは、水圧が高すぎて外壁を傷める場合があることです。塗装が剥がれてしまうかも知れないので、同じ場所に長時間水圧をかけないようにしましょう。壁材の継ぎ目や補修したシーリング部分に当てないことも大切です。
また、水が激しく飛び散るので換気扇や窓から住宅内に水が入り込む場合もあります。作業を始める前に防水シートをかけて対策しておきましょう。
近隣の住宅に水が飛んでしまうと、苦情が来ることも考えられます。もちろん人に当たるととても危険なので、細心の注意を払って作業してください。
2-2 専門業者に依頼する
DIYで落とせる汚れには限度があります。また、高い部分の作業はとても危険です。「自分には難しい」と感じる外壁の汚れがあるときは、無理をしないで専門業者に依頼してください。
2-2-1 専門業者の作業内容
外壁洗浄の専門業者は主に高圧洗浄を行ってくれます。足場を組んでから飛散防止ネットや防水シートを設置して作業するので、高所でも安全にキレイに汚れを落とせますし、住宅内や近隣の住宅に水が飛ぶ心配もありません。
ただし専門業者の高圧洗浄機は市販のものより強力なので、外壁を傷めてしまう恐れがあります。このため、専門業者の外壁洗浄は外壁塗装とセットにして行うのがいいでしょう。
2-2-2 プロに依頼した場合の費用相場
専門業者に依頼した場合の費用は「足場代+ネットやシート代+洗浄代」で構成されます。それぞれの相場は以下のようになります。
■ 足場代 … 700~1,000円/㎡ほど ■ 飛散防止ネット代 … 100~200円/㎡ほど ■ 高圧洗浄代 … 200~300円/㎡ほど
足場は外壁より一回り大きく設置するので外壁面積の実寸より少し大きくなることを考慮した上で、3点を合わせた洗浄費用の相場は、一般的な30坪の住宅で約20~30万円ほどです。
3 . 外壁を汚れから守る方法
外壁の汚れを放置するのは良くないと分かっていても、小まめに洗浄するのは難しいのが事実です。そこで、なるべく長くキレイな状態の外壁を保ち、洗浄の回数を減らせる工夫をご紹介します。
3-1 汚れに強い塗料で塗り直す
外壁塗装を塗り替える時期がきたら、低汚染塗料を使用することがオススメです。この塗料は汚れが付きにくく、水と馴染みやすいことが特徴です。
雨が降ったときに汚れをセルフクリーニングしてくれることから、外壁汚れ防止が期待できます。塗装を依頼する業者に低汚染塗料のカタログをもらって、次のような記載がある塗料を選びましょう。
■ 防汚性・防藻性・防カビ性…汚れにくい機能が備わっている塗料 ■ 親水性・光触媒…セルフクリーニング機能が備わっている塗料光触媒とは二酸化チタンが持つ機能で、紫外線が当たると表面に酸化力が発生し、チリやホコリ、カビやコケなどさまざまな汚れの原因を除去してくれます。光触媒に触れた物質は水と二酸化炭素に分解され、空気中に発散される仕組みです。防汚のほかに、抗菌や脱臭作用などが報告されています。
3-2 汚れが目立ちにくい色に塗り替える
服に汚れが目立ちにくい色があるように、外壁にも汚れが目立たない色があります。
代表的な色としてはベージュやグレーが挙げられます。チリやホコリ、雨だれなど、外壁の汚れの多くは灰色や茶色がかった色が多いので、似た色の外壁にすれば汚れが見えにくくなるのです。
このほか、グリーンの外壁もカビやコケが目立ちにくくなります。外壁をこのような色に塗り替えるのも、汚れを目立たなくする有効な手段。ただし、汚れが目立たない外壁にすると当然ながら汚れが気にならなくなるので、外壁の洗浄を忘れがちになります。
あくまで目立たないだけで汚れは蓄積していますので、定期的な洗浄は行いましょう。反対に、汚れが目立ちやすい色は白や黒です。このような色の外壁にしたいときは、低汚染塗料を使うのがオススメです。
4 . 汚れが付きやすくなる=塗装時期のサイン?
せっかく外壁を洗浄しても、またすぐに汚れが目立ってしまうケースもあります。これは洗い方が足りなかったのではなく、外壁塗装の塗り直しの時期が来たサインかも知れません。
4-1 塗膜の防水効果は5~7年で切れる
一般的に、外壁塗装の塗り直しは10年サイクルと言われます。しかし、これはひび割れや剥がれが出てしまう塗り直しのギリギリの時期を指しています。目に見えて劣化症状が出ているときは、すでに外壁の内部にまで影響を与えている可能性が高いため、塗り直し以外に補修も必要になるかも知れません。
塗り直しだけで済ませるなら、5~7年サイクルで外壁塗装を行うのが理想です。実はこれくらいの時期になると外壁が汚れやすくなってきますが、これは外壁塗装の防水機能が低下して汚れが付着しやすくなっているから。このため、外壁がすぐ汚れると感じたときが、外壁塗装をし直すベストなタイミングと言えます。
4-2 早期に塗装を行うことで費用を抑えられるかも
外壁の汚れを放置し続けると最終的には雨漏りなどが発生し、洗浄だけでなく補修まで必要になってしまうことは先にご説明した通りです。このようにして破損してしまった部分は、以降ずっと住宅の弱点となり、何度も補修の必要に迫られる事態にもなりかねません。
そうならないためにも、外壁に汚れが付きやすくなったと感じた時点で塗装をし直すことが大切です。外壁の防水機能が復活すると、住宅の内部にまで被害が及ぶのを防いでくれるため、結果的に補修の回数もぐっと減って外壁メンテナンスの費用を抑えることにつながるのです。
5 . 防水効果が低下しているサインを見極めて塗り替えを検討しましょう
外壁の汚れにはチリやホコリ、カビやコケなど多くの原因があります。
これらの汚れは美観を損なうだけでなく、外壁内部まで侵入して雨漏りなどを引き起こすので、放置せずにきちんと洗浄しましょう。少し汚れているくらいなら、DIYでコストを抑えて洗浄しても大丈夫です。ただし、汚れがひどい場合は業者に依頼してください。
外壁の汚れを目立ちにくくするには、汚れと似た色であるグレーやベージュ、グリーンなどの色に塗り替えると効果的です。また、防汚作用がある低汚染塗料を使うのも良い方法です。
汚れが付きやすくなってきたら、外壁塗装の防水効果が低下しているサインです。外壁の塗り替えを検討してみましょう。