屋根の塗装工事を行うのに、30坪の家であれば相場として40~80万円ほどの費用がかかります。大きな出費になりますが、長い間塗装を怠ってしまうと雨漏りなどを引き起こす要因になります。
そして、カビやシロアリの発生を招き、建物自体の損壊を招きかねません。屋根の定期的な塗り替えは必須です。
では、屋根塗装はどのくらいの周期で実施するべきなのでしょうか。塗り替え時期の目安や、工事に相応しい季節などを紹介していきます。
1 . 屋根塗装が必要な時期は?
屋根は定期的に塗り替える必要がありますが、大きな費用がかかる工事であり頻繁には行えません。では、どのくらいの周期で塗装が必要になるのでしょうか。時期の目安となる塗料の耐用年数や劣化症状などを解説しましょう。
1-1 塗料別の耐用年数について
屋根塗装の目安は、一般的には前回塗装した時期から10年が経過した頃だとされています。しかし、大まかな目安であって正確な期間ではありません。屋根に使用されている材質や、塗られている塗料の種類によって変わってきます。
塗料の耐用年数による目安が以下になります。
塗料の耐用年数を知ることで、大体の塗り替え周期が把握できますが、建物が新築でない場合、前回の塗装でどの塗料を使ったかは分かりません。次の塗装時期の見当もつかなくなります。
屋根は常に厳しい自然環境にさらされています。太陽の陽射しにより紫外線を強く受けたり、雨や雪の影響を受けたりすることで、塗料の耐用年数も変動が生じます。そうなった場合、塗装時期を10年周期と考え、実際の屋根の劣化状況から判断することになります。
1-2 劣化症状が現れ始めたら
屋根塗装の時期の目安は、劣化状況を見ることで把握ができます。実際にどのような症状が現れるのかを紹介しておきます。
ただ、屋根は高所にあるため、確認が困難な場合があります。危険が伴うようであれば、業者に依頼してください。
1-2-1 色褪せ
屋根の経年劣化の初期症状として、まず「色褪せ」が挙げられます。年月の経過に伴って屋根の塗装が薄くなり、くすんだような色になる状態です。
色褪せは、塗料の防水機能が低下してきているサインでもあります。症状が進行すると、屋根の内側へ水が浸入しまう場合もあります。それが、屋根の腐敗や倒壊といった深刻な状態につながる可能性もあります。
色褪せは初期症状ですので、すぐに塗り替える必要はありませんが、進行具合はこまめにチェックするべきでしょう。
1-2-2 コケ・カビ
屋根は太陽の光を受け、風通りも悪くない場所のはずですが、コケやカビが発生することもあります。
主な原因としてはやはり、日当たりが悪い、湿気が多いなどが挙げられます。とくに、川が近くにある地域は湿気が多く、コケやカビが繁殖しやすくなります。森が近くにある地域は胞子が飛んできやすいためコケが発生しやすい環境と言えます。
このほかにも、塗料の防水機能が低下し、屋根材に水分が浸入している可能性も考えられます。
屋根にコケやカビが生えていると、みすぼらしく映り、美観を大きく損ねます。高圧洗浄で除去できる場合もあるので、試してみましょう。除去できない場合や、除去してもまたすぐに発生するような場合は、塗り替えを検討しなければいけません。
1-2-3 ひび割れ
屋根の防水性が低下してくると、雨が降ることで浸水が起きやすくなり、屋根材が水を含んだ状態になります。その状態のまま、冬の冷気により凍ってしまったり、逆に夏の強い日差しにより急激に乾燥したりすることで、ひび割れが発生しやすくなります。
ひび割れは、地面の揺れにより生じることもあります。地震が起きた時や車が通ったときの揺れが屋根に伝わり、屋根材に衝撃をもたらすことでひびが入りやすくなります。
ひび割れを放っておくと、その部分からさらに水が浸入し、雨漏りやサビなどの原因となり、屋根に大きなダメージを与えます。損傷を広げないためにも、早めの補修や塗装が望まれます。
1-2-4 塗膜の剥がれ
屋根は経年劣化により、表面の塗膜が剥がれてくることがあります。塗膜の剥がれは、塗装の不要な粘土瓦以外の、ストレートやセメントやカルバリウム鋼板などの塗装が必要なすべての屋根に起こる症状です。
塗膜の剥がれが発生すると、そこから雨水が浸入し、雨漏りを引き起こします。放置しておくと、被害状況が拡大することになります。さらに浸水が酷くなると、屋根材が腐敗して倒壊を起こす可能性もあります。
塗膜の剥がれが生じる原因としては、経年劣化以外にも、業者による施工不良なども挙げられます。屋根塗装は通常、下中上塗りの3工程に分かれますが、塗り終わる度にしっかり乾燥させなければいけません。これが、梅雨時期など悪天候が続くと乾燥しにくい状態となります。
そこで、工期内に作業を終わらせようと乾かないうちに塗り重ねてしまうと、塗膜が剥がれやすくなってしまうのです。
塗り替えの時期は、塗膜の剥がれ具合いにもよりますが、大きく目立つような場合は早急な工事が必要となるでしょう。
1-2-5 サビ
屋根にサビが発生するのは、トタンやカルバリウム鋼板といった金属素材でできた屋根になります。
経年劣化により塗装による保護機能が低下してくると、屋根表面に付いた水分と酸素が反応し合い、酸化することでサビが生じます。サビにもいくつか種類がありますが、屋根に発生するのは主に赤サビになります。
サビは屋根が腐食した状態であり、進行すると素材が脆くなり、穴が開くなどの被害をもたらします。穴が開く前に必ず対応しなければいけません。
塗り替える場合は、すべてのサビを削って除去してからでないと作業に入れません。ですから、サビの範囲が広いほど費用もかかることになるので、早めに対応するのが賢明と言えます。
1-2-6 屋根材の破損
屋根に使用される、日本瓦やセメント瓦には、漆喰が使用されています。漆喰とは、屋根の頂にある棟(むね)と呼ばれる部分と、瓦の隙間を埋めるのに使用される建材です。漆喰の破損や、瓦自体の破損などが、屋根材の破損にあたります。
漆喰の劣化の症状には、黒ずみや剥がれなどがあります。黒ずみの原因は、カビやコケ。雨水などにより湿気を帯びることで発生します。一度発生すると繁殖が早く、劣化を進行させることになります。
漆喰が剥がれると、内側にある「葺き土(ふきつち)」が露出します。葺き土は水を吸収しやすく劣化もしやすいので、漆喰で保護をしています。漆喰が剥がれれば、葺き土にダメージを受け、屋根の破損を招きます。
屋根材の破損は、塗装工事では補えません。速やかに業者に依頼して、修理してください。
2 . 屋根材ごとの耐用年数
塗料の耐用年数が次の塗り替え時期の目安になるのと同様に、屋根材の耐用年数から大体の塗装時期を導き出すことも可能です。屋根材の種類別の耐用数や、劣化した際に現れる症状などを確認していきましょう。
2-1 トタン
トタンとは、表面が亜鉛で覆われた薄い鉄板素材のことです。トタン屋根は、トタン板を重ねてできた屋根のことです。
軽くて施工しやすく、耐震性に優れているのが特徴です。戦後から普及し始めて多くの建物に用いられてきましたが、現在一般住宅ではあまり見かけなくなりました。
トタンは金属製のため、経年劣化が進むとサビが生じます。一度サビが発生してしまうと、急速に腐食が進んで雨漏りなどの被害をもたらす場合があります。耐用年数は30年ほど。7~10年くらいの周期でメンテナンスを行いましょう。
2-2 スレート
スレートとは、玄昌石(粘板岩)を薄く加工した板状の屋根材のことです。「コロニアル」「カラーベスト」とも呼ばれます。軽量で安価でありデザイン性に優れているため、非常に人気の高い屋根材です。
スレート屋根の劣化の症状としては、「割れる」「欠ける」などの破損。強風により「ズレる」「飛んでいく」などのほかにも、防水性に乏しいため、「コケの発生」するケースが多いです。耐用年数としては20年ほどありますが、7~8年ぐらいでメンテンナンスを行うべきでしょう。
2-3 セメント瓦
セメント瓦とは、セメントと川砂を混ぜ合わせて作られた屋根材です。デザイン性に富んでいて、耐火性に優れているのが特徴です。ただ、ストレート瓦同様に、防水性に乏しく、衝撃に弱いというデメリットもあります。
劣化症状としては、衝撃を受けた際の「ひび割れ」や、湿気による「コケの発生」などが挙げられます。瓦としての寿命はストレートよりも長く、耐用年数は30年ほどありますが、10~15年くらいを目安にメンテナンスが必要です。
2-4 ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板は、トタン同様に金属系の屋根材で、主にアルミと亜鉛で構成されています。アルミを加えることで、トタンよりも耐久性に優れています。薄く軽量で頑丈という特徴から、耐震性も高いとされています。
金属製ということもあり、サビによる劣化は避けられません。トタンよりもサビにくいとされていますが、表面に傷が入って発生する「赤サビ」や、高温多湿地域で発生する「白サビ」などの劣化症状があります。
耐用年数としては30年ほど。10~20年周期での塗装リフォームを行うのが理想です。
2-5 粘土瓦
粘土瓦は、天然の粘土を使い、形を整えて高温で焼き上げた瓦です。「日本瓦」「陶器瓦」「いぶし瓦」などとも呼ばれます。
耐久性が非常に高く、耐用年数は50年以上とも言われます。再塗装などのメンテナンスがいらないのも特徴です。
ただ、かなりの重量があり、家にかかる負担も大きくなります。耐震性が低く、地震発生の際はズレや落下が生じ、危険性が高いとされます。
瓦自体に劣化はほとんどないものの、漆喰部分に損傷が起こることがあります。漆喰が劣化すると雨水が浸入し、雨漏りなどが発生します。塗装の必要はなくても、漆喰部分の劣化には配慮しなければいけません。
3 . 屋根塗装に最適な時期
日本には四季があります。暑い季節、寒い季節、雨の多い季節など、様々な特徴があります。塗装工事を行う時期によって、劣化の進行具合が変化することがあります。
では、どの時期に屋根の塗装工事を実施するのが相応しいのでしょうか。
3-1 最適な時期は春
一般的に屋根塗装に相応しいとされる季節は、春になります。塗装において、問題となるのは雨です。雨が降り、屋根が濡れたままの状態で塗装すると、屋根表面と塗料の密着度が下がり耐久性も低くなります。
雨が降って塗った塗料が乾かなければ、塗り重ねていくこともできません。塗料がしっかり乾燥しないうちに塗り重ねてしまうと、塗料の持つ本来の機能が発揮できなくなります。そこで、雨が少なく、日照時間も確保できる春が塗装時期には最適とされます。
ただ、地域差もあります。雪の多く降る東北地方や日本海側の地域は、春ではまだ雪が残っている場合もあります。塗料が乾きにくい状態となり、塗装に相応しい時期とは言えません。雪が多く降る地域の場合は、夏が最適な季節となります。
3-2 繁忙期は費用が高くなることも
屋根塗装に最適な時期は、雨が少なく気温の安定している3~5月の春。もしくは10~11月の秋になります。この時期は、塗装業者にとっての繁忙期となります。
塗装工事にかかる費用は、時期によって変わることは基本ありません。ただ、繁忙期は職人が不足してしまうため、元請けの業者が他の下請け業者に依頼して作業を行う場合もあります。その際にかかる費用が加わり、割高になってしまうことがあります。
繁忙期は、塗装工事の予約が取りにくく、対応が遅れがちになります。見積もりを出してから作業に入るまでの期間が開いてしまうと、その間に劣化の症状が進んでしまう場合も。
修理箇所が増えて、費用が上乗せされる場合もあります。こういった点からも、繁忙期での工事依頼は避けるべきだと言えます。
4 . 劣化状況を見ながら、深刻な事態を招く前に工事を検討しましょう!
塗装工事を行う目安は10年周期とされていますが、劣化の進行具合を見て判断しなくてはいけません。直接屋根を見て、「色褪せ」「コケやカビ」「ひび割れ」「塗膜の剥がれ」「サビ」「破損」などがあるようであれば、塗装を検討する時期にきています。深刻な事態を招く前に工事を依頼しましょう。
工事時期においても、取りかかる時期によって、塗装の耐用年数が下がったり、費用が割高になったりといった状況を招くこともあります。屋根は家の上部を覆い、建物だけでなく家族も守るものです。適切な時期に、適切な工事を実施してください。