屋上の広いスペースを有効活用できることから、戸建住宅でも人気を集める陸屋根(ろくやね)ですが、ほとんど勾配がないフラットな形状であることから雨水が溜まりやすく、劣化が進んで雨漏りしやすい屋根形式でもあります。適切な防水工事を行うことで雨漏りを対策することが可能ですが、排水溝の詰まりを放置したり、パラペットと呼ばれる壁の部分にひび割れが発生したりすると、雨水が侵入して建物を傷める原因になってしまいます。
本記事では、陸屋根から雨漏りが発生する原因と対策、必要となる修理費用や防水工事の種類・寿命についても解説します。自宅の陸屋根からの雨漏りが疑われる方、雨漏り対策のための防水工事を検討している方はぜひ参考にしてください。
雨漏り修理の費用に関する詳しい解説はコチラ
雨漏り時の火災保険に関する詳しい解説はコチラ
陸屋根は通常の屋根よりも雨漏りしやすい
陸屋根は通常の傾斜のある三角屋根と比べて、雨漏りを起こしやすい屋根とされます。というのも、屋根がフラットで雨水が流れ落ちない構造になっているためです。陸屋根にも緩やかな傾斜が存在し、排水溝へ雨水が流れやすい構造になっていますが、三角屋根と比較すると雨水が溜まりやすい屋根です。
また、一般的な戸建住宅であれば、スレートやガルバリウム鋼板、瓦などの防水機能を果たす屋根材に加えて、下地で防水シートを用いることで雨水の侵入を防止しています。しかし陸屋根では屋根材が使用されておらず、防水工事による防水層のみが防水機能を担っていることも雨漏りを起こしやすい一因です。
陸屋根から雨漏りする3つの原因
雨漏りを起こしやすい屋根とは言っても、陸屋根は適切にメンテナンスを実施していれば急に雨漏りを引き起こすことはありません。陸屋根からの雨漏りが発生する原因には、次の3つが挙げられます。
- 防水層の劣化
- 排水溝の詰まり
- パラペット部分のひび割れ・隙間
雨漏りの原因を知ることによって雨漏り対策を考える時にも役立つので、それぞれ詳しく解説しましょう。
関連記事:雨漏りが起きる5つの原因とは?適切な対処法と修理業者の選び方
防水層の劣化
陸屋根からの雨漏りの大きな原因の一つが、防水層の劣化です。陸屋根の床面に施工されている防水層が経年劣化によって傷んでしまい、防水機能が失われることで、床面を伝って室内に雨漏りを起こしてしまうのです。陸屋根の防水工事を実施したばかりであっても、施工不良や業者の手抜き工事によって十分な防水機能を果たせていないために、雨水が侵入してしまうことも考えられます。
そのため陸屋根をメンテナンスする際には、信頼できる防水工事業者を選び、防水層の寿命に合わせて適切なサイクルで工事を行うことが大切です。
排水溝の詰まり
陸屋根に溜まった雨水を排水するための排水溝が詰まってしまい、プールのように雨水が溜まり雨漏りを起こすこともあります。近隣から飛来した落ち葉や砂・ホコリ、ビニール袋などのゴミ、ペットの抜け毛などが詰まりの原因として考えられます。陸屋根の防水層は、排水溝が詰まってプールのように雨水が溜まっても耐えられるような設計ではないため、こうした状態を放置すると雨漏りを起こしやすくなるのです。
パラペット部分のひび割れ・隙間
パラペットとは、陸屋根の外周に設置された低い壁の部分を指します。このパラペット部分と床面の継ぎ目や壁面にひび割れ・隙間が生まれてしまうことで、雨水が侵入し、室内の雨漏りにつながることもあります。特にパラペットと床面の継ぎ目部分は、日陰になることが多く湿気が溜まって劣化しやすいため、こまめな手入れが必要です。
陸屋根の雨漏り修理の費用相場
陸屋根の雨漏り修理を依頼する場合、雨漏りの原因を特定するための調査費用と修理費用、その後の防水工事にかかる費用が発生します。雨漏りの修理費用だけであれば、20万円〜100万円ほどが目安になるでしょう。陸屋根の防水工事を実施する際には、塗膜防水・シート防水など防水工事の種類によって金額は変動しますが、1平米あたり4,000円〜1万円ほどが目安になります。
台風や積雪といった自然災害の被害を受けた陸屋根では火災保険を使える可能性があるほか、自治体の補助金・助成金を使って雨漏りを修理できるケースもあります。自宅の陸屋根でこれらを活用できる場合には、積極的に申請することで雨漏り修理の費用負担を軽減できるでしょう。
関連記事:屋根の修理費用の相場はいくら?工事内容ごとの料金目安と業者の選び方を解説
陸屋根からの雨漏りを防ぐためのメンテナンス
陸屋根からの雨漏りを防ぎ、高額な修理費用が発生しないためにも、陸屋根は定期的なメンテナンスを実施することが重要です。ここでは陸屋根からの雨漏りを防ぐためにできるメンテナンス方法を2つご紹介しましょう。
定期的に陸屋根を清掃する
陸屋根の雨漏り対策として、日常的に清掃することを心がけましょう。定期的に陸屋根のゴミや汚れを落とし、排水溝のつまりを解消することにより、防水層の劣化を防ぐことができます。防水層やパラペット、排水溝の異常にも気づきやすくなるので、日頃から点検を兼ねて清掃するようにしましょう。
約10年ごとに防水工事を行う
陸屋根の防水工事では、塗膜防水やシート防水と呼ばれる工事が用いられることが多いですが、これらの工事によって形成される防水層の耐用年数は、10年〜15年程度となっています。適切にメンテナンスしていたとしても、耐用年数を超えると雨漏りを起こしやすくなるため、約10年単位で業者による点検や防水工事を行うことをおすすめします。自宅の広範囲で雨漏りが発生したりすると、雨漏りの修理費用が高額になってしまう可能性も高いので、雨漏りが深刻化する前にこまめな防水工事を依頼するのが大切です。
陸屋根からの雨漏り対策になる防水工事
陸屋根からの雨漏り対策として、定期的な防水工事が重要であることは前述した通りです。屋根塗装や屋根材にグレードがあるのと同様に、陸屋根の防水工事にもいくつかの種類が存在します。どの防水工事を依頼するのかによって、費用・耐用年数が異なってくるため、自宅に適した防水工事を選ぶことが大切です。
ここでは陸屋根における防水工事の種類として、次の3つをご紹介します。
- 塗膜防水
- シート防水
- アスファルト防水
それぞれの特徴を踏まえた上で、依頼する防水工事を検討しましょう。
塗膜防水
塗膜防水は、ウレタン樹脂もしくはFRPと呼ばれる防水材を屋根全体に塗装することで防水層を形成する工事です。耐用年数は10年前後と耐久性は高くありませんが、数日〜1週間で完了する工期の短さが大きな特徴となっています。軽量で建物への負担が少ないため、条件を問わず塗装できるメリットもあります。塗料を用いて防水工事を行うので、凹凸のある陸屋根や特殊な形状の陸屋根にも対応できます。
一方で、工事中に雨が降ると作業を中断せざるを得ないほか、均一な防水層を形成するためには職人の技術力が問われる点に注意が必要です。FRP防水の場合には、工事中の臭いに対して近隣からクレームが寄せられやすい点も押さえておきましょう。
シート防水
シート防水は、陸屋根全体に塩化ビニールや合成ゴムを原料とした防水シートを、接着剤やビスによって貼り付ける防水工事です。シートを貼り付けるだけなので塗膜防水よりもさらに工期を短縮できるほか、耐用年数が10年〜15年とやや長くなる一方で費用はそこまで高額ではないため、コストパフォーマンスに優れた防水工事として人気があります。
ただし風が強い立地条件の陸屋根には不向きであり、継ぎ目部分の施工では高い技術力を必要とする点に注意が必要です。
アスファルト防水
アスファルト防水は、防水工事の中では最も耐用年数が長く、費用が高額になる工事です。液状もしくはシート状のアスファルトを用いて防水層を形成し、高い耐久性を持った陸屋根を実現することが可能です。古くから日本でも使われ続けてきた工法であり、熱工法・トーチ工法・常温工法などの種類があります。
ただしアスファルト防水を実施する場合、重量のある防水材を用いることから、建物への負担が大きくなる点に注意が必要です。築年数が古い住宅では、耐震性が低下するなどのデメリットも発生するので、慎重に施工した方が良いでしょう。
なお、陸屋根の防水工事について詳しくは、下記のページも参考にしてみてください。
関連記事:陸屋根防水の種類と費用は?工事業者を選ぶポイントも解説
陸屋根からの雨漏り修理を依頼する業者選びのコツ
陸屋根からの雨漏りが発生した際には、一刻も早く専門業者の点検・修理を依頼して、建物が傷んでしまわないように対処する必要があります。しかし雨漏り修理には高い専門知識と技術力を必要とするため、陸屋根の施工実績が少ない業者に依頼してしまうと、施工不良を起こすリスクが高まってしまいます。
そのため陸屋根からの雨漏りの修理工事は、会社ホームページなどをチェックして陸屋根の修理実績が豊富な業者の中から選ぶのが大切です。今後晴れの日が続くようであれば、複数の業者に見積もりを依頼して、修理費用や担当者の対応を比較しながら、依頼する業者を検討することをおすすめします。
関連記事:納得できる屋根修理業者の探し方とコツ|悪徳業者を見分ける方法も
まとめ
陸屋根は勾配が少なく屋根材による防水機能も備えていないため、雨漏りしやすい屋根の一つです。床面の防水層が劣化したり、排水溝が詰まって雨水があふれたりしてしまうと、パラペット部分のひび割れなどから雨漏りを起こす可能性が高いです。陸屋根の雨漏りでは、約20万円〜100万円ほどの修理費用が必要になるため、雨漏りが発生する前に排水溝を掃除したり防水工事を行ったりして、防水層の劣化を防ぐことが重要です。
雨漏りを防ぐための陸屋根の防水工事には、塗膜防水やシート防水、アスファルト防水などの種類があります。ぞれぞれの工法によって耐用年数や施工費用は異なるため、自宅に適した工法で工事を依頼するのが大切です。本記事を参考に、陸屋根からの雨漏りの原因を踏まえて対策を行い、長く住み続けられる住宅を目指しましょう。