2025-01-09 08:05:13 更新

縁切りに使う「タスペーサー」とは?いらないケースや価格・使い方などを解説

縁切りに使う「タスペーサー」とは?いらないケースや価格・使い方などを解説
編集者プロフィール
輿石 雅志
1972年生まれ。早稲田大学理工学部応用化学科卒業。40万人以上の方が利用している国内最大級のマッチングプラットフォームを提供する外壁塗装に特化した無料相談サイト「外壁塗装の窓口」を運営。著書に「マイホームの外壁塗装 完全成功読本」(幻冬舎出版)。
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「タスペーサー」とは、スレート屋根塗装の縁切り作業を効率的かつ高品質に行うための専用部材です。

屋根塗装の見積もり書に「タスペーサー」や「縁切り」と記載があり、その名前自体を初めて知った方も多いのではないでしょうか?

そこで本記事では、タスペーサーおよび縁切りの役割や重要性、使うべき屋根やいらないケース、種類や施工価格などを詳しく解説します。

具体的な使い方やDIYの注意点についても解説していますので、タスペーサーの基礎知識を知りたい方はぜひ最後までご覧ください。

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タスペーサーとは屋根塗装の「縁切り」に用いる部材

タスペーサーを使用すべき屋根といらない屋根

タスペーサーの種類による違いと価格・施工費用

タスペーサーの使い方・入れる場所

タスペーサーを正しく利用して縁切り作業を効率化しよう

タスペーサーとは屋根塗装の「縁切り」に用いる部材

タスペーサーとは、株式会社セイムが製造・販売している、スレート屋根(コロニアル・カラーベスト)の塗装工程である「縁切り」に使用する専用部材です。

タスペーサーを用いることで、従来の縁切り工法のデメリットや問題点を解消し、より効率的な施工が可能となりました。

まずは、タスペーサーを用いた「縁切り」に関する前提知識として、以下3つの内容をしっかり理解しておきましょう。

  • しないとどうなる?縁切り作業の役割と重要性
  • 従来のカッター・皮スキによる縁切り工法の問題点
  • タスペーサーを用いた縁切りがおすすめな理由

しないとどうなる?縁切り作業の役割と重要性

そもそも「縁切り」とは、屋根材が重なり合った部分の塗膜を切り、水の通り道となる隙間をつくるための作業です。

スレート屋根では、板状の屋根材が1枚1枚重なりあうように釘で打ち付けられており、重なり部分に適切な隙間を設けることで、雨水や結露などによる水分が排出される仕組みになっています。

この縁切り作業を行わず、隙間が塗膜で塞がれた状態で放置してしまうと、行き場を失った水が釘を伝って屋根内部へ侵入し雨漏りが発生。やがて、下地の腐食や天井裏の不朽といった、建物そのものの耐久性に大きな影響を及ぼす劣化につながります。

そのため、縁切り作業はスレート屋根の雨漏り防止・耐久性維持に欠かせない、非常に重要な工程と言えるでしょう。

従来のカッター・皮スキによる縁切り工法の問題点

従来では、「塗膜カッター」や「皮スキ」といった道具を用いた縁切り工法が一般的でしたが、この工法には様々な問題点・デメリットがありました。

【従来の縁切り工法の問題点】

  • 塗装が剥がれたり、傷や汚れがつく可能性がある
  • 塗料の乾燥が不十分だと、隙間が塞がる可能性がある
  • 多くの時間と手間がかかるため、工期や費用も増えやすい
  • しっかり縁切りが施されているか目視では分かりにくい

カッターや皮スキを用いた従来の縁切りは、多くの手間と時間がかかるうえ、塗装後に行う必要があるため、剥がれや傷などでやり直しになるリスクを伴う、非常に繊細な作業です。

また、目視では変化がほとんどないため、悪徳業者による手抜きで縁切りが省略されていても分からない点も非常に大きなデメリットと言えるでしょう。

タスペーサーを用いた縁切りがおすすめな理由

上述した従来の縁切り工法の問題点を一挙に解消したのが、タスペーサーを用いた縁切りです。

タスペーサーは塗装前に挿入するため、塗膜が剥がれることはなく、塗装後に引き抜く必要もないので傷や足跡の汚れがつく心配もありません。物理的に隙間を確保できるため、乾燥不十分で隙間が塞がることもなくなります。

また、従来の縁切りは職人2人で丸1日かかる作業でしたが、タスペーサーを使用すれば1人で2〜3時間ほどまで作業時間を短縮可能。その分の工期や人件費も抑えられるため、タスペーサーを使用したほうがかえって安くすむ場合がほとんどです。

塗装完了後も、適切に縁切りされているかが一目瞭然なので、悪徳業者の手抜き工事を見落とす心配もありません。

このように、タスペーサーを使用すれば従来の縁切り工法の問題点をすべて解消可能です。加えて工期や費用を抑えることも可能なため、タスペーサーが使用できる屋根では積極的に使うようにしましょう。

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タスペーサーを使用すべき屋根といらない屋根

屋根塗装の縁切りにおいて、非常に重要な役割を持つタスペーサーですが、すべての屋根に必要というわけではありません。

ここでは、タスペーサーを使うべき屋根といらない屋根について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

「スレート屋根」ではタスペーサーを使用すべき

タスペーサーを使用すべき屋根は、一般的な住宅で多く採用されている「スレート屋根(コロニアル・カラーベスト)」のみとなっています。

スレートは、薄い板状に加工した屋根材を重ねて造られるため、塗装によって屋根材と屋根材の隙間が塞がれやすいのが特徴です。

特に、新築時や1回目の屋根塗装の際など、屋根材の劣化がそれほど進んでいない段階では隙間が少ない場合が多いので、積極的にタスペーサーを使用すべきでしょう。

関連記事:スレート屋根の特徴とは?寿命・補修時期・アスベスト処理について徹底解説

タスペーサーがいらない・使用禁止のスレート屋根

タスペーサーは、スレート屋根でのみ使用する専用部材ですが、スレート屋根であってもタスペーサーがいらない・使えないケースも存在します。

【タスペーサーがいらない・使用禁止のスレート屋根】

  • 塗装前の時点で4mm以上の隙間がある場合
  • 経年劣化などで屋根材が割れやすくなっている場合

塗装前の時点で4mm以上の隙間がある場合は、縁切りをしなくても問題なく水が排出できるため、タスペーサーは必要はありません。なお、経年劣化で屋根材が反っている場合などに、4mm以上の隙間ができる場合が多いです。

また、経年劣化やメンテナンス不足で屋根材が割れやすくなっている場合は、そもそも塗装工事に適さないため、タスペーサーは使用できません。劣化があまりに激しい場合は、「葺き替え」や「カバー工法」などの屋根の全面リフォームを検討しましょう。

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関連記事:屋根リフォームの種類と費用は?部分修理の費用や補助金も紹介

タスペーサーの種類による違いと価格・施工費用

ここでは、タスペーサーを利用する際に知っておくべき基礎知識として、種類による違いと単価・施工価格について解説します。

  • タスペーサー「01」と「02」の違い
  • タスペーサーの単価・施工価格

タスペーサー「01」と「02」の違い

タスペーサーには「01」と「02」の2種類があり、それぞれ以下のような異なる特徴を持っています。

製品 タスペーサー01(新型) タスペーサー02(旧型)
特徴 緩衝性・通気性・耐溶剤性に優れた新型タスペーサー 通常の屋根塗装に用いられる汎用性の高い従来型タスペーサー
適用塗料 強溶剤型塗料 水性塗料・弱溶剤型塗料
入れるタイミング 下塗り前 下塗り後

「タスペーサー02」は汎用性の高い従来型、「タスペーサー01」は従来の02をもとに、緩衝性・通気性・耐溶剤性をよりパワーアップさせた新型製品となっています。

特に大きく異なるのは、適用塗料やタスペーサーを入れるタイミングです。耐溶剤性が向上したことにより、強溶剤型塗料を用いた塗装や、プライマーなどを使用する下塗り前の挿入が可能になりました。

タスペーサーの単価・施工価格

タスペーサーを使用した縁切りにかかる単価・施工価格は以下のとおりです。

縁切り工法 タスペーサーでの縁切り 従来の縁切り
1㎡あたりの平米単価 300〜500円/㎡ 500〜800円/㎡
1棟あたりの施工価格(30坪・戸建ての場合) 約2〜4万円 約3〜6万円

タスペーサーを用いた縁切りは、一般的な30坪の戸建て住宅で約2〜4万円となっており、カッターを使う従来の縁切りよりも、工期や人件費が抑えられる分、施工価格も安くすむ可能性が高いです。

ただし、屋根の面積やタスペーサーの種類・取り付け方、施工業者によっても変動しますので、上記の金額はあくまで目安としてお考えください。

正確な費用が知りたい場合は、自宅屋根の場合でどの程度の費用がかかるのか、より詳しい見積もりを出してもらいましょう。3〜4社ほどの複数業者からの相見積もりを比較することで、適正な費用相場をつかめます。

https://gaiheki-madoguchi.com/

タスペーサーの使い方・入れる場所

タスペーサーは、スレート屋根の幅によって「シングル工法」と「ダブル工法」の2種類の取り付け方法があります。

どちらの工法が採用されるかによって、入れる場所やタスペーサーの必要数などが大きく異なるため、見積もりや打ち合わせの段階でしっかり理解しておくことが大切です。

シングル工法【60cm幅のスレート】

シングル工法は、60cm幅のスレート1枚に対して、1個のタスペーサーを使用する取り付け方法です。

タスペーサーは、スレートのどちらか一端から15cmほど内側の場所に入れます。取り付け位置にスリットが入っている場合は、端から10cmほどの場所に取り付けましょう。

ダブル工法【90cm幅のスレート】

ダブル工法は、90cm幅のスレート1枚に対して、2個のタスペーサーを使用する取り付け方法です。

タスペーサーは、スリットの有無にかかわらず、スレート両端から15cmほど内側の場所に1個ずつ挿入します。

【注意】DIYでタスペーサーを取り付けるのは危険!

タスペーサーの取り付けは一見簡単に見えるため、自分で設置しようとする方がいますが、DIYは様々なリスクを伴うため基本的におすすめしません。

タスペーサーは、屋根材の幅や使う塗料によって、取り付ける場所や数が大きく異なります。詳しい知識を持たずに施工し、取り付ける場所や数にミスがあった場合、タスペーサーの効果が十分に発揮されません。

また、タスペーサーの取り付けは、屋根に登っての高所作業となるため、滑落などの命にかかわる事故リスクも伴います。

DIYをすれば初期費用を抑えることはできますが、失敗したときのリカバリー代や、慣れない高所作業による事故や怪我などで、業者に依頼するよりもかえってコストがかさむ可能性も。

そのため、タスペーサーを使用する際は、安全性や確実性を考慮して専門業者に依頼することを強くおすすめします。

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タスペーサーを正しく利用して縁切り作業を効率化しよう

本記事では、タスペーサーおよび縁切りの重要性やいらないケース、種類・施工価格や使い方などを詳しく解説しました。

タスペーサーは、スレート屋根塗装の「縁切り」を効率的に行うために欠かせない専用部材です。

カッターや皮スキを用いた従来の縁切り工法では、下記のような様々なデメリットがありましたが、タスペーサーを使用すればこれらの問題点をすべて解消可能です。

【タスペーサーで解消できる従来の縁切り工法の問題点】

  • 塗装が剥がれたり、傷や汚れがつく可能性がある
  • 塗料の乾燥が不十分だと、隙間が塞がる可能性がある
  • 多くの時間と手間がかかるため、工期や費用も増えやすい
  • しっかり縁切りが施されているか目視では分かりにくい

業者によっては工期や費用を抑えることも可能なため、スレート屋根の塗装を行う際は積極的にタスペーサーを使用して、効率的かつ高品質な縁切りを進めてもらいましょう。

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