スレート屋根は、日本国内で高いシェアを誇る屋根材です。セメントを原料とする薄い板でできた屋根材であり、デザイン性と耐震性に優れた安価な屋根材であることから、現在も新築や屋根リフォームで多く使用されています。一方で寿命がやや短めな屋根材であり、定期的なメンテナンスを必要とするほか、古いスレート屋根にはアスベストが含まれる可能性があるので注意が必要です。
本記事では、新築もしくは屋根リフォームを検討している方向けに、スレート屋根の特徴やメリット・デメリット、メンテナンスが必要な時期などについてご紹介します。アスベストの処理が必要なケースについても解説しているので、葺き替え工事や解体工事を予定している場合にはぜひご覧ください。
スレート屋根とは?
スレート屋根とは、セメントを加工して平らな板に成形した屋根材です。メーカーも豊富なデザインを発売しており、屋根材の中では安価な部類に入ることから、日本の戸建てでは最も多く使われています。自宅にスレート屋根が使われているかどうかを見分けるには、屋根材が金属製ではなく、平らな板を敷き詰めた屋根かどうかをチェックすると良いでしょう。
スレート屋根が国内で使われ始めたのは1990年代前半、当時はセメントにアスベストを加えることで、高い耐久性を実現した屋根材(第一世代)でした。アスベストの健康被害を防ぐため、1990年代後半からはアスベストを使わないスレート屋根が開発されましたが(第二世代)、耐久性に難があり、急速に劣化が進んでしまうことが課題でした。
2000年代からは、従来のスレート屋根を改良することで寿命・耐久性を延ばした製品が登場しています(第三世代)。現在も主流なのは、この第三世代のスレート屋根になります。
天然スレートと化粧スレートの違い
スレート屋根には、原材料の違いから「天然スレート」「化粧スレート」の2種類が存在します。天然スレートは、粘板岩(ねんばんがん)と呼ばれる岩石を加工した屋根材で、古くからヨーロッパでも建材として使われてきた歴史を持ちます。天然ならではの風合いと耐久性の高さが魅力ですが、非常に高価で屋根材そのものが重いため、一般的な戸建て住宅では使用されていません。
一方で化粧スレートは、セメントに繊維を混ぜて人工的に加工した屋根材で、軽量かつ安価に入手できるため、日本国内で高いシェアを誇っています。新築や屋根リフォームで「スレート屋根」という言葉が出てきたら、化粧スレートを指すことを覚えておくと良いでしょう。
「コロニアル」「カラーベスト」との違い
スレート屋根は業者や地域によって、「コロニアル」「カラーベスト」などと呼ばれることもあります。これらはすべて同じ屋根材を指す言葉で、「コロニアル」はスレート屋根メーカーであるケイミュー株式会社が販売する商品名、「カラーベスト」は同社のブランド名を指します。スレート屋根として非常に多く流通した商品名・ブランド名であったため、スレート屋根そのものを意味する言葉として認知が広がったという事情があります。
言葉は違いますが、いずれもスレート屋根を指す呼び方ですので、同じ屋根材として考えて問題ありません。
関連記事:屋根材8種類の特徴まとめ!耐久性・費用相場とリフォームでの選び方を解説
スレート屋根のメリット・デメリット
続いて、スレート屋根を使用するメリット・デメリットをそれぞれご紹介します。
スレート屋根のメリット
ほかの屋根材と比較した時のスレート屋根のメリットは、以下の通りです。
- 屋根材の費用相場が安い
- デザインやカラーが豊富
- 施工しやすく対応業者が多い
スレート屋根は、金属屋根や瓦屋根と比べて価格が安く、安価に新築・屋根リフォームを実現できます。日本国内では高い人気を誇ることから、各メーカーから豊富なデザイン・カラーが用意されているのも大きなメリットです。また、スレート屋根は1990年代から長く使われ続けている屋根材なので、施工しやすく、対応している業者も豊富なのも魅力です。
スレート屋根のデメリット
一方でスレート屋根のデメリットには、以下が挙げられます。
- ひび割れしやすい
- 寿命・耐用年数が短い
- 定期的なメンテナンスが必要
スレート屋根は薄いセメントでできた屋根材なので、経年劣化や自然災害によってひび割れしやすく、やや耐久性に劣ることがデメリットです。ほかの屋根材と比べて寿命・耐用年数も短く、葺き替え工事やカバー工法が必要になる周期が短いことから、長期的なコストが膨らみやすい傾向にあります。また、ひび割れの点検・補修のために定期的なメンテナンスコストがかかることにも注意が必要です。
スレート屋根の寿命・耐用年数と補修が必要な時期
続いて、スレート屋根の寿命・耐用年数や、補修が必要になる時期についてご紹介します。
スレート屋根の寿命は15年〜25年
スレート屋根の屋根材そのものの寿命は、15年〜25年が目安です。この時期を過ぎると、割れたスレートの部分補修を行うよりも、屋根全体の葺き替え、または新しい屋根材を被せるカバー工法を選ぶことが推奨されます。なお、アスベストが含まれる古いスレート屋根の場合、30年〜40年ほど経っても問題なく使えることもあります。
棟板金の修理は10年〜15年周期が目安
スレート屋根のメンテナンスでは、屋根の頂上に設置される「棟板金」と呼ばれる部位の手入れも必要です。棟板金は、屋根材の内側に雨水が入り込むのを防ぐ役目を持った板金で、「へ」の字の形をしているのが特徴です。棟板金は屋根の中でも最も痛みやすい部位であり、固定する釘が浮いてしまうと強風で飛ばされることもあります。
この棟板金の釘が抜けたりサビが発生したりすると、雨漏りや周辺の家屋への被害を招いてしまうため、棟板金の寿命である10年〜15年周期でメンテナンスが必要です。
5年〜10年ごとの点検・補修がおすすめ
スレート屋根は一枚一枚のスレートが割れやすい性質を持っているため、5年〜10年程度を目安に点検を受けることをおすすめします。外壁塗装のタイミングなどで、同時に屋根の点検を依頼してみると良いでしょう。ひび割れやはがれなど、劣化したスレートが見受けられる場合には、部分補修を行うことで屋根全体の耐久性を維持することができます。
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スレート屋根の屋根塗装では耐久性は向上しないことに注意
屋根リフォームといえば「屋根塗装」が連想されることが多いですが、スレート屋根に限って言えば、耐久性向上のための再塗装は必要ありません。スレート屋根の性質から、表面を塗装しても寿命が延びることがないからです。そのためスレート屋根の再塗装は、あくまでもデザインの変更や美観の維持が目的になります。
もし訪問営業の業者から、スレート屋根の再塗装を提案された場合には、塗装の必要性について詳しく問い合わせてみると良いでしょう。一方で、ガルバリウム鋼板などのほかの屋根材を使っている場合や、家の外壁の耐久性を向上させたい場合には、定期的な再塗装が推奨されるので注意しましょう。
古いスレート屋根ではアスベスト処理が必要なことも
前述の通り、1990年代に使用されていたスレート屋根の一部では、健康被害が懸念される「アスベスト」が使用されています。もし築古の戸建て住宅で、長期間屋根のリフォームを行っていない場合、葺き替え・解体工事が高額になる可能性がありますので、ここで詳しく解説します。
2004年以前のスレート屋根はアスベスト含有の可能性
スレート屋根にアスベストが含まれる可能性があるのは、2004年以前に建てられた住宅です。2004年の法規制により、アスベスト入りのスレート屋根の出荷が禁止されたため、2005年以降に新築した家であればアスベスト含有の危険性はありません。もし2004年以降に着工された家でスレート屋根を使用している場合、アスベスト入りの屋根材が用いられていると考えた方が良いでしょう。
葺き替え・解体工事が高額になる点に注意
アスベストが含まれるスレート屋根を使っているからといって、すぐに除去工事が必要になることはありません。しかし屋根材が激しく劣化して屋根材の繊維が飛散してしまう前に、屋根全体を交換する「葺き替え工事」などを検討した方が良いでしょう。
アスベストを含むスレート屋根の除去・処分を行う際には、通常の屋根材の処分費用に加えて、アスベストの処分費用が上乗せされます。屋根材の量や建物の規模によっては、100万円単位での処分費用が発生することもあるため、屋根リフォームや建て替えを検討する時には十分に見積もり金額を確認するようにしてください。
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まとめ
スレート屋根は価格が安く、デザイン・カラーが豊富で、施工業者が多いというメリットを持った屋根材です。屋根材そのものが軽量で耐震性が高く、建物への負担も少ないことから、今でも日本国内で高い人気を集めています。一方で、スレート屋根はひび割れが発生しやすく、寿命・耐用年数が短い傾向にあるほか、古いスレート屋根はアスベストの処分費用が追加で発生する点に注意が必要です。
スレート屋根の寿命・耐用年数は15年〜25年ほどですが、屋根の頂上にある棟板金のメンテナンスが10年〜15年ごとに必要となります。スレートのひび割れなどをチェックするためにも、5年〜10年周期で点検・補修を依頼すると安心です。
本記事でご紹介してきたスレート屋根の特徴やメリット・デメリットを踏まえて、新築・屋根リフォームを検討してみてください。