年季の入った家にはセメント瓦が使用されていることも少なくありません。ひび割れがしやすい瓦でもあるため、自宅にセメント瓦が使用されている場合、メンテナンスをいつ行うべきか迷う方もいるでしょう。
そこでこの記事では、セメント瓦の特徴を解説するとともに、補修をするタイミングやメンテナンス方法を紹介します。他の屋根瓦との違いや注意点も解説するので、ぜひ参考にしてください。
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セメント瓦とは?
セメント瓦は、セメントに川砂を混ぜて作られた屋根瓦のことです。耐用性が高いことが特徴で、耐用年数としては30~40年とも言われています。コストが安く抑えられ、多く製造しやすいことから、住宅不足が起きていた1970~80年代に広く普及しました。
セメント瓦と他の瓦屋根の種類との違い
セメント瓦のほかにも、屋根瓦にはさまざまな種類があります。ここでは、セメント瓦と他の瓦屋根との主な違いを解説します。
コンクリート瓦との違い
コンクリート瓦は、セメントに砂利を混ぜて作られた屋根材のことです。同じセメントを使用して作られる屋根材ですが、両者の違いは瓦の断面にあたる「小口部分」にあります。セメント瓦の小口は滑らかですが、コンクリート瓦の小口は粗い手触りが特徴。
また、コンクリート瓦は着色スラリーという塗料材によって表面加工が施されており、セメント特有の吸水性を解消している点でも異なります。
陶器瓦との違い
陶器瓦は粘土を素材にした屋根材のことです。陶器瓦とコンクリート瓦では、表面の見た目で見分けることが可能です。陶器瓦の場合、表面に釉薬が塗布されているためツルツルとしているのに対して、セメント瓦の表面はザラザラとしています。
また、陶器瓦とセメント瓦では耐用年数も大きく異なります。セメント瓦の耐用年数は30年程度ですが、陶器瓦は約50年と長いのが特徴です。
スレートとの違い
セメント瓦と同じく、セメントを主成分としている屋根材がスレートです。セメント瓦はその名前の通り、ほとんどセメントを主成分としているのに対して、スレートの場合はセメントに繊維質を混ぜて板状にして製造されます。
また、その成分の違いから、厚みにも違いがでます。上述した通り、スレートは繊維質を混ぜることによって強度を高めているため、厚みを6mmまでに薄くすることができるのが特徴です。対してセメント瓦の場合は強度を持たせるため、厚みが2~3cm以上になります。
スレート屋根について、より詳しく知りたい方は下記の記事も参考にしてくださいね。
関連記事:スレート屋根の特徴とは?寿命・補修時期・アスベスト処理について徹底解説
セメント瓦の良い点
セメント瓦の良い点として下記が挙げられます。
・デザインが豊富
・耐火性に優れている
・施工しやすい
下記ではそれぞれの点について詳しく解説します。
デザインが豊富
セメント瓦は和風から洋風までデザインが豊富で、形状やカラーもさまざまです。セメントはさまざまな形に加工しやすく、多くの種類もあり、自分好みの形状や色を選択できます。平たい形をしたセメント瓦は「平型瓦」と呼ばれており、和風と洋風のどちらにも使用できます。S字の形をして組み合わせたセメント瓦は「S型」と呼ばれており、カラーバリエーションが多いのが特徴です。
耐火性に優れている
セメントと川砂で作られたセメント瓦は可燃物が含まれていないため、燃えにくく、耐火性に優れている、といった特徴もあります。そのため、万が一住宅で火事が起きても、燃え広がるスピードを抑えて被害を抑制できます。
施工しやすい
セメント瓦は加工しやすく、技術的な難易度はそれほど高くありません。職人の手数も少なく済むため、施工がしやすく、施工にかかる費用も比較的に安く抑えられます。
また、上述した通り、セメントを主材料としたセメント瓦はさまざまな形状にカスタマイズしやすく、和風から洋風まで、建物のデザインに合う瓦に変えることができます。
セメント瓦の悪い点
セメント瓦の悪い点としては下記が挙げられます。
・衝撃に弱くひび割れしやすい
・メンテナンスコストがかかる
・アスベストを含む商品がある
コストはもちろん、家の耐久性にも関わってくるため、それぞれ詳しくみていきましょう。
衝撃に弱くひび割れしやすい
セメントを主成分としたセメント瓦は柔軟性に欠けるため、衝撃によってひび割れが起きやすいという特徴があります。ひび割れてしまった瓦を放置すると、雨が屋根の内部に入り込んで雨漏りが発生する危険があるため、交換などの早めのメンテナンスが必要です。台風や強風、地震などが発生した後は、飛来物や大きな揺れによってセメント瓦が破損していないかチェックしておきましょう。
メンテナンスコストがかかる
セメント瓦は耐水性を上げるために塗装を施しているため、定期的な塗り直しが必要です。 塗膜が色褪せて剥がれた状態を放っておくと、コケやひび割れなどの劣化につながり、屋根内部の雨漏りや腐食の原因にもなります。
そのため、塗料の耐久年数が近づいたら、定期的に塗装メンテナンスを行わなくてはいけません。初期費用は比較的安いものの、これらの塗装メンテナンスの費用がかかるため、トータルコストは高くなりがち、という点に注意しておきましょう。
アスベストを含む商品がある
セメント瓦は1970~80年代によく使われた屋根材であり、アスベストを含む商品が一定数存在します。アスベスト(石綿)は発がん性などの健康被害が懸念されるため、2006年以降は規制されています。
しかしアスベストを含む商品は多くはなく、またアスベストが含まれる場合でも、瓦が割れない限りは健康被害が起こるリスクは低いです。心配な方は、国土交通省が公開している「石綿(アスベスト)含有建材データベース」で検索して調べておきましょう。
セメント瓦の補修をするタイミング
セメント瓦は、新築から10年程経過したタイミングで塗装をするのが一般的です。
ただし、劣化の症状によっては10年よりも早いタイミングで補修した方が良い場合もあります。ここでは、セメント瓦の補修をすべき目安の劣化症状について解説します。
色褪せ
紫外線や雨風の影響により、セメント瓦の表面の塗膜が劣化すると、色が薄くなって色褪せてきます。色褪せは劣化症状の初期段階のため、すぐに塗り替えは必要ありません。
ただし見た目が悪く、塗膜が劣化していることに変わりはないため、経過観察が必要です。コケや塗装の剥がれなどが発生して劣化が進む可能性もあるため、周囲を点検して症状を確認しましょう。色褪せがひどくなると耐久性が落ちて雨漏りの原因となるため、劣化が進む前に塗装が必要です。
コケやカビの発生
セメント瓦の表面の塗膜が劣化すると、防水性が下がり、コケやカビが発生し始めます。特に、日中太陽の光が当たらない北面や東面で発生しやすいので注意が必要です。
もともとセメント自体に防水性はなく、塗膜が劣化すると瓦本体が雨を吸収してセメント部分が流されてしまいます。さらにコケやカビが繁殖すると、屋根材自体を傷めてしまい、健康被害が出る恐れもあります。放っておくと補修工事の規模も大きくなり、費用も高くなるため、早めにメンテナンスが必要です。
塗膜の剥がれ
セメント瓦の表面を塗装している塗膜は、紫外線や経年劣化によって徐々に剥がれてきます。塗料が激しく剥がれている場合は、建物内部で雨漏りが発生する恐れもあるため、早めに塗り直しましょう。塗装では対応できないほどの剥がれがひどい状態の場合は、葺き替え工事が必要になることもあります。
セメント瓦のメンテナンス・リフォーム方法
セメント瓦に劣化症状が現れたら、早めにメンテナンス・リフォームを行いましょう。放っておくと劣化が進行し、大規模な工事が必要になるため、早めの対応が必要です。劣化症状によってメンテナンス方法や費用も異なるため、ここでしっかり確認しておきましょう。
部分修理・差し替え
劣化した範囲が限られている場合は、部分修理や差し替えで対応できます。差し替えとは、劣化した瓦のみを新しいものに交換する方法で、費用は数万円〜15万円ほどです。
ただし、セメント瓦は現在ほとんど生産されていないため、入手が難しい場合があります。差し替え工事では既存の瓦と同じものを使う必要があるため、在庫がない場合は塗装や葺き替えなどの別の方法を選択することになります。
塗装
色褪せやコケ・カビなどの劣化症状が見られる場合は、塗装工事をしましょう。塗装によって防水性を高めることができ、屋根の美観も向上します。
一般的な30坪の戸建てを塗装する場合の費用相場は、およそ40~100万円ほどです。価格に幅があるのは、使用する塗料の種類や屋根の面積、劣化状況などによって費用が変動するためです。機能性の高い塗料を選ぶと、費用が高額になることがあります。
関連記事:屋根塗装の相場は40〜80万円が目安!坪数ごとの費用や内訳、安く抑えるコツを紹介
葺き替え
屋根の葺き替え工事は、屋根の下地・屋根材を含めた全体を交換する工事で、新築同様の耐久性を取り戻す効果が期待できます。費用としては、使用する屋根材によって100~250万円と大きく変動します。
また、既存のセメント瓦にアスベストが含まれている場合は、別途処分費用が必要です。処分費用は1㎡あたり2万円を超える場合もあるので、事前に調査を依頼しておくと良いでしょう。
なお、葺き替え工事の費用目安については、下記の記事をご覧ください。
関連記事:屋根の葺き替え工事とは?費用相場やカバー工法・屋根塗装との違いを解説
セメント瓦の特徴を把握して屋根材の選び方に活かそう
セメント瓦はメンテナンスをする際も、入手が難しいことから、別の屋根材への葺き替えが必要になる場合もあります。
既存のセメント瓦屋根を維持するためには、定期的な点検や補修が必要です。しかし、屋根のメンテナンスのタイミングについては素人判断では難しい場合もあります。屋根のリフォームやメンテナンスを検討する際は、最適な方法を専門家と共に考えることが重要です。
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