無機塗料は、外壁・屋根塗装で使われる種類の中でも、最もグレードが高く耐久性に優れた塗料です。塗料が劣化する原因となる有機物がほとんど含まれていないため、耐用年数が長く美しい状態を長持ちさせることができます。有機物が少ないおかげで、コケ・藻・カビの発生を抑制できるのも特徴です。
ただし、無機塗料の塗膜は硬く弾力性に乏しいので、ひび割れを起こしやすいデメリットもあります。表面に汚れが付着しにくい性質を持つ一方で、塗料の重ね塗りに適さないので、将来の再塗装が困難になるケースも考えられます。
本記事では、無機塗料を外壁・屋根塗装で選ぶメリット・デメリットのほか、耐用年数や費用相場、代表的なメーカー・商品についても解説します。自宅の塗り替えの塗料選びで迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
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無機塗料とは?
無機塗料とは、セラミック・ケイ素などの無機物で構成された塗料のことを指し、紫外線で劣化しにくい鉱物の特性を活かした塗料です。イメージとしてはガラスや石材のように、半永久的な寿命を持つ塗料と言えるでしょう。100%無機物を使用した塗料を開発するのは現実的ではないため、一部有機物を混ぜることで住宅の塗装にも使えるようにしたのが無機塗料です。
外壁・屋根の塗装で使われる塗料の中では最も高価な種類になりますが、耐用年数が非常に長く、次のメンテナンスまでの期間が長くなる傾向にあります。その結果、長期的にはメンテナンス費用を抑えられる塗料であり、低汚染性のおかげで汚れにくく美しさが長持ちするのが無機塗料の特徴です。
無機塗料の費用相場
無機塗料の費用相場は、平米単価で約4,500〜5,500円が目安です。この平米単価に自宅の塗装面積を掛けることで、塗装費用を計算することができます。外壁や屋根の塗装で一番人気の塗料であるシリコン塗料の場合、平米単価は2,300円〜3,500円程度なので、一般的な塗装費用の相場よりも高額になる傾向があります。耐用年数が長いので長期的なコストパフォーマンスには優れていますが、まとまった初期費用が必要になる点に注意しましょう。
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無機塗料の耐用年数
無機塗料は20年以上の耐用年数を誇ります。窯業系サイディングや金属系サイディングといった外壁材は20年ほどで建材自体の寿命を迎えるため、一度塗装すれば建材の寿命が尽きるまで再塗装が不要な塗料と言えます。これは塗料が劣化する原因となる有機物をほとんど含まず、ガラスや石材のように高い耐久性を実現できることが理由です。ただし、塗装業者の施工不良が発生したり、無機塗料と相性の悪い外壁材・屋根材に塗装したりした場合には、20年経過するよりも前に寿命を迎えてしまうケースもあります。
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無機塗料と有機塗料の違い
無機塗料とは異なり、有機物を主成分としたアクリル塗料・シリコン塗料・フッ素塗料などは、有機塗料と呼ばれ区別されます。無機塗料と有機塗料の大きな違いとして、「樹脂」を使用しているかどうかが挙げられます。
有機塗料では、石油をはじめとする有機物で構成された樹脂を使用しており、植物・動物といった生命由来の塗料であることが特徴です。一方の無機塗料は、鉱物を中心とする生命由来ではない成分で構成されています。有機物は紫外線によって劣化を起こしますが、無機物は劣化しないため、無機塗料は高い耐久性を実現することができるのです。
ただし有機塗料にもメリットは多く、弾力性があるのでひび割れが発生しにくく塗りやすい点や、アクリル塗料・シリコン塗料・フッ素塗料など、幅広い価格帯があるので予算に合わせて塗料を選べる点が挙げられます。無機塗料の場合は塗料の選択肢が少なく価格が高価で、弾力性がないのでひび割れを起こしやすい傾向があります。
無機塗料を外壁・屋根塗装に使うメリット
続いて、無機塗料を外壁・屋根塗装で使うメリットについて、以下の3つを解説します。
- 耐久性が非常に高い
- コケ・藻・カビが発生しにくい
- 不燃性を備える
それぞれ順番にご紹介します。
耐久性が非常に高い
無機塗料は紫外線によって劣化しにくい無機物を主成分としていることから、耐候性が高く、経年劣化を起こしにくい塗料です。紫外線や風雨の影響を受けにくく、長期間にわたり外壁材・屋根材を保護してくれるのがメリットです。無機塗料の耐用年数は20年以上となっているため、短期間でメンテナンスを必要とすることもなく、工事の回数を最小限に抑えることができます。
コケ・藻・カビが発生しにくい
無機塗料には、低汚染性と呼ばれる汚れにくい性質が備わっており、コケ・藻・カビなどが発生しにくい傾向にあります。無機塗料は親水性が高いことから、塗料と汚れの間に雨水が入り込み、雨水とともに汚れを落としてくれるセルフクリーニング機能も備わっています。コケ・藻・カビの栄養分となる有機物が少なく、汚れも付着しにくいため、美しい状態を長く維持することができるのです。
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不燃性を備える
無機塗料は、セラミックやケイ素といった無機物が主成分であるため、石油を原料とする有機塗料よりも燃えにくい性質があります。自宅の火事の被害を最小限に抑えられることはもちろん、隣家で火事が発生した場合にも被害を抑えることができます。ただし、塗料として扱いやすくするために無機塗料には有機物も含まれているので、全く燃えない塗料ではないことにご注意ください。
無機塗料を外壁・屋根塗装に使うデメリット
一方で無機塗料を外壁・屋根塗装に使うデメリットに挙げられるのは、次の5つです。
- 主要な塗料の中で最も高価
- 塗膜のひび割れを起こしやすい
- 艶消しの仕上がりは選べない
- 再塗装が困難になるケースも
- 性能を引き出すには高い技術力が必要
これらのデメリットも踏まえた上で、自宅に最適な塗料を選ぶようにしましょう。
主要な塗料の中で最も高価
無機塗料は、アクリル塗料・シリコン塗料・フッ素塗料といった主要な塗料の中でも、最も高価なグレードです。耐用年数が長く機能性にも優れているので、施工費用が割高になることがデメリットに挙げられます。将来のメンテナンス費用を節約できるので、長期的なコストで考えると割安になりますが、初期費用としてまとまった資金やローンが必要になるケースも多いでしょう。
塗膜のひび割れを起こしやすい
無機塗料では有機塗料と比べて硬い塗膜を形成するため、塗膜のひび割れを起こしやすい性質を持ちます。そのためモルタル外壁をはじめとするひび割れを起こしやすい建材では、ひび割れを起こした際に追従できず、塗膜にもひび割れが入ってしまう可能性が高いです。外壁材や屋根材のひび割れは、放置すると雨水が侵入して建材を傷める原因にもなります。もしひび割れしやすい建材で無機塗料を使用したい場合には、弾力性・伸縮性を高めた「無機ハイブリッド塗料」が使えないか業者に相談してみると良いでしょう。
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艶消しの仕上がりは選べない
無機塗料の場合、艶消しの仕上がりを選べないこともデメリットに挙げられます。艶を消してしまうと、耐候性に優れた無機塗料の良さが失われてしまうため、外壁・屋根の塗装で艶消しの仕上がりを求める場合には不向きです。5分艶・3分艶までであれば対応しているメーカーもありますが、なるべく艶調整を行わないことをおすすめします。
再塗装が困難になるケースも
無機塗料は表面に汚れがつきにくい性質を持っているため、再塗装の際には新しい塗料と古い塗料がうまく密着せず、施工不良を起こしやすくなる可能性があります。20年以上の耐用年数を備えているため再塗装が必要になるケースは少ないですが、無機塗料を使用した外壁・屋根で塗り替えを行う際には注意が必要です。
性能を引き出すには高い技術力が必要
無機塗料の性能を引き出すためには、ムラなく均一に塗料を塗る必要があります。下塗り・中塗り・上塗りの各工程を適切に進め、高圧洗浄や塗料の撹拌なども正確に行いながら施工することが重要です。無機塗料の扱いに不慣れな業者に依頼して施工不良を起こしてしまうと、せっかくの高価な塗料の性能を引き出せずに寿命を縮めてしまう可能性があるので注意しましょう。
無機塗料の代表的なメーカー・商品
無機塗料は大手メーカーからいくつかの種類が発売されており、代表的な商品名は下記の通りです。
- 日本ペイント株式会社「アプラウドシェラスターNEO」
- 関西ペイント株式会社「アレスシルクウォール」
- エスケー化研株式会社「セラミタイトペイント」
無機塗料は高価なグレードでもあるため、有機塗料と比べるとメーカーの数や取扱商品は多くありません。そのため自宅に合った無機塗料を選ぶためには、無機塗料に精通した塗装業者に相談し、どのメーカーの塗料が最適なのかを提案してもらうことをおすすめします。
まとめ
無機塗料は有機塗料とは異なり、樹脂をほとんど使わずセラミック・ケイ素などの鉱物を主成分とする塗料です。紫外線や風雨によって劣化しにくい性質を持ち、20年以上と非常に長い耐用年数を誇るのが特徴です。その分費用相場は上昇する傾向にありますが、メンテナンス費用や回数を抑えられることを踏まえると、コストパフォーマンスに優れた塗料と言えます。
ただし、塗膜が固くひび割れを起こしやすい性質を持っているため、モルタル外壁など外壁材自体がひび割れしやすい場合には不向きです。艶消しの仕上がりを選べないなどデザイン性にも制約がかかるので、無機塗料の扱いに詳しい業者に相談しながら、自宅に合ったメーカーの塗料を使って塗装を実施しましょう。