屋根の塗装費用は、傷み具合によっては100万円以上になることが多い、高額な工事です。家計への負担は軽いものではなく、多くの人が「少しでも安く済ませたい」と思うはずです。
本記事で解説する補助金・助成金制度は、地域や制度の内容によっても異なりますが、10〜20万円を行政が負担してくれることが多く、返済は不要。工事終了後に後払いで受け取れます。
それでは早速、補助金・助成金を受けるための基礎知識、条件や補助・助成を受けるための申請のタイミング、助成を受けられる塗料などを学んでいきましょう。
1 . 屋根塗装で受け取れる補助金・助成金の基礎知識
屋根塗装の補助金は、国ではなく自治体が実施しているものがほとんどなので、自分はどんな補助金や助成金が受けられるのか、自治体のホームページを確認するようにしてください。
塗装工事においては、**「エコリフォーム」「省エネ」のためのリフォーム工事について、補助金・助成金が給付されるケースが多いようです。その際は「遮熱塗料」または「断熱塗料」**を使って工事をすることになります。
1-1 補助金制度は自治体ごとの取り決め
補助金・助成金制度と一口に言っても、要件や支給額などの内容は、自治体ごとに様々です。下記にいくつか例を挙げてみますが、ほとんどが省エネに関する工事に対して補助金または助成金を交付しています。
大半が募集締め切りを待たず、補助・助成予算額に達した時点で募集終了となります。詳細については、各自治体に問い合わせてください。
以下、例としていくつかの自治体の補助金・助成金制度の事例を挙げていきます。
1-1-1 墨田区地球温暖化防止設備導入助成制度
墨田区では、第二次すみだ環境の共創プラン(すみだ環境基本計画)に基づき、地球温暖化の防止に向けて、区民・事業者の方などが区内に所有する建築物へ省エネや再生可能エネルギー設備等を導入する際、工事費用の一部助成を実施しています。
対象となる設備は、遮熱塗装、建築物断熱改修、太陽光発電システム、太陽熱利用システム、燃料電池発電給湯器(エネファーム)、家庭用蓄電システム、直管型LED照明器具、住宅エネルギー管理システム(HEMS)などです。
屋根塗装の場合は遮熱塗装を行うと助成の対象になります。「熱交換塗料または日射反射率(全波長域)が50%以上の高反射率塗料を使用し(例外あり)、屋根面全体または屋根及び壁全面を塗装することが必要」と詳細な条件が定められています。
助成金額は、工事費用の10%で、戸建・事業所は20万円、分譲集合住宅は50万円が上限金額となっています。
参考:(申請編) 令和3年度:墨田区地球温暖化防止設備導入助成制度(PDF)
1-1-2 茨木市 省エネ・省CO2設備導入事業補助制度
大阪府茨木市では、市内の中小企業者を対象に、新エネルギー利用設備及び省エネルギー設備を導入された場合、それに要した経費の一部を補助しています。
「新エネルギー利用設備」として太陽光発電、バイオマス発電設備等の導入、「省エネルギー改修」としてLED照明・高効率空調設備・地中熱利用などの省エネルギー設備への改修、窓の二重化などのほか、床・壁・天井・屋根の断熱化(遮熱フィルムや遮熱塗料の使用を含む)を対象とします。
市内に事業所を有する中小企業を対象としており、補助対象経費が50万円以上であること、省エネルギー改修の場合、設備改修によるCO2排出量の削減効果が補助対象経費100万円当たり年間2t以上であることなどが定められており、300万円を限度に、補助対象経費の1/3が補助されます。
参考:茨木市 省エネ・省CO2設備導入事業補助制度(PDF)
1-1-3 三浦市住宅リフォーム助成事業
神奈川県三浦市では、市内の経済活性化を図ると共に、市民の住環境の向上を目的として、市民が市内施工業者により行う住宅・マンション(賃貸を除く)のリフォーム工事に対し助成を行っています。
対象となるリフォーム内容は多岐にわたり、省エネを目的とした助成ではないため、屋根、外壁塗装においても特に指定がないのが特徴です。内容に関わらず、20万円(消費税等を除く)以上の助成対象工事に対して、一律7万円が助成されます。
年間で、3期に分けて計80件の募集を行っており、令和3年度募集は第3期(11月1日(月)~11月19日(金)の10件を残すのみとなっています。
参考:三浦市住宅リフォーム助成事業(PDF)
1-1-4 豊川市住宅リフォーム工事費補助金
豊川市住宅リフォーム工事費補助事業は、地震発生時における木造住宅の倒壊等による被害を軽減し、震災に強いまちづくりを促進するため、耐震改修補助事業に併せてリフォーム工事を行う住宅に対して、その費用の一部を助成するものです。
愛知県豊川市の耐震改修補助事業に併せてリフォーム工事を行う住宅に限られます(木造住宅耐震改修、木造住宅の段階的耐震改修、木造住宅耐震シェルター等整備、非木造住宅耐震改修)が、屋根・外壁等の塗装・断熱も補助対象となります。
補助金額は、上限20万円で、リフォーム工事費用の**20%**となります。
1-2 平均10万〜20万円の補助金を受け取れる
一般的に80万円から120万円かかる外壁や屋根塗装の工事は、決して安いものではなく、家計に大きな影響を与えるものですが、補助金や助成金使うことで費用を抑えることが可能です。
屋根のリフォームを行おうとする場合は、「遮熱塗料」または「断熱塗料」を使って塗装を行うことになるので、「エコリフォーム」「省エネリフォーム」関連の補助金・助成金のリフォーム工事として、自治体に申請すると、給付されるケースが多いようです。
自治体によって異なりますが、補助金・助成金の給付額の上限は平均として10〜20万円くらいのところが多いようです。
その例を2件ご紹介します。
1-2-1 世田谷区環境配慮型住宅リノベーション推進事業補助金
壁や窓の断熱改修、屋根の高反射率塗装、太陽光発電システムや省エネルギー機器類の設置など、環境に配慮した住宅のリフォーム(住宅リノベーション)を行う場合、その経費の一部を補助します。
9月7日に募集を締め切っていましたが、追加予算が付いたため、9月30日より募集が再開されています。
- 日射反射率50%以上を有する塗料を用いる塗装工事をい
- 国内の第三者機関によるJIS規格に基づく日射反射率を証明するものがあること、又はこれに類する証明があるこ
- 屋根又は屋上の施工であって、全面の施工であるこ
など条件があり、上限を20万円として、工事費の**10%**が補助されます。
参考:世田谷区環境配慮型住宅リノベーション推進事業補助金(PDF)
1-2-2 豊中市三世代同居支援住宅リフォーム補助金
大阪府豊中市では、市外在住の子育て世帯が市内に住む親世帯と同居するための住宅のリフォーム費用の一部を補助しています。
同居のため必要になる改修を対象としており、自ら居住するための部分の増築・改築等、床・内壁・天井等の内装替え、畳の取替え等の内装工事、雨戸・戸・サッシ・ふすま等の取替え等の建具工事、電気・ガス等の設備工事、トイレ・風呂・キッチン等の水周り改修等の給排水工事などに加え、屋根・雨樋・柱・外壁の修繕・塗装等の外装工事も含まれます。
10万円以上の工事で、補助対象経費の1/3を上限に、1戸あたり25万円までが補助されます。
2 . 屋根塗装の補助金を受け取れる条件
屋根塗装で助成金・補助金が受け取れる場合、その条件は **「省エネ・断熱工事」であることが大半です。その際塗装する材料は、「断熱塗料」か「遮熱塗料」を使うことが条件とされているようです。併せて、地域を活性化させるために「地元業者に工事を依頼する」**ことを条件としている自治体も多いです。
2-1 遮熱・断熱塗料を使う
**「遮熱塗料」「断熱塗料」**は、同じような意味で使われることが多いですが、性能面で少し異なります。断熱塗料は、熱を伝わりにくくする塗料で、遮熱塗料は熱を反射し、遮る塗料です。どちらも塗装すれば、電気やガスの料金が節約でき、省エネにつながるために、ECO関係の補助金・助成金を受ける際に使われる材料です。
5年後、10年後の住環境を左右する力を塗料は持っているので、塗料を選ぶときは、単に瞬間的な費用の話だけでなく、その性能を十分吟味する必要があります。
2-1-1 遮熱塗料
遮熱塗料は、太陽光の中の赤外線を効率良く反射する成分を含む塗料です。太陽熱の吸収を抑え、塗膜表面の温度上昇を抑制します。遮熱塗料を使うと、屋根の表面温度は平均8℃から10℃下がり、室温は平均2℃から3℃下がる、というデータが公表されています。
夏の暑さ対策になりますが、冬の寒さ対策には適していません。効果が**「暑さ対策のみ」**と限定的であるため、価格も安めです。断熱塗料は、遮熱塗料に比べ、高額になるので、リーズナブルに暑さ対策をしたい人は、断熱塗料ではなく、遮熱塗料を選ぶことをおすすめします。
2-1-2 断熱塗料
断熱塗料とは、太陽の光を反射して太陽熱の熱伝導を抑え、家の中の温度上昇を防ぐ機能(断熱効果)を持った塗料です。近年とても人気で種類も豊富ですが、遮熱塗料よりも価格が高いものが多いです。
太陽光エネルギーは熱エネルギーに変化するため、その光を受けた屋根や外壁は温度が上昇します。熱は室内に伝わり、室内の温度も上昇します。
断熱塗料は、**「中空ビーズ」**などの断熱効果を持った成分を含んでいるために、熱を伝導させにくくできるのです。つまり、断熱塗料を用いれば屋外の気候による室内の温度変化を抑えられるのです。
この温度変化を軽減する機能は、暑さだけでなく寒さにも効果があると言われています。
具体的なメリットは、
- 室内気温を一定に保てる
暑さと寒さの両方に断熱塗料の熱伝導を抑える機能が働くため。
- 耐久性が高い
外壁塗装でもっとも多く用いられるシリコン塗料の耐用年数は10〜15年。それに対し、断熱塗料の耐用年数は15年以上です。断熱塗料の多くは一般的な塗料よりも耐用年数が長く、長期的なコストを考えたときにお得になります。
* 光熱費を削減できる
断熱塗料を使うと室温が外の気温の影響を受けにくくなります。エアコンを使う機会が少なくなって光熱費の削減に繋がります。
- 火災に強い
一般的な断熱材は燃えやすく、有毒ガスが発生しますが、断熱塗料にはそのようなリスクがありません。
* 結露が少ない
壁の表面温度が下がると、結露が発生してカビやダニが繁殖するリスクが高まり、放っておけば家の劣化も早まってしまいます。結露は、水蒸気を含んだ暖かい空気が、冷たい壁に触れることで発生しますが、断熱塗料で屋根や壁を塗れば、表面温度の下げ幅を小さくでき、結露を防止できます。
* 遮音効果がある
なぜ、断熱塗料が遮音に対して有効なのかというと、断熱塗料の原料となるセラミックが効率良く音を反射するという特徴があるからです。騒音に悩んでいる人は塗布を検討してみましょう。
2-1-3 遮熱・断熱塗料の代表的な商品
遮熱・断熱塗料の代表的な商品を5種類紹介します。各社とも以下のような性能の実現をめざし、商品開発に日々励んでいるようです。
* 断熱性(熱移動を抑える)の向
* 遮熱性(夏は太陽熱を屈折させる)の向
* 耐候性(紫外線や雨水などから建物を守る)の向
* 吸音効果(セラミックにより音を吸収軽減させる)の向
* 臭い対策
* 冷暖房効率アップ
塗料に伸縮性があると、外壁のクラック(ひび割れ)が起こりにくくなり、耐久性が上がります。「キルコ」は、伸縮性に優れた塗料で、コーキング材と同程度の伸縮性と言われ、耐久性の面から見て、優秀な塗料です。トップコートを上塗りするため、汚れにくいのが特徴です。
トップコートを塗る工程があるために、工程数が一般的な遮熱・断熱塗料よりも多く、費用はやや高くなりますが、「ガイナ」と並び高性能と言われています。
b)ガイナ「ガイナ」は、宇宙航空分野の基礎研究から開発・利用に至るまで一貫して行う機関である「JAXA(=宇宙航空研究開発機構)」が開発した断熱技術を応用して開発されたもので、遮熱塗料の中でも知名度が高い商品です。施工時の塗料代が高額である、色が淡色系のみでラインナップが少ないというデメリットがあるものの、耐用年数が15年と長く、トータルコストはリーズナブルになります。
遮熱塗料でありながら、**「断熱・保温」「遮音・防音」「空気質改善(臭い対策)」「防露」「耐久」「低VOC(揮発性有機化合物)含有」「不燃」**などの特性も備えているのも、人気の理由です。
c)断熱コートEX「調色力・スピード対応、幅広い下塗材のラインアップ」が強みの東日本塗料株式会社の人気ラインナップ「断熱コートEX」。
高耐候性や防水性能、結露抑制などの機能に加え、高い防汚性を持っているため、トップコートは不要です。トップコートの工程が省かれるため塗装費用は安く済み、コスト重視の人にオススメの塗料です。仕上がりのバリエーションが多く、ツヤありに仕上げたい人にはピッタリです。
「シャダンネオ」は、ほかのメーカーの塗料と組み合わせて使用できる塗料です。中塗り材として「シャダンネオ」を塗布し、その上から別の塗料を塗ることができるので、色のバリエーションが豊富になります。断熱性能を保ちつつ、好みの色の外壁できることから人気です。
外壁だけでなく、室内へ塗布することで、断熱・保温効果に加え、結露抑制効果も得られます。微小中空セラミックバルーンのセラミックは、音を反射する効果も持つために、遮音効果にも優れています。
e)ヒートカットパウダー東亜クリエイトシステムの**「ヒートカットパウダー」**は、伝導熱を伝えない真空層と球体表皮からの赤外線放射・反射効果により、強力な遮熱特性を持つ断熱塗料の基材となる省エネ素材です。市販の塗料や接着剤に混ぜて使用するために、手軽かつ低コストで断熱効果を得ることができます。
水性・溶剤系塗料にも対応し、木材や金属の他、結露の多い場所でも使えます。また、火災などで有毒ガスが発生することがないというメリットも。アレルギーやシックハウス症候群の要因となる化学物質は一切含んでおらず、環境負荷も少ないため、幅広い分野で使用が可能な製品です。
2-2 地元業者に工事を依頼する
バリアフリー性能や省エネ性能、耐震性能の向上などのリフォームの際に、国や自治体からさまざまな補助を受けられます。自治体のホームページを見る、窓口に問い合わせるなどして、チェックすることをオススメします。
工事内容の条件を満たしていても、その自治体に住所がある塗装業者に依頼しないと補助金・助成金を支給してもらえないケースが多いので注意が必要です。補助金ごとの条件は必ず確認しておきましょう。
補助金対象の工事に使用する塗料が**「断熱・遮熱の基準を満たしている塗料」**であることを条件にしているかどうかは自治体ごとに異なります。使用を検討している塗料の種類を業者に伝え、その塗料が自治体の補助金の条件を満たすものかどうかも確認してもらいましょう。
2-3 住宅の長寿命化工事に補助金を出す自治体も
現在、空き家が増加していることなどが原因で、行政は新築住宅だけでなく、中古住宅の流通にも力を入れ、補助金や助成金を出しています。中古住宅をリフォームすることで、住宅の寿命を伸ばそうとしているのです。
外壁塗装工事は多くの場合、**「省エネ・断熱リノベーション」**の要件に該当しますが、補助金については常に最新の制度を確認するようにしてください。年度によって補助金の上限額が調整されたり、前年度より早く打ち切られたり、そもそもその年は募集自体がなかったりというケースも少なくありません。
補助金・助成金の支給にはどんな要件があるのか、また、制限事項は何なのかをよく確認し、制度に合わせて塗装の予定を立てましょう。
3 . 申請の手順
補助金・助成金は限られた予算の中から支給されるので、中にはすぐに締め切りになってしまう場合も少なくありません。多くの自治体は、先着順に受け付けをしています。補助金や助成金をもらおうとしている人は、あらかじめ申請の手順を理解しておきましょう。
3-1 補助金受け取り条件の確認
まずは、自分が住んでいる自治体のホームページなどで、自分がどんな補助金または助成金をもらえるのかを確認しましょう。「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト(https://www.j-reform.com/reform-support/ )」は、一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会による、地域別・受けられる制度別に検索できる補助金検索サイトです。
どんな補助金が受けられるか分からない人は、使ってみることをオススメします。「支援分類(環境対策のためのものなのか、バリアフリーのためのものなのか、など)」「支援方法(補助金なのか、貸付なのか)」「対象工事(手すり設置工事なのか、断熱工事なのかなど)」がそれぞれ表示されます。
3-2 塗装業者による見積もり
補助金を受け取る際に必ず必要になるのが見積書です。
業者に現地調査をしてもらい、工事の見積書を出してもらいます。補助金・助成金の申請には詳細な明細が記載されている見積書が必要ですので、使用する塗料や施工面積などを細かく記載してもらいましょう。
塗料によって補助金・助成金をもらえない場合があるので、専門家を交えた塗料選びをする必要があります。また、塗料の性能を証明するために、見積書に加えて、塗料のカタログの提出を求める自治体もあります。業者にその旨を話しておき、見積書と一緒にもらっておく方がよいでしょう。
3-3 書類の準備
「書類に不備があり受付の順番が遅れてしまった。そのため、先着順で受け付けする自治体の補助金を受けられなかった」という話もよく耳にします。書類の不備には気を付けたいものです。
一般的に提出する書類は、以下の通り。申請書は多くの場合、自治体のホームページからダウンロードできます。
- 申請書
- 施工予定建築物の登記事項証明書
- 見積書
- 現況の写真
- 平面図と立面図
提出の方法は、窓口に持参する方法に加え、郵送でも受付可能な自治体もあるので、よく確認しましょう。助成金の手続きは施工前でないとできないので、こちらも注意が必要です。
3-4 補助金の交付決定
提出された書類を自治体の職員が審査し、2〜3週間で交付の可否が決まることが多いようです。交付の決定後、「補助金交付決定通知書」を受け取ります。
自治体や使う制度によっても異なりますが、屋根塗装の補助金・助成金の相場は10万〜20万円程度で、工事終了後に払われます。
3-5 契約書のコピー提出
補助金の交付が決定したら、塗装業者と正式に契約を結びます。申請通りの工事をする証拠として、結んだ契約書のコピーを自治体に提出する必要があります。よく、最初に契約書の「雛形」だけ仮に提出しておき、判子の押されている、正式な契約書を提出するのを忘れる人がいますが、そのままでは無効となってしまうので、忘れないようにしましょう。
3-6 着工
着工するタイミングを間違えてしまうと、補助金・助成金を受け取れない場合があるので、注意が必要です。例えば、東京都台東区の**「高反射率塗料施工助成金制度」では、着工の前に申請し、区の決定を受けなければなりませんし、群馬県太田市の「令和2年度太田市住宅リフォーム支援事業補助金」**も給付要件の注意書きとして「補助金の交付決定前の工事着工は、当事業の対象となりません」という記載があります。
着工のタイミングは自治体によって異なるので入念なチェックが必要です。
3-7 工事完了届の提出
塗装完了後、実績報告書または、工事完了届や請求書などを提出します。「工事完了日の翌日から●日以内に完了報告書を提出すること」のように、提出期限を詳細に定める自治体もあるので、提出期限日は必ず確認するようにしてください。
場合によっては、工事前・工事中・完成後の写真、領収書、請求書、工事の内訳書などの提出を求められることがあります。もし、工事内容に変更があった場合、変更の手続きも必要です。書類の提出が完了したら、決定通知が届くのを待ちましょう。
3-8 自治体による検査
自治体によっては、現地に赴いて完了検査をする場合があります。契約書の内容と実際の工事に食い違いがないかを、提出した写真と現況を照らし合わせるなどの作業を、主に自治体の職員が行います。書類と現状に著しい食い違いがあると、補助金や助成金が交付されない恐れがあります。
3-9 交付額の決定
自治体の完了検査が終わったら、次は交付額が決定されます。申請から工事完了までは、あくまでも交付の決定は**「仮定」**です。完了検査を終えて、はじめて補助金・助成金の支給が確定するのです。
補助金の交付額を決める方法は、おもに
- 面積によるもの(施工面積㎡あたり2,000円など)
- 工事費用の割合によるもの(工事費用の20%など)
の2通りがあります。どちらの方法を採用するかは、自治体によって異なり、片方のみの場合や、2つのうち、いずれか低い金額を採用する場合などがありますが、補助金・助成金の支給額は上限額が決まっているケースがほとんどですので、それを超えた額は受け取れません。
また、見積額と比べて支払額が安かった場合は減額の変更申請が必要になる場合があります。そのような審査を行った後、最終的な補助金・助成金の交付額が決定するのです。
3-10 請求書の提出
補助金が確定した後に、補助金交付のための請求書を提出します。
3-11 補助金の受け取り
指定した銀行口座に補助金が支払われます。支払いには、およそ2〜3週間ほどの期間が必要とされています。
補助金や助成金は、国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものですので、交付対象となる事業や行為は、国の施策目的に合致したものに限られます。公正かつ効率的に利用するよう努めるようにしましょう。
4 . 工事と申請の流れをあらかじめ確認しましょう
核家族化や高齢者の増加により、近年では空き家が増えています。国は、空き家をこれ以上増やさないように、既存住宅をリフォームすることの支援策を多く打ち出すようになっていて、補助金・助成金制度もその一環です。
介護リフォームに加え、省エネルギーを実現するリフォームを対象とした制度は多く、屋根塗装の補助金・助成金も省エネルギー関連に含まれ、今後さらに充実していくものと思われます。
「補助金や助成金の対象になることを知らず、気づいたときには申請期限を過ぎていた」という話をよく聞きます。塗装工事は決して安いものではありません。家計の負担を軽減するためにも、対象になる工事と申請の流れをあらかじめ確認しておくことが大切です。
屋根の塗装費用は、傷み具合によっては100万円以上になることが多い、高額な工事です。家計への負担は軽いものではなく、多くの人が「少しでも安く済ませたい」と思うはずです。
本記事で解説する補助金・助成金制度は、地域や制度の内容によっても異なりますが、10〜20万円を行政が負担してくれることが多く、返済は不要。工事終了後に後払いで受け取れます。
それでは早速、補助金・助成金を受けるための基礎知識、条件や補助・助成を受けるための申請のタイミング、助成を受けられる塗料などを学んでいきましょう。