リシン塗装は施工価格が安く、落ち着いた雰囲気に仕上げられることから、モルタル外壁の中でも人気の仕上げ方法です。ただし、汚れが目立つといった難点もあるため、良い面だけでなく悪い面も把握した上で施工する必要があります。
この記事では、リシン塗装の特徴やメリット・デメリットを解説します。施工時に失敗を防ぐ方法や適切なメンテナンス方法も紹介しているので、リフォームをする際の参考にしてください。
外壁の塗り替え時期かも...
リシン塗装とは?
リシン塗装とは、モルタル外壁の塗装方法の1種です。リシンとは、石・砂・樹脂・顔料などを混ぜ合わせて作られた表面化粧材で、リシン塗装された外壁は小さな砂粒がまぶされたような細かい凸凹のある表面に仕上がります。独特の質感と風合いを実現できることから、外壁を落ち着いた雰囲気に仕上げたいときなどに選ばれます。
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リシン塗装の費用相場
リシン塗装の費用は1,000円~3,000円/㎡が相場です。モルタル外壁に用いられる仕上げ材には、リシン以外に「スタッコ仕上げ」や「吹き付けタイル仕上げ」がありますが、他の仕上げ材と比較しても工事費用は比較的安価です。
リシン塗装 | 1,000〜3,000円/㎡ |
吹き付けタイル仕上げ | 2,000~2,500円/㎡ |
スタッコ仕上げ | 3,000円/㎡ |
リシン塗装はコストパフォーマンスが良いため、一般住宅をはじめ、アパートやマンション、商業施設など幅広い建物に採用されています。屋根塗装と同時に施工すれば、工期を短縮でき、さらにコストを抑えられます。
リシン塗装の耐用年数
リシン塗装の耐用年数は8年ほどです。塗膜が薄くてひび割れしやすく、表面に汚れが付きやすいため、外壁塗装の中では耐用年数が短めです。耐久性が低下すると骨材がボロボロ落ちるため、定期的なメンテナンスが必要になります。
ただし、実際の耐用年数は立地場所や使用状況などによって変動します。紫外線が強く風雨にさらされる場所では耐用年数が短くなり、メンテナンスを怠ると劣化が早まる可能性もあるので注意が必要です。
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リシン塗装のメリット
リシン塗装には、費用面・機能面・デザイン面でさまざまなメリットがあります。満足いく施工を実現するために、あらかじめ利点を把握しておきましょう。
施工費用が安い
リシン塗装は、他の外壁塗料よりも施工費用が安いのが利点です。素材の価格は1㎡あたり1,000円〜という安価なので、新築時に使用すると工事費用を安く抑えられます。新築時は外壁塗装以外にもさまざまな費用がかかるため、少しでもコストを節約したい場合はリシン塗装を選ぶと良いでしょう。
壁面の耐久性を高められる
リシンは湿気を通す透湿性と通気性に優れており、外壁を長持ちさせる効果があります。壁面に雨水が染み込んだり湿気がこもったりするとリフォームが必要になりますが、透湿性と通気性が高ければ、外壁の劣化を防ぐことができ、住宅を長持ちさせてくれます。近年は防カビ効果や低汚染性を高めたリシン材も販売されており、外壁の耐久性向上に役立っています。
高級感のある仕上がりになる
一般的な塗料はテカテカした仕上がりが特徴ですが、リシン塗装はツヤが抑えられた落ち着いた雰囲気に仕上がります。上品で高級感のあるデザインに仕上げたいという人には、ピッタリの仕上げ材だといえるでしょう。色や質感は自由に選べるため、屋根塗装と同時に施工すれば、建物全体のデザインを統一できます。
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リシン塗装のデメリット
リシン塗装はメリットが多い反面、欠点もあります。良い面だけ見て施工すると後悔しやすいので、悪い面も把握した上で施工を検討することが大切です。
耐候性が低い
リシンは耐候性が低いという性質があり、ひび割れが発生しやすいのが難点です。壁面にひび割れができると雨水が侵入しやすくなり、建物全体の劣化につながります。最初は軽度のひび割れでも、放置しておくと徐々に範囲が広がり、内部にまで雨水が浸透して腐食する恐れがあるため注意が必要です。ひび割れによる劣化を防ぐには、定期点検を行い、ひび割れを見つけたら早めに補修・塗装を行いましょう。
汚れが目立ちやすい
リシン塗装した外壁の表面は凸凹しているため、時間の経過とともに雨水や汚れが溜まりやすくなります。 水が溜まるとカビやコケが繁殖し、壁面の美観を損ねるだけでなく、外壁を劣化させる原因にもなります。そのため、施工後は洗浄や塗り替えなどの定期的なメンテナンスが必要です。
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リシン塗装の失敗を防ぐポイント
リシン塗装による失敗を防ぐには、下地と塗料選びが重要です。施工時の選択を間違わなければ、リシン塗装のデメリットを回避して、満足いく外壁を実現できます。ここでは、失敗を防ぐためのポイントを2つ紹介します。
適切な下地材を選ぶ
リシン塗装の耐用年数を長くするには、適切な下地材を選ぶ必要があります。下地材との相性が良ければ、下地と塗料の密着性が強くなり、剥がれなどの施工不良が起きる心配もありません。
シーラーやフィラーといった下地材を塗れば、下地による塗料の吸収を防ぐことができ、上塗材が密着しやすくなります。下地にひび割れやデコボコなどがある場合は、弾性のあるフィラーを使うことで、塗装面を平滑にできます。
弾性リシンを使用する
リシン塗装の欠点である外壁のひび割れを防ぐには、弾性リシンが効果的です。弾性リシンはリシンに弾力性を加えたもので、伸縮性が高く、外壁のひび割れ防止に効果を発揮します。
塗装費用は1,500円/㎡ほどで若干高くなりますが、耐用年数が長くなり、メンテナンス費用を抑えられるメリットがあります。雨水などの浸水を防いでくれるため、住宅の劣化防止にも効果的です。
こまめにメンテナンスをする
リシンは他の塗料に比べて汚れやすいため、こまめなメンテナンスが必要です。汚れが付着したまま放置すると劣化が進行しやすくなるので、定期的に洗浄をしましょう。
ただし、高圧洗浄機を使用して洗浄すると、水圧が強すぎてリシンが剥がれてしまう可能性があります。洗浄する際は柔らかいブラシやスポンジを使用して、中性洗剤で優しく洗いましょう。定期的にメンテナンスすることで住宅劣化を防ぐことができ、耐用年数を長くできます。
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リシン塗装の一般的な流れ
リシン塗装の手順を把握しておくと、業者に見積もりを依頼するときの参考になります。業者に見積もりを依頼するときは、塗装に必要な以下の工程が省かれていないかをチェックしましょう。
1.足場の設置
外壁塗装は高所作業を伴うため、事前に足場の設置が必要です。足場を組むことで高所での作業がしやすくなり、作業も安全かつ効率よく進められます。
足場の設置作業は半日ほどで終わりますが、設置する際にトラックの行き来や騒音が増えるため、近所からクレームがくる可能性があります。トラブルを防ぐためにも、あらかじめ近隣に挨拶や説明をしておきましょう。
関連記事:足場費用の相場はいくら?外壁・屋根リフォームに必要な足場代の適正価格
2.高圧洗浄
外壁を塗装する前に、高圧洗浄で表面の汚れを落とします。汚れを残したまま塗装すると、塗料が外壁に密着せず、耐久性が低下して剥がれなどを引き起こしてしまいます。 そのような施工不良を防ぐためにも、高圧洗浄が必要です。作業自体は1日で終わりますが、外壁の表面を乾かすために1日以上の乾燥時間がかかります。
なお、外壁にカビやコケが繁殖していて奥まで根付いている場合は、バイオ洗浄を行う場合もあります。カビやコケは水洗いしても栄養があれば再び繁殖してしまうため、薬剤を使用したバイオ洗浄の方が効果的です。高圧洗浄の約2~3倍の費用がかかりますが、バイオ洗浄にはカビやコケの繁殖を防ぐ殺菌消毒作用もあるため、日光が当たらず湿気がこもりやすい場所に最適です。
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3.下地補修
高圧洗浄でも落ちなかった汚れや異物がある場合、またはひび割れなどが発生している場合は、下地補修を行います。特にモルタル壁はひび割れしやすい外壁であるため、塗装する前に割れの補修・点検が欠かせません。
ひび割れには、割れの浅い「ヘアクラック」と割れの深い「構造クラック」の2種類があり、補修方法はそれぞれ異なります。ヘアクラックは、割れをふさぐ下地材を下塗りすることで補修できますが、構造クラックは下塗りの前にVカットまたはUカットを行う必要があります。補修方法は見積もりに記載されているので、事前に確認しておきましょう。
4.養生
高圧洗浄と下地補修を終えたら、塗装に移りますが、その前に養生が必要です。養生とは、塗装しない部分に塗料が付かないようにビニールシートで保護する作業です。窓サッシや玄関ドア、エアコンの室外機などを養生したら、塗装準備は完了です。
養生作業が雑だと、仕上がりにも悪影響が及ぶため、1日ほどかけて丁寧に作業を行う必要があります。屋外に私物があると作業の妨げとなるので、事前に片付けておきましょう。
5.塗装
塗装作業は、下塗り・中塗り・上塗りの3回に分けて行います。それぞれの塗装に1日、乾燥に1日かかるのが一般的です。雨の日や気温が低い日は乾燥に時間を要するため、梅雨や冬に施工する際は、工事が長引く可能性があります。塗装は春や秋など気温・気候が安定した時期に行うのがベストですが、どうしても梅雨や冬に行いたい場合は、スケジュールを長めに確保しておきましょう。
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リシン塗装で住宅外壁の劣化を防ごう
リシン塗装は施工価格が安く、ツヤを抑えた高級感のある仕上がりになることから、多くの住宅に採用されています。汚れやすいといった欠点もありますが、近年は改良が進み、高機能を備えた塗料も販売されています。新しいリシン材を使用することで、外壁の耐久性を高めることができ、住宅の劣化防止に役立ちます。業者とよく相談しながら施工を進めれば、失敗を防ぐことができ、満足いくリフォームを実現できるでしょう。
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