外壁塗装を検討する際に、「火災保険を使って工事ができる」と見聞きする方は多いでしょう。火災保険は火事による被害だけではなく、台風や大雨による被害を補償するタイプもあり、うまく活用することで外壁塗装にかかる費用負担を軽減できることもあります。
ただし経年劣化によって外壁塗装が必要になるケースでは火災保険の補償範囲とはならず、ほかにも加入プランや免責金額によっても保険金がおりるかどうかが変わってきます。そのため火災保険がおりることを前提として外壁塗装を依頼するのは注意が必要で、悪徳業者のセールストークに安易に乗ってしまわないように警戒しなければなりません。
本記事では、外壁塗装で火災保険を使うための条件と手続きの流れ、保険金を受け取るために押さえておきたい注意点などをご紹介します。
外壁塗装では火災保険の補償を受けられる
火災保険といえば、自宅が火事に遭った時の被害を補償する保険というイメージがありますが、実際には台風・大雨などの自然災害による被害も補償対象とされています。自然災害による被害をカバーする保険なので、「災害保険」と呼ばれることもあります。ただし地震による被害については、地震保険の補償対象となるためご注意ください。
たとえば台風・強風によって自宅の外壁に飛来物が衝突して修理が必要になった場合などには、外壁の修理に火災保険を使うことが可能です。経年劣化や施工不良による破損では火災保険は使用できませんが、自然災害による被害で外壁のリフォームが必要になった際には、一度火災保険を利用できないか確認してみることをおすすめします。
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外壁塗装で火災保険を使用できる条件
外壁塗装で火災保険を使うためには、次の4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 自然災害によって外壁の修理が必要になったこと
- 被災が補償対象になる保険プランに加入していること
- 修理が必要になってから3年以内に申請すること
- 火災保険の免責金額を超える修理費用が発生すること
どれか一つでも当てはまらない項目がある場合、保険金はおりない可能性が高いため注意しましょう。それぞれの項目を詳しく解説します。
自然災害によって外壁の修理が必要になったこと
火災保険がカバーするのは、自然災害による被害を受けた住宅の補修費用です。火災はもちろん、落雷・風災・雪災・雹災などが補償対象とされており、プランによっては水災や自動車の衝突事故、強盗に伴う住宅の破壊なども補償されます。
逆に言えば、自然災害以外の原因で外壁塗装が必要になった場合は、火災保険の補償対象外となります。経年劣化や業者の施工不良、火災保険を受給するために意図的に破壊した場合なども、当然補償されません。そのため火災保険を申請する際には、何の自然災害によって被害を受けたのかを明らかにしておく必要があります。
被災が補償対象になる保険プランに加入していること
住宅向けの火災保険には、主に以下の3つの種類があり、それぞれ補償される範囲が異なります。現在加入している火災保険の補償範囲外の被害だった場合、保険金を受け取ることはできません。
- 住宅火災保険
- 住宅総合保険
- オールリスクタイプ
「住宅火災保険」では、落雷・風災・雪災・雹災などが補償対象となり、水災は補償対象外となる点に注意が必要です。「住宅総合保険」であれば、上記に加えて水災や暴行・破壊、盗難などもカバーされます。「オールリスクタイプ」に加入している場合には、さらに広い範囲の補償を受けられますが、補償内容は保険会社によって大きく異なるため、手元の保険証券を確認すると良いでしょう。
修理が必要になってから3年以内に申請すること
火災保険の適用を受けるためには、補償対象となる自然災害を受けて修理が必要になった時点から、3年以内に申請することが条件となります。これ以上経過してしまうと、自然災害の被害を受けた箇所の修理であることを証明するのが難しくなるためです。
なお、火災保険は工事の着工前の手続きが必須というわけではなく、外壁塗装が完了した後に申請し、保険金を受け取ることも可能です。ただし、自然災害による被害を証明し、火災保険の補償対象であることを証明する書類を準備して提出する必要があるため、なるべく被害を受けてから早めのタイミングで保険会社に問い合わせることをおすすめします。
火災保険の免責金額を超える修理費用が発生すること
外壁塗装で火災保険を使うためには、契約している保険プランの免責金額を上回る修理費用が発生することも条件となります。免責金額とは、その金額以下の修理費用であれば保険金が支払われないという金額を定めたもので、一般的には20万円ほどの免責金額を設定することが多いです。
その場合には、仮に15万円の外壁リフォーム費用が発生した場合にも、保険金を受け取れない点に注意が必要です。火災保険を申請する際には、まず塗装業者にリフォーム費用の見積もりを作成してもらい、免責金額を超えることを確認してから手続きを進めることが大切です。
外壁塗装で火災保険を申請する手続きの流れ
次に、外壁塗装で火災保険を申請するまでの手続きの流れについてご紹介しましょう。
- 被災した外壁の写真を撮影する
- 外壁塗装業者へ修理費用の見積もりを依頼する
- 書類を揃えて保険会社に申請する
- 鑑定人による調査を経て保険金が支給される
これらの項目について順番に解説するので、申請手続きの参考にしてみてください。
被災した外壁の写真を撮影する
自然災害によって外壁に被害を受けた時には、まずは被災箇所の写真を撮って残しておきましょう。被災箇所の写真は、火災保険の申請手続きの際に提出する必要があるため、DIYなどで応急処置する前に撮影しておくことが大切です。2階部分の被災など、高所からの撮影が必要になる場合には、転落による怪我を防ぐためにも無理に撮影せず、塗装業者に写真を撮ってもらうと良いでしょう。
外壁塗装業者へ修理費用の見積もりを依頼する
次に、外壁の塗装業者に連絡してリフォーム費用の見積もりを作成してもらいましょう。自宅で加入している火災保険の契約内容をチェックしておき、今回の工事で保険金がおりるかどうかをチェックしておくのも大切です。塗装業者からの見積もりが届いたら、見積もり金額が火災保険の免責金額を超えていることを確認します。
塗装業者に連絡する際には、火災保険を使用して修理したい旨を事前に伝えておくと効果的です。火災保険の申請を見据え、被災箇所の写真を残してくれたり、適正な見積もり金額を作成してもらえたりするメリットがあるからです。
関連記事:外壁塗装の見積もりは何社取れば良い?見積書のチェックポイントと費用相場を解説
書類を揃えて保険会社に申請する
塗装業者からの見積書を取り寄せたら、保険金請求書や工事見積書、被災箇所の写真などを揃えて、保険会社に申請を行います。提出書類の準備では、塗装業者がサポートしてくれることがありますが、火災保険の申請自体は契約者が行わなければならない点に注意しましょう。
必要な提出書類は保険会社によって異なるため、契約した窓口・代理店や保険証券に記載の連絡先に問い合わせて、必要な書類・手順を確認すると安心です。
鑑定人による調査を経て保険金が支給される
火災保険の申請手続きが完了すると、保険会社から派遣される鑑定人による調査・審査を受け、保険金の支給の可否と金額が決定します。この段階までは保険金がおりるかどうか、請求した満額が支給されるかどうかは不明なので、火災保険がおりる前提で外壁塗装の契約を進めてしまわないように注意しましょう。
外壁塗装で火災保険を申請する時の注意点
最後に、外壁塗装で火災保険を申請する時に押さえておきたい注意点についてもご紹介します。
- 「必ず無料で外壁塗装できる」と謳う悪質業者に要注意
- 火災保険の申請手続きは業者代行はNG
- 火災保険を前提とした契約即決は避ける
これらのポイントにも注意しながら、火災保険の申請と外壁塗装工事を進めるようにしてください。
「必ず無料で外壁塗装できる」と謳う悪徳業者に要注意
外壁塗装で火災保険を使う時に注意が必要なのが、「必ず無料で外壁塗装できる」などのセールストークで勧誘してくる悪徳業者の存在です。本記事で解説してきた通り、火災保険を使うためには自然災害による被害を証明しなければならず、請求した金額が必ず支給されるとも限りません。
にもかかわらず、「うちに任せれば無料で修理できる」などと謳っている場合には、悪徳業者を疑った方が良いでしょう。経年劣化が原因の外壁リフォームを、自然災害が原因であると偽装して保険金を受け取った場合、詐欺や契約違反にあたるリスクもあるため十分に注意してください。
関連記事:外壁塗装の悪徳業者を見分ける4つのチェックポイント
火災保険の申請手続きは業者代行はNG
外壁塗装に伴う火災保険の申請手続きは、必ず契約者本人が行わなければなりません。提出書類の準備や申請手続きのサポートを塗装業者から受けるのは問題ありませんが、申請手続き自体を業者が代行するのは契約違反です。申請代行を申し出る業者も悪徳業者である可能性が出てくるため、警戒するようにしましょう。
火災保険を前提とした契約即決は避ける
火災保険の申請手続きで請求した保険金は、必ず満額が受け取れるとは限りません。審査が通らずに保険金が支給されないケースもあれば、100万円の請求に対して70万円分は経年劣化による破損と判断され、30万円しかおりないケースも考えられます。その場合には、当初の予定よりも自己負担額が増えることになりかねないので、火災保険の満額支給を前提として外壁塗装の契約を進めるのも避けた方が良いでしょう。火災保険の審査結果が届いてから、塗装業者との契約を進めるのが安全です。
まとめ
自然災害による被害を受けた住宅の外壁塗装では、火災保険を使って自己負担額を抑えることが可能です。経年劣化や施工不良ではなく自然災害による被害であることを証明し、被災から3年以内に免責金額以上の請求を行うことで、保険金がおりる可能性が高まります。
火災保険の申請のためには、被災した箇所の写真を準備し、塗装業者からの見積書を作成してもらう必要があります。そのため火災保険を使いたい旨を伝えながら、塗装業者のサポートを受けつつ申請手続きを進めると良いでしょう。ただし、「必ず無料で外壁塗装できる」などと謳っている業者は悪徳業者である可能性が高く、業者による申請代行も契約違反となることにご注意ください。