屋根の塗装をする際、遮熱塗料を使うべきか迷っている方もいるのではないでしょうか。
遮熱塗料には屋根の温度上昇を防ぐ効果があり、屋根の塗装に使われることが多い人気の塗料です。しかし、ネット上には「遮熱塗料は効果ない」という意見もあるため、「実際はどうなの?」と気になっている方もいるでしょう。
この記事では、遮熱塗料のメリット・デメリットを解説するとともに、遮熱効果を高める方法などを紹介します。遮熱塗装の使用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
屋根の塗料に関する詳しい解説はこちら
遮熱塗料とは?原理とメカニズムを解説
遮熱塗料とは、太陽光を反射させて屋根の温度上昇を抑える塗料です。
遮熱塗料は、生物が暖かさを感じる「近赤外線」を反射する機能を持ちます。太陽光から発せられる近赤外線そのものを反射させることによって、屋根材や外壁材に熱がこもるのを防ぎます。
熱の発生自体を防げるため、暑い夏場でも室温を快適に保つなどの効果が期待できます。
遮熱塗料のメリット
遮熱塗料を使用するメリットは、以下の3点です。
- 屋根の温度上昇を抑制できる
- ヒートアイランド現象を抑制できる
- 空調費を削減できる
それぞれのメリットを詳しく解説していきます。
屋根の温度上昇を抑制できる
遮熱塗料で塗装すると、屋根の表面温度を15〜20度ほど低下できます。夏場でも屋根の表面温度を7〜8度ほど抑えることが可能です。
屋根の温度上昇を抑制できれば、室内温度の上昇も抑えられます。塗料によって多少の違いがありますが、真夏の日中でも室内温度を3~5度下げる効果があります。
ヒートアイランド現象を抑制できる
遮熱塗料によって屋根の温度上昇を抑制できれば、ヒートアイランド現象の抑制にも効果を発揮します。
ヒートアイランド現象とは、都市部の気温が周辺の気温よりも高くなる現象です。建築物の高層化や高密度化が進むと、地表面からの放射冷却が弱まり、熱がこもりやすくなります。
建物に蓄えられた熱は熱放射として外部に逃され、気温を上昇させる要因となりますが、遮熱塗料は建物に蓄えられた熱を抑制できるため、ヒートアイランド対策に役立ちます。
空調費を削減できる
遮熱塗料によって屋根材の温度上昇を抑制すれば、室温の上昇も抑えられるため、空調費を削減できます。
夏の日中に消費する電力の約半分はエアコンによる電力が原因とされています。激しい日差しが照りつける猛暑日に、遮熱塗料によって室内の温度上昇を抑えられれば、おのずとエアコンの使用頻度も下がるため、電気代の節約が可能です。
室内温度が1度下がるだけで約10%の電気代が削減できるので、家計の負担を大幅に減らせるでしょう。
遮熱塗料のデメリットは?効果なしと言われる理由
遮熱塗料は「効果がない」と言われることがあります。具体的にどのような理由で効果がないと言われるかについて、6つの理由を紹介します。
性能にばらつきがある
遮熱塗料は素材によって様々な種類があり、性能はそれぞれ異なります。
遮熱塗料の特徴と耐用年数については下記の通りです。
耐用年数が短い塗料は性能が低く、耐用年数が高い塗料ほど性能が高いといえます。
遮熱効果が低い
遮熱塗料は輻射熱の反射率が60~80%前後となっているため、単体では遮熱効果が低い傾向にあります。そのため、遮熱塗料だけでは対策が不十分です。
室温の上昇を抑えるには、遮熱塗料だけでなく、遮熱シートのような遮熱材を導入する必要があります。
断熱効果がない
遮熱塗料に断熱効果はありません。遮熱塗料の原理は、太陽光を反射して表面温度の上昇を防ぐことです。そのため、外の熱を中に侵入することは防げても、中の熱を室内に閉じ込めることはできません。
遮熱塗料は熱の移動をコントロールできないため、快適な室温の維持は困難です。遮熱塗料は太陽光を反射するため、寒さの厳しい地域だと冬の室温が下がる可能性があります。暑い夏に適した塗料ですが、冬が長い北海道や東北地方には不向きだといえます。
塗り直す必要がある
遮熱塗料は定期的なメンテナンスをしなければ、十分な効果を得られません。 耐用年数に応じて定期的な塗り替えが必要になるため、コストがかかります。
遮熱塗料には耐用年数が短いものも多く、短い期間で何度も塗り直しを行う必要があります。手間とコストがかかるのも、遮熱塗料のデメリットです。
塗膜が汚れると効果が下がる
塗料は塗膜が綺麗であるほど効果を発揮しますが、雨風などにさらされて汚れると遮熱効果が落ちる可能性があります。そのため、ホコリや砂などの汚れは定期的に洗浄しなければなりません。
一般塗料よりも価格が高い
遮熱塗料は遮熱効果がある分、一般塗料よりもコストが高いデメリットがあります。塗料費用だけでなく、足場の組み立てや解体費用、下地補修費用など諸経費が上乗せされるため、トータルコストがさらに上がる傾向にあるからです。
安価なシリコン塗料は1㎡あたり2,000円ほどですが、遮熱塗料は4,000〜5,000円ほどかかります。 しかし、遮熱塗料は安価な塗料よりも耐久性に優れており、メンテナンスの手間を踏まえれば遮熱塗料の方がコストパフォーマンスは良好です。
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遮熱塗料がおすすめのケース
遮熱塗料が効果を発揮しやすい4つのケースを紹介します。次に該当する住宅は、遮熱塗料の利用をおすすめします。
3階建ての住宅
3階建ての住宅は太陽光を遮るものがなく、日当たりが良いため、遮熱塗料で日光を反射すれば室温の低下を感じやすいといえます。
夏場になると、3階の部屋に入る時にむわっとした熱気を感じることがあります。屋根に遮熱塗料を塗れば、むわっとした感じが解消され、過ごしやすくなる可能性が高いです。
リビングが2階にある住宅
2階にリビングがある場合は、遮熱塗料により温度が下がって快適に過ごしやすくなります。
家の高さが高いほど室内温度は上昇する傾向にありますが、遮熱塗料によって2階の温度が下がれば、塗装前と比べて快適な空間になるでしょう。特に日当たりのよい2階は室温が上昇しやすいため、遮熱塗料による効果を感じやすいといえます。
吹き抜け天井がある住宅
吹き抜け天井がある住宅も、遮熱塗料によって室温の変化を実感しやすいといえます。吹き抜けのある場所から熱が侵入しやすく、室内が熱くなりやすい傾向にありますが、 遮熱塗料によって温度上昇の抑制が可能です。
吹き抜け天井があることで「冷房が効きにくい」と悩んでいる方は、遮熱塗料の利用を検討してみましょう。
金属材でできている屋根
トタンやガリバリウム鋼板、アルミなどの金属材でできている屋根は、遮熱塗料により室温の上昇を抑えられます。
金属は熱伝導率(熱の伝わりやすさ)が良いため、ほかの屋根材と比較して日光の影響を受けやすい素材です。そのため、晴れの日は室内の温度もどんどん上昇してしまうものの、 遮熱塗料を施工すれば熱が伝わりにくくなり、涼しく過ごせるようになります。
遮熱塗料の効果を高める方法
遮熱塗料の効果を高めるには、塗料の選び方を知っておく必要があります。ここでは、効果を高める4つの方法を紹介します。
日射反射率が高い遮熱塗料を選ぶ
日射反射率とは、太陽光に含まれる近赤外線を反射する率を示したものです。日射反射率が高いほど遮熱効果と省エネ効果が期待できます。
日射反射率は塗料メーカーの遮熱塗料の色サンプル帳に表記されているので、選ぶ際にはチェックしておきましょう。
JIS規格の評価が高い遮熱塗料を選ぶ
遮熱塗料には、日本塗料工業会によりJIS規格が定められています。遮熱塗料を熱星1〜3つでランク付けを行っているため、日塗工ホームページで登録商品と遮熱性能を容易に確認可能です。
しかし、JIS規格は2018年に定められたばかりであり、登録件数はそこまで多くありません。一つの目安として参考にしつつ、評価の高い遮熱塗料を選びましょう。
明るい色で塗装する
遮熱塗装を選ぶときは、日光を反射しやすい明るい色を選びましょう。明るい色ほど日光を反射しやすく、温度上昇を抑制する効果が高いといえます。
反射率のもっとも高い色は白です。塗料のカタログやパンフレット等に各色の反射率が記載されているので、事前に確認しておきましょう。
遮熱シートを併用する
遮熱塗料と一緒に遮熱シートを使用しましょう。遮熱シートとは、暑さの原因となる輻射熱を抑える効果を持つシートです。塗りムラがなく、均等な効果を得やすいため、遮熱塗料のデメリットをカバーできるメリットがあります。
断熱効果を持つ遮熱シートもあるので、業者に相談しながら選びましょう。
遮熱塗料は効果の高いものを選ぼう
遮熱塗料には、太陽光を反射して屋根の温度上昇を抑える効果があります。室内の温度上昇も抑制できるため、空調費を抑える省エネ効果も得られます。
ただし、遮熱塗料にはたくさんの種類があり、それぞれ耐用年数や効果が異なるので、簡単に選ぶのは困難です。
遮熱塗料の効果を実感するためにも、信頼できる業者と相談しながら慎重に選定しましょう。