台風や積雪、雹の被害を受けた屋根の修理では、自宅の火災保険の補償を受けることが可能です。火災保険の保険金を受け取ることにより、屋根の修理費用の負担を減らし、少ない自己負担額で工事を行えるメリットがあります。
ただし、すべての屋根修理で火災保険が使えるとは限らず、住宅の火災保険のタイプによっては被害が補償されない可能性があるほか、経年劣化による破損とみなされて保険金がおりないことも考えられます。火災保険の補償を受けるためには正しい手順で申請する必要があるため、請求までの流れを押さえておくことが重要です。
本記事では、屋根修理で火災保険を申請する方法について、補償されないケースや具体的な請求手続き、火災保険を使う時の注意点などについて解説します。
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屋根修理で火災保険を使える条件
屋根修理で火災保険による補償を受けるためには、次の3つの条件に当てはまっている必要があります。
- 自然災害による被害を受けた屋根の修理であること
- 被害を受けたから3年以内であること
- 屋根の修理費用が免責金額を上回っていること
一つでも当てはまらない条件があると火災保険の補償は受けられないため、それぞれチェックしておきましょう。
自然災害による被害を受けた屋根の修理であること
屋根修理で火災保険を使うためには、実施する屋根の修理が自然災害によって被害を受けたものである必要があります。具体的には、台風によって瓦が飛んでしまうなどの「風災」、雹(ひょう)が降って屋根が割れたり穴が空いたりする「雹災」、積雪の重さに屋根が耐えられずに被害を受けてしまう「雪災」などが挙げられます。これらの被害を受けた結果、雨漏りを起こすようになったり、屋根材に破損・ズレがみられるようになった場合には、火災保険の補償を受けられる可能性が高いです。
一方で、経年劣化によって傷んでしまった屋根の修理や、地震の影響で屋根材がズレてしまった場合の修理は、火災保険の適用外となります。経年劣化は自己負担で修理する必要があり、地震による被害は地震保険による補償を受けられます。
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被害を受けたから3年以内であること
屋根修理で火災保険を使用できるのは、被害を受けてから3年以内に修理した場合です。3年以上経過してから屋根の修理に火災保険を使おうと考えても、屋根の被害が自然災害によるものかどうかを判断できず、補償が受けられなくなるのです。そのため5年前の台風で被害を受けた屋根を修理したい場合にも、火災保険は使用できません。
屋根の被害は雨漏りを引き起こす原因となり、屋根材の内側を痛めてしまう可能性も高まります。建物の寿命を縮めてしまわないためにも、自然災害による屋根の修理は早めに依頼することが大切です。
なお、火災保険を申請する前に屋根修理を行った場合にも、被害を受けた当時の写真などを揃えて提出できれば、後から火災保険の補償を受けることは可能です。
屋根の修理費用が免責金額を上回っていること
火災保険の中には、「20万円以下の被害は補償されない」などの免責金額が設けられていることがあります。免責金額は加入する火災保険のプランによっても異なりますが、仮に20万円の免責金額が設定されている場合には、火災保険を使うためには20万円以上の屋根修理費用が発生することが条件になります。
多くの場合、屋根修理では高所での作業を行うための足場を設置する必要があり、この足場代は15万円〜20万円ほどの費用が発生します。そのため足場代を含めて屋根の修理費用の見積もりを取ることで、保険金を受け取れる可能性が高まります。被害を受けた屋根の修理で保険金を受け取れるよう、なるべく複数の業者から見積もりを取り寄せながら修理費用を確認すると良いでしょう。
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屋根修理で火災保険を申請する方法・流れ
屋根修理で火災保険を申請するためには、以下のような流れで手続きを行う必要があります。
- 3つの必要書類を用意する
- 鑑定人による現地調査を受ける
- 保険金が確定して振り込まれる
それぞれ順番にご紹介しましょう。
3つの必要書類を用意する
屋根修理で火災保険を申請するためには、まず以下の3つの書類を準備する必要があります。
- 保険金請求書
- 修理見積書
- 被害を受けた屋根の写真
「保険金請求書」は、火災保険の補償を受けるために氏名・住所・振込先などを記入する書類です。保険会社に火災保険を使用したい旨を伝えることで、請求書はすぐに入手することができます。場合によっては「事故状況説明書」と呼ばれる書類が追加で必要となることもあります。
「修理見積書」は屋根の修理業者が発行するもので、屋根の修理にどれだけの費用が必要になるのかを証明する書類となります。複数の業者に相見積もりを依頼して比較・検討しながら、依頼する修理業者を見極めるのが大切です。
「被害を受けた屋根の写真」に関しては、ご自身で撮影して準備することも可能ですが、屋根修理の場合には屋根に上がる必要が出てくるため、安全のためにも修理業者に撮影を依頼した方が安心です。
鑑定人による現地調査を受ける
必要書類を準備して保険会社に火災保険を申請すると、保険会社から保険鑑定人が派遣され、現地調査が行われることもあります。必ずしも現地調査が行われるわけではありませんが、現地調査を行う旨の連絡があった場合には、誠実に対応するようにしましょう。
保険金が確定して振り込まれる
保険会社による審査が完了し、火災保険の対象であることが認められると、保険金が確定してご自身の口座に振り込まれます。保険金が確定した段階で、屋根の修理業者に依頼して工事を始めてもらうと良いでしょう。
なお、火災保険で受け取った保険金は、原則として自由な用途で使用することが可能です。必ずしも申請時の工事内容を行う必要はなく、たとえば自己負担で屋根材のグレードを高めることも可能です。屋根の耐久性を高めるためにも、屋根の修理業者と相談しながら自宅に最適な工事内容を決定しましょう。
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屋根修理で火災保険の補償が受けられないケース
屋根修理では、火災保険の補償対象である自然災害による被害であれば、原則として保険金を受け取ることが可能です。しかし以下のようなケースに当てはまる場合には、火災保険の補償が受けられないこともあります。
- 経年劣化による屋根の修理である
- 屋根の修理費用が免責金額以下である
- 屋根カバー工法を行う場合
それぞれのケースについて順番に解説します。
経年劣化による屋根の修理である
修理が必要となった屋根の被害が、経年劣化によるものである場合には、火災保険の補償外となります。紫外線や風雨によって屋根の劣化が進み、屋根材の耐用年数を過ぎている場合などは、自然災害をきっかけに破損したとしても保険金を受け取れない可能性が高いです。一部の悪質な業者の中には、「経年劣化でも火災保険を直せる」というセールストークで、虚偽の申請で保険金を受け取ろうとするケースもあるためご注意ください。
屋根の修理費用が免責金額以下である
屋根の修理費用が軽微で、被害額が免責金額を下回る場合にも、火災保険の適用外となります。たとえば屋根瓦が1枚だけ飛ばされてしまい、小規模な補修工事で対処できる場合には、火災保険の補償が受けられない可能性が高まります。保険金を受け取るためにと、屋根全体の修理が必要であるかのように虚偽の申請をするのは契約違反となるためNGです。
屋根カバー工法を行う場合
火災保険による屋根修理では、被害を受けた屋根を元に戻す修理が補償範囲となるため、屋根カバー工法など既存の屋根をグレードアップさせる工事費用は対象になりません。そのため火災保険を受けるために申請できるのは、屋根の被害を元に戻すための補修工事や葺き替え工事のみとなります。ただし、補修工事のための保険金を受け取った後、ご自身で追加費用を支払ってカバー工法を実施するのであれば問題ありません。
関連記事:屋根カバー工法とは?費用相場とメリット・デメリット、工事できない家の条件も
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屋根修理で火災保険を使う時の注意点
最後に、屋根修理で火災保険を使う時に押さえておきたい注意点について、以下の3つをご紹介します。
- 火災保険による屋根修理が得意な業者を選ぶ
- 保険金が確定してから業者と契約する
- 虚偽の申請で保険金を受け取らない
これらの注意点も踏まえながら、火災保険を申請するようにしましょう。
火災保険による屋根修理が得意な業者を選ぶ
火災保険を使った屋根修理を検討する場合、過去に火災保険を使った屋根修理を行った実績があるなど、火災保険の申請を得意とする業者を選ぶと良いでしょう。火災保険の申請の流れについて熟知し、申請方法について相談に乗ってくれる業者であれば、安心して工事を進めることができます。
ただし、火災保険の申請は必ず契約者が行う必要があり、手続きを代行しようとする業者は避けた方が良いでしょう。見積もり前に「必ず火災保険を受け取れます」などのセールストークを使ってくる業者も警戒が必要です。
関連記事:納得できる屋根修理業者の探し方とコツ|悪徳業者を見分ける方法も
保険金が確定してから業者と契約する
屋根修理のために火災保険を申請したが、審査に通らずに保険金が支払われないケースも考えられます。そのため屋根の修理業者と契約するのは、保険金が確定した後がおすすめです。保険金の金額が確定する前に工事内容を決めてしまうと、想定よりも保険金が少なかった時に、自己負担額が大きくなる可能性があるからです。契約後のキャンセルを受け付けてもらえない可能性も出てきますので、保険金が決まる前に業者と契約するのは避けるようにしましょう。
虚偽の申請で保険金を受け取らない
少しでも多く保険金を受け取りたいからと、虚偽の内容で申請するのもNGです。「火災保険を使うために、台風による被害だと申告しましょう」などと業者に指示されるケースもありますが、こうした虚偽の内容で保険金を請求すると、契約違反となるばかりか「保険金詐欺」に加担する恐れがあります。火災保険を使う時には保険会社に虚偽の内容を伝えることは避け、誠実に対応するようにしてください。
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まとめ
屋根修理で火災保険を適用するためには、自然災害による被害を受けた屋根の修理であること、被災から3年以内であること、そして加入している保険の免責金額を上回る修理費用が発生することの3点が条件となります。これらの条件を満たす工事であれば、保険金請求書や修理見積書を用意して保険会社に申請することで、保険金を受け取ることが可能です。
ただし、経年劣化による屋根の破損や、カバー工法などのグレードアップを行う屋根の修理では、火災保険は使用できないため注意が必要です。また、保険金が確定する前に工事内容を決めて契約し、その後保険金が支払われずに自己負担が大きくなってしまう事態を防ぐためにも、保険金が決まってから業者と契約することが大切です。業者のセールストークにしたがって虚偽の内容で火災保険を申請すると、契約違反や保険金詐欺に該当する可能性も出てくるため、絶対に避けるようにしましょう。