ポリウレア塗装は強度と柔軟性に優れており、50年以上の耐久性を保つことから、工場や倉庫などを中心に幅広いシーンで使用されています。しかし、具体的にどのような特徴があるのか、よく知らない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ポリウレアのメリットとデメリット、施工の流れを解説します。塗装工事を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
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ポリウレア(ポリウレア塗装)とは?
ポリウレアとは、イソシアネートとポリアミンの化学反応で生成される樹脂化合物です。防水性や防食性、耐摩耗性、耐薬品性に優れており、多くの研究により50年以上の耐久性を保つことが証明されています。
ポリウレア(ポリウレア塗装)のメーカー
ポリウレアの製造メーカーは海外が多く、日本では三井化学産資株式会社などが製造を行っています。海外の製造メーカーは、以下のとおりです。
- SIKA GROUP(スイス)
- BASF(ドイツ)
- COVESTRO(ドイツ)
- DOW CHEMICAL(アメリカ)
- HUNTSMAN(アメリカ)
- PPG Industries, Inc.(アメリカ)
- 3M(アメリカ)
- FROSROC(イギリス)
- LINE-X(アメリカ)
- NUKOTE(アメリカ)
- RHINO LININGS CORPORATION(アメリカ)
上記メーカーは日本法人(代理店)が販売しているため、国内でも施工は可能です。
ポリウレタンとポリウレアの違いは?
ポリウレアとポリウレタンは、どちらも幅広い分野で活用されている高機能な合成樹脂ですが、特性に違いがあります。
ポリウレア強度や柔軟性、耐薬品性や耐候性に優れていますが、初期投資費用は高めです。 一方、ポリウレタンは価格は安価ですが、耐薬品性や耐候性は劣ります。それぞれの特性や違いを把握したうえで、適した用途に使用することが重要です。
ポリウレア(ポリウレア塗装)のメリット
ポリウレアは長期にわたって高い性能を維持できる、ハイスペックの合成樹脂です。長所が多いため、建築業界では高い注目を集めています。
ここでは、ポリウレアの主なメリット7つを紹介します。
強度と柔軟性が高い
ポリウレアの最大の強みは、非常に頑丈でありながら、同時に高い柔軟性を持っている点です。強度はコンクリートと同程度でありながら、伸長率は400%以上を誇ります。
通常、硬い材料は壊れやすく、柔らかい材料は強度が低い傾向がありますが、ポリウレア樹脂は硬さと柔らかさの両方を兼ね備えた新しい素材です。その特性から多様な産業で広く使用されており、多くの業界で高く評価されています。
速乾性に優れている
ポリウレア樹脂は塗布後、数秒~数分ですぐに硬化が始まり、速乾性に優れているのが特徴です。そのため、壁や天井も床と同じようにスプレーで塗布でき、あらゆる状況での施工に対応できます。
また、硬化スピードが早いため、塗装後すぐに塗装面の上を歩けるのも利点です。倉庫や工場などで施工する際も、稼働停止時間を短縮できるため、稼働率の低下を抑えられます。 条件次第では大幅な工期短縮も可能なので、予定よりも早く工事を終わらせられます。
防水性が高い
ポリウレア樹脂は水分を通さない性質があり、優れた防水性を持ちます。液体や水蒸気の浸透を防ぐ防水層を形成して長期間維持できるため、建築物の屋根や屋上庭園、プールなどの濡れやすい場所での利用に効果的です。
また、湿気を防ぐ目的で使用される場合もあります。湿気が高い場所はカビが発生しやすく、建物の耐久性を低下させる原因となります。ポリウレア樹脂を使用することで、水漏れや湿気から建造物を保護し、長く快適に過ごせる環境を実現できます。
耐薬品・防食性がある
ポリウレア樹脂のグレードによっては、酸やアルカリによる腐食から長期間保護できるため、耐薬性・防食性にも優れています。多くの化学薬品に耐性があることから、建築や土木、工業などの幅広い分野での使用が可能です。
また、建物に腐食を起こすアルカリ性と酸性の両方に耐性があり、下水道施設や石油タンクの漏洩防止壁などにも使用されています。
紫外線に強い
ポリウレア樹脂は紫外線に強く、紫外線による劣化症状を防止できます。一般的な塗料に使用されている樹脂は、紫外線にあたると塗膜が劣化し、時間の経過とともに色あせやチョーキングなどが発生します。
一方で、ポリウレアは屋外環境でも高い性能を維持できるため、屋根や外壁などに施工しても劣化症状を抑えることが可能です。ひび割れや剥がれのリスクも軽減できるため、長期にわたり美観を維持できます。
温度変化に強い
ポリウレアは耐候性にも優れており、過酷な屋外環境でも変形や変色などの劣化症状が起こりにくいのが特徴です。温度変化に強く、マイナス35度から60度までの環境で施工できるため、寒冷地や気温の変化が激しい場所での使用に適しています。また、時期を問わずに塗布できるため、都合に合わせて工事を進めやすいのも利点です。
環境に優しい
ポリウレア樹脂は無溶剤・無触媒のため、環境に負荷がかからないこともメリットです。刺激臭もなく、揮発がないため、閉塞空間の作業も問題ありません。
塗膜からの溶出がなく、水質にも影響を与えないことから、水道施設の基準もクリアしています。そのため、プールやプラントなどの水槽、浄水場などの防水・防食工事も可能です。
ポリウレア(ポリウレア塗装)のデメリット・弱点
ポリウレアはメリットが多い一方で、弱点もあります。良い面だけでなく、悪い面も把握したうえで、実際に施工すべきかを慎重に判断しましょう。
初期投資費用が高い
ポリウレア塗装は機能性・耐久性に優れた塗料のため、他の工法と比べて初期投資費用が高額です。そのため、コスト重視で塗装工事をしたい人には向きません。
ただし、耐用年数が長く、施工後はメンテナンス頻度を削減できるため、長い目で見ればコストパフォーマンスは良好です。多少初期投資費用が高くても、メンテナンスの手間やコストを抑えたいという場合におすすめです。
事前検証が必要になる
耐熱や耐薬品を目的にポリウレア塗装をする場合は、事前検証が必要です。誤った方法で施工すると、塗布後に浮きや剥がれが生じてしまい、高度な機能が発揮されません。
特定の用途で使用する場合は、業者選定を慎重に行いましょう。専門的な知識と経験が豊富な優良業者に依頼すれば、事前に丁寧な検証を行ってもらうことができ、施工後のトラブルを防止できます。
適切な取り扱いが必要
ポリウレア塗装はハイスペックであるがゆえに、適切に扱わなければ特性を十分に発揮できません。使い方を間違えてしまうと、塗布後に浮きや剥がれが発生し、思わぬトラブルに繋がります。
ポリウレアが持つメリットを発揮するには、塗装前の下地処理やプライマーの選定をはじめ、耐熱などに対する事前検証が必要です。 ポリウレアの特性はメーカーによって異なるため、事前に確認したうえで慎重に選びましょう。
ポリウレア(ポリウレア塗装)の施工手順
前述した通り、ポリウレアは適切に施工しないと優れた特性を発揮できません。塗装工事を成功させるために、ここで正しい施工手順を確認しておきましょう。
1.下地処理
最初に、塗装する箇所の清掃や洗浄を行います。油やホコリなどの汚れだけでなく、塗膜が剥がれている箇所があれば取り除いて、表面をきれいにします。下地に凹凸や穴がある場合は、サンダリングやスポンジ研磨などを使って修復し、表面を均一に整えます。下地処理によって塗装の仕上がりも大きく異なるため、丁寧な作業が必要です。
なお、下地の種類によって下地処理のやり方も異なります。下地がコンクリートの場合は、既存の塗膜や付着物を取り除き、汚れや錆を落とすケレン作業を行います。
2.プライマー塗布
下地を整えたらプライマーを塗布します。プライマーは、塗装作業の最初に行う下塗りのことで、下地と塗料を付着させる役割があります。下地に直接ポリウレアを塗装するよりも、事前にプライマーを塗ることで密着が高まり、高度な性能が発揮されやすくなります。
プライマーは非常に重要な工程であり、適切な厚みで均一に塗る必要があります。仕上がりにムラができないようにスプレーやローラーなどを使って、プライマーを丁寧に塗布しましょう。
3.ポリウレア塗布
プライマーが乾燥したら、ポリウレア塗装を行います。ポリウレアは2液性の塗料のため、塗料と硬化剤を混ぜてから塗布します。専用のスプレーガンによる吹付けや手塗りなど、施工する箇所に合わせて適切な方法で施工します。
色や厚みにムラが出ないように均一に塗布するには、職人の技術力が欠かせません。速乾性に優れているため、施工後数時間で歩行できますが、硬化が早いゆえに施工後は迅速な作業が必要です。
4.トップコート塗布
仕上げにトップコートを塗布します。トップコートには、塗布したポリウレアを保護し、美観を向上する役割があります。また、トップコートは紫外線耐性を持ち、耐摩耗性が高いため、施工後の劣化防止に効果的です。
トップコートを塗布し終えたら、施工に不具合がないかを検査します。問題がなければ、工事は完了です。
ポリウレア(ポリウレア塗装)で建造物の劣化を防ごう
ポリウレア樹脂は柔軟性・防水性・断熱性などの優れた特性を持ち、ビル屋上やスレート屋根、立体駐車場や工場の床など、さまざまな場所での施工が可能です。ハイスペックな特性を持つため、建造物の劣化を防ぎながら長く美観を維持できます。
ただし、初期投資費用が高いといったデメリットもあるため、施工する際は慎重な判断が必要です。適切に扱わなければせっかくのハイスペックも無駄になってしまうので、経験豊富な業者に施工を相談しましょう。