屋根のリフォーム費用を安く抑えたい場合は、重ね葺きがおすすめです。他の工法に比べて手間がかからないため、費用を抑えられるとともに工期も短くできます。しかし、すべての屋根材に対応できるわけではないので、事前確認が必要です。
この記事では、屋根の重ね葺きにかかる費用の相場や耐用年数を解説します。欠点や工事後に後悔しない対策も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
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屋根の重ね葺きとは?
重ね葺きとは、既存の屋根の上に新しい屋根材を取り付ける工法で、「カバー工法」とも呼ばれます。すべての屋根に対応できるわけではなく、既存の屋根が軽量で劣化が少ない場合であれば工事が可能です。
重ね葺きの費用相場
重ね葺きの平均施工費用は、一般的な30坪の住宅で150~240万円です。屋根の面積や形状によって費用は変動しますが、200万円前後の費用を見積もっておくと良いでしょう。
ただし、同じ坪数の家でも、下屋根がある場合や屋根の面が多い場合は、費用が高額になります。また、屋根のリフォームでは足場の設置が必須なため、階数が多い建物や資材の運搬に手間がかかる場所だと、相場よりもコストが高くなる場合があります。立地条件や建物の形状によって費用が大きく変わるため、事前に業者に見積もりを依頼しておきましょう。
重ね葺きの耐用年数
重ね葺きでリフォームした屋根の耐用年数は、20~30年が一般的です。施工後のメンテナンス頻度は、10年に1回程度で十分です。 ただし、屋根を3重以上にすることは難しいため、今後も長く住み続けたい場合は、20~30年後に屋根を撤去するケースも考えておく必要があります。
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重ね葺きのメリット
重ね葺きは費用面や安全面、機能性などで多数の利点があります。ここでは、主なメリットを4つ紹介します。
リフォーム費用が安い
重ね葺きは葺き替えよりも費用が抑えられるメリットがあります。葺き替えとは、既存の屋根を撤去して、新しい屋根材に交換する工法です。葺き替えとは違い、既存の屋根を撤去する作業が必要ないため、屋根材を撤去するための人件費や廃材処分費がかかりません。 そのため、葺き替えよりもリフォーム費用を安く抑えられます。
工期が短い
既存の屋根を撤去せずに新しい屋根材を上から取り付けるだけなので、葺き替えよりも工期を短く抑えられます。葺き替えは古い屋根を撤去する際に養生が必要なため、工事期間が7~30日程度かかります。一方で、重ね葺きは養生が不要なので、約5~14日の短い期間でリフォームが完了します。工期が短ければ日常生活への支障を最小限に抑えることができ、近所からのクレームも少なくなるでしょう。
断熱性・遮音性・防水性が高まる
既存の屋根の上に新しい屋根を重ねると二重構造になるため、断熱性・遮音性・防水性が向上します。住宅の快適性が増すため、より暮らしやすくなります。冬の寒さが厳しく暖房の効き目を感じない、雨音や近所の騒音が気になる、という場合に適した工法です。
アスベストが飛散しない
屋根を壊さずにリフォームできるのも利点の一つです。アスベスト材はがんの原因になりやすい石綿が使用されているため、現在では製造や使用が中止されていますが、既存の屋根にはアスベスト材が含まれている場合があります。
葺き替え工事を行う場合、解体時にアスベストが飛散しないように対策しなければならず、処分費用が高額になります。しかし、重ね葺きならアスベストの飛散リスクが少なく、ホコリやチリも発生しにくいため、近所に迷惑をかけずに安全に工事を進められます。
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重ね葺きのデメリット
重ね葺きにはメリットが多い一方で、欠点もあります。工事が終わってから後悔することがないように、あらかじめデメリットを確認しておきましょう。
耐震性が低下する可能性がある
工事によって屋根が二重構造になると、屋根全体の重量が増えるため、耐震性能が低下する場合があります。屋根は建物の最上部に位置し、地震が起きたときに建物の揺れの大きさに大きく影響します。屋根が重くなると建物の重心が高くなり、揺れが大きくなる可能性があるため注意が必要です。
揺れが大きくなれば揺れる時間も長くなり、地震による被害も大きくなります。多くの住宅では問題ありませんが、不安な場合は工事をする前に屋根の重量に問題がないかを業者に相談しておきましょう。
厚みがある屋根材には対応できない
波型の形状や厚みがある屋根材は、上から新しい屋根材を設置できません。基本的にフラットで軽量な屋根材の上からしか施工できないため、陶器やセメントで作られた日本瓦の屋根には対応できません。施工できる屋根は限られているため、 リフォームする前に業者に相談しておくことをおすすめします。
屋根の下地補修ができない
屋根の下地や内部が劣化している場合は事前に補修が必要ですが、新しい屋根をかぶせるだけでは補修ができません。補修しないまま工事を進めてしまうと、劣化がどんどん進んでいき、建物の寿命を早めてしまいます。
家の築年数が浅い場合は大丈夫ですが、築年数が古く屋根材や下地が劣化している場合は、葺き替えをした方が良いでしょう。
火災保険が使えない
火災保険は使えない可能性が高く、費用を自己負担するケースが一般的です。火災保険が適用されるケースは、雷や強風、雪などの自然災害が原因で破損や雨漏りなどの被害を補修する場合です。
しかし、損傷した屋根の上から新しい屋根を設置する工事は、火災保険の適用条件に当てはまらないため、火災保険を利用できないケースが多いです。
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重ね葺きにおすすめの屋根材
既存屋根の上から新しい屋根材を葺く工法では、基本的に軽量なものが適しています。ここでは、おすすめの屋根材を3つ紹介します。
関連記事:屋根材8種類の特徴まとめ!耐久性・費用相場とリフォームでの選び方を解説
ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板は軽量で耐用年数が約30年と長く、リフォームで最も採用されることの多い人気の屋根材です。ガルバリウム鋼板は合金でメッキされた鉄なので、サビのメンテナンスを定期的に行えば、40年以上の耐久性も期待できます。
金属屋根材なので、他の屋根材に比べて軽く、重ね葺きに最も適しています。屋根の勾配が緩い建物でも施工可能なため、多様なデザインにも対応でき、デザイン性が高いのも魅力です。
関連記事:ガルバリウム鋼板とは?メリット・デメリットと費用相場・耐用年数を解説
ジンカリウム鋼板
ジンカリウム鋼板は、ガルバリウム鋼板の表面に石粒をコーティングした金属製の屋根材です。流通量は少ないですが、非常に軽量で、ガルバリウム鋼板よりも雨音を抑えやすいメリットがあります。
表面の石粒により傷がつきにくく、サビや紫外線に強いため、施工後は30~40年塗り替えが不要です。製品単価が高いのがネックですが、メンテナンス費用を抑えられるため、長い目で見ればコストパフォーマンスは良好です。
ファイバーグラスシングル
ファイバーグラスシングルは、北米の8割以上の住宅に使用されている人気の屋根材です。独特の2層構造により、立体感のある陰影と個性豊かで深みのある表情を演出できます。また柔軟性があり、作業性に優れているため、リフォーム材にピッタリです。
米国規格の各種試験で高い性能が証明されており、有害なアスベストも含まれていないため、安全面でも問題はありません。雨音の心配もないので、遮音性を高めたい人におすすめです。
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重ね葺きの工事の流れ
重ね葺きの施工手順は以下のとおりです。
- 屋根の頂点にある棟などを撤去
- 防水シート(ルーフィング)を既存の屋根材に敷く
- 水切り、唐草などの板金部材を取り付ける
- 本体を屋根に敷き詰める
- 棟板金を載せてビスで固定する
屋根を葺き替える場合は、屋根を撤去する手間がかかりますが、重ね葺きは既存の屋根材を撤去・解体する作業が不要なため、葺き替えよりも少ない工程で工事が完了します。
ただし、屋根の下地が劣化していると補修が必要なため、工事前に事前確認が必要です。築年数の長い建物は劣化している可能性が高いので、あらかじめ業者に点検を依頼しましょう。
なお、すでに葺き替えした屋根の上から再度屋根を重ねることは基本的にできません。屋根が重くなると耐震性に影響するため、葺き替えを検討した方が良いでしょう。
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重ね葺きで補助金は利用できる?
長期優良化リフォーム推進事業制度を利用すると、補助金を支給してもらえる可能性があります。ただし、屋根のリフォームで補助金を受け取るには、耐震性能を上げる目的での工事である必要があります。
つまり、ただ単に屋根をリフォームするだけでは、補助金を受け取ることはできません。また、工事によって屋根の重さが増すと、かえって耐震性能が低下する可能性があるため、葺き替え(屋根の下地・屋根材を含めた全体を交換する工事)を選んだ方が補助金を受け取りやすいといえます。補助金の受給条件を確認した上で、利用すべきかどうかを慎重に判断しましょう。
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関連記事:【2024年版】外壁塗装の助成金・補助金まとめ|申請方法・条件や注意点を解説
重ね葺きのメリット・デメリットを把握してリフォームに活かそう
重ね葺きは費用が安く、工期を短くできるメリットがある一方で、耐震性が低下するといったデメリットがあります。すべての屋根材に使用できるわけではなく、下地に劣化があると施工できないため、業者とよく相談しながらリフォームの方法を選ぶ必要があります。
まずは屋根の施工に精通した業者に相談して、自宅の屋根の状態を確認してもらうことから始めましょう。信頼できる業者とじっくり相談して進めていくことで、満足いくリフォームを実現できます。
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