家全体を支える基礎にクラック(ひび割れ)を発見した場合、現時点では小さなものであっても、徐々に拡大してやがて大きなトラブルに発展する可能性があります。
症状に応じた適切な補修方法を理解し、早期に対応することで、ひび割れによって起こる問題を未然に防ぐことが可能です。
本記事では、基礎クラック・ひび割れの特徴や具体的な症状、補修方法や費用相場について詳しく解説します。
DIYでの対応可否や、新築住宅や地震被害など特殊なケースについても紹介していますので、基礎のひび割れに悩んでいる方はぜひ最後までご覧ください。
住宅の基礎に生じるクラック・ひび割れの原因と危険性
「クラック」とは、建物の外壁や屋根、基礎などに生じるひび割れ・亀裂のことを指します。クラックが基礎に発生した場合、家そのものの安全性に影響をおよぼす可能性があるため注意が必要です。
まずは、基礎にクラック・ひび割れが起きる原因と、放置する危険性について詳しく見ていきましょう。
- 基礎にクラックが発生する主な原因
- 基礎のクラックを補修せずに放置する危険性
基礎にクラックが発生する主な原因
基礎にクラック・ひび割れが発生する原因としては、大きく分けて以下の4つが挙げられます。
クラックの原因 | 概要 |
乾燥収縮 | 急激な乾燥や気温低下によって、コンクリートが収縮することで発生 |
地震・地盤の影響 | 大きな地震や軟弱な地盤の不同沈下によって、基礎に負荷がかかることで発生 |
コンクリートの経年劣化 | アルカリ性質を持つコンクリートが、雨や大気に長期間さらされ、中性化することによって発生 |
施工不良 | コンクリートの厚み不足や配合ミス、鉄筋の強度不足など、施工中のミスや手抜きが原因で発生 |
中でも多く見られるのが、乾燥収縮によるものです。この原因によるクラックは、経年よりも建築時の気温・湿度の影響が大きいとされており、特に夏場の施工で発生リスクが高まります。
なお、地震の影響や施工不良によって発生したクラックは、保険や保証を適用できる可能性があります。詳しくは記事後半で解説していますので「地震や施工不良に該当するかも」という方はぜひ参考にしてください。
基礎のクラックを補修せずに放置する危険性
基礎に生じたクラックは、家全体の構造や安全性に深刻な影響を与える可能性があるため、放置することは非常に危険です。
もっとも注意すべきなのは「ひび割れ箇所から雨水が侵入して、基礎内部の鉄筋にサビや腐食が生じること」です。
鉄筋にサビや腐食が生じると、基礎の強度が低下するだけでなく、鉄筋の体積が膨張し、基礎コンクリートの剥離・滑落を引き起こします。そうなると、家の構造そのものが脆くなり、地震などの強い衝撃に耐えられず、最悪の場合は地盤沈下や倒壊を招く可能性も。
なお、鉄筋のサビや腐食までいかずとも、幅0.3mm以上の「構造クラック」と呼ばれる深刻なひび割れは、建物の耐震性に影響をおよぼす可能性があるため注意が必要です。
住宅の耐用年数を待たずして大規模な補修工事が必要となり、費用も余計にかかってしまうので、基礎クラックを放置することはなるべく避けましょう。
放置NG!早急に補修すべき基礎のクラック・ひび割れ4種類
ここでは、特に注意すべき放置してはいけない4種類の基礎クラック・ひび割れを解説します。
- 幅0.3mm以上の構造クラック
- 一箇所に集中した多数のひび割れ
- 基礎を縦断するように走るひび割れ
- 水平・横方向に走るひび割れ
基礎クラックの中には経過観察で済むものもありますが、以上のような特徴を持つクラックが見られた場合はなるべく早急な対応が必要です。
幅0.3mm以上の構造クラック
まず注意すべきなのは、基礎に幅0.3mm以上のクラック・ひび割れが発生した場合です。そもそもですが、ひび割れはその大きさによって以下の2種類に分類されます。
- 構造クラック:幅0.3mm以上の深刻なひび割れ
- ヘアークラック:幅0.3mm未満の軽微なひび割れ
基礎のひび割れが幅0.3mm未満のヘアークラックであれば、建物に与える影響は少ないため、補修の緊急性はそこまで高くありません。
しかし、構造クラックの場合は、内部に雨水が侵入しやすく基礎強度や耐震性に多大な影響をおよぼす可能性があるため、なるべく早期の補修が求められます。
一箇所に集中した多数のひび割れ
幅0.3mm未満のヘアークラックや軽微なひび割れであっても、一箇所に集中して多数発生している場合は注意が必要です。
具体的には、1㎡ほどの限られた範囲に3つ以上のひび割れが生じている場合は、基礎の一部が局所的に大きな負荷を受けていると考えられます。
建物全体のバランスや安定性に問題が起きているサインであり、地盤の不同沈下が進行している可能性もあるため、早急に専門家へ相談して対策を講じましょう。
基礎を縦断するように走るひび割れ
基礎を縦断するように走るひび割れは、乾燥収縮によって生じた縦方向のひび割れが深刻化したものです。
縦方向に細いひび割れが入っているだけであれば問題ありませんが、基礎を縦断するまで拡大している場合は、建物の耐久性を著しく低下させてしまうため要注意。
地震や地盤沈下の影響を受けて、ひび割れがさらに拡大していく可能性もあるので、早期に専門家から診断を受けて適切な補修を施しましょう。
水平・横方向に走るひび割れ
基礎に水平・横方向に走るひび割れが見られる場合は、施工不良や構造そのものに原因があると考えられるため、特に早急な対処が必要です。
というのも、基礎のクラックは縦方向に生じる場合がほとんどで、横方向に生じるケースはあまり多くありません。
特に新築にもかかわらず、小さい地震や衝撃で横方向のひび割れができた場合は、施工や設計段階でなんらかのミスや問題が発生し、もともと耐久性が損なわれていた可能性が高いです。
縦方向のクラックよりも雨水が侵入しやすく、大きな地震による被害を受けるリスクもあるため、すみやかに専門家による診断を受け、可能であれば施工業者に補修を求めましょう。
基礎クラック・ひび割れの補修方法と費用相場
基礎クラック・ひび割れの補修には様々な方法がありますが、代表的な工法は以下の3種類です。
- Vカット(Uカット)シール工法
- ビックス工法(エポキシ樹脂注入)
- アラミド繊維シートの貼り付け
それぞれの特徴や費用相場、対応可能なクラックを理解し、自分のケースに適した補修方法を選択しましょう。
Vカット(Uカット)シール工法
費用単価 | 4000〜6000円/㎡ |
施工期間 | 1〜2日 |
おすすめなケース | 構造クラックなど幅・深さのあるひび割れ |
Vカット(Uカット)シール工法は、ひび割れ箇所に専用工具でV字またはU字の溝をカットし、そこにシーリング材を充填する方法です。
溝をつくることでクラックの奥まで隙間なく補修材を注入できるため、構造クラックのような幅・深さのあるひび割れの補修に適しています。
費用は1㎡あたり4000〜6000円、工期は1〜2日と、施工にかかる費用と時間を抑えつつ、基礎もある程度補強できる、コストパフォーマンスに優れた工法となっています。
ビックス工法(エポキシ樹脂注入)
費用単価 | 10000〜20000円/㎡ |
施工期間 | 1〜3日 |
おすすめなケース | ヘアークラックなどの微細なひび割れ |
ビックス工法は、ひび割れ部分に専用器具を設置して、圧力をかけながら少しずつエポキシ樹脂を注入する方法です。
0.1mm未満の細かいクラックでも隅々までしっかりエポキシ樹脂を充填できるため、毛細血管状のひび割れやヘアークラックなど、微細なひび割れの補修に適しています。
施工後は、ひび割れのないコンクリートと同等程度の強度や防水性が期待できるため、基礎の補強工事としてもおすすめです。
アラミド繊維シートの貼り付け
費用単価 | 20000〜25000円/㎡ |
施工期間 | 2〜3日 |
おすすめなケース | 基礎全体を補強したい場合 |
アラミド繊維シートの貼り付けは、強い耐久性を持つアラミド繊維シートを、ひび割れの上から貼り付けて基礎全体を補強する工法です。
アラミド繊維とは、鋼材と比べて約7倍もの強度があり、高速道路のトンネルや橋脚の補強にも使われている素材になります。
大掛かりな工事を想像するかもしれませんが、ひび割れを補修材で埋めてからシートを貼り付けるだけなので、工期は約2〜3日とその他の工法とほとんど変わりません。
費用はやや高く付きますが、横揺れの影響を受けやすいコンクリートの弱点をカバーして、施工前よりも耐震性を高められるため、大きな地震などに備えて基礎全体を補強したい場合には最適な工法です。
DIYはできる?基礎クラックの補修は専門業者に依頼しよう
基礎に早急な補修を要するクラックが生じた場合、DIYで補修することはおすすめしません。
クラックの補修では、専用の工具や器具を扱ったり、クラックの状態に合わせて適切な施工をしたりと、作業の見た目以上に専門的な知識と技術が不可欠です。
誤った補修や施工ミスによって、さらなる問題を引き起こす可能性があることはもちろん、家の構造に悪影響を与えて、安全性を大きく損なうことも考えられるため、無理にDIYで補修せず、専門業者に依頼することを強くおすすめします。
以下からは、ひび割れの補修費用を大幅にカバーできる可能性がある、2つの特殊なケースについて見ていきましょう。
新築の基礎クラックは施工業者へ補修を求められる可能性あり
築数年の新築住宅にもかかわらず基礎クラックが発生した場合、施工業者の施工・設計ミスに原因があったと考えられます。
このような場合、契約書に記載された保証期間内であれば、施工業者に補修を求められる可能性があり、適用できれば補修コストや将来的な負担を大幅に軽減可能です。
ただし、住宅の基礎に生じたすべてのクラックが補修を求められるわけではなく、構造耐力に影響をおよぼす症状などに限られています。新築のひび割れで困っている方は、まずは第三者の専門家に相談して、適用されるかどうかを調査してもらいましょう。
大きな地震による基礎クラックは保険を適用できる可能性あり
大きな地震によって基礎にクラックが生じた場合、地震保険に加入していれば保険金が得られる可能性があります。
適用できれば自己負担費用を最小限に抑えて補修工事を依頼できるため、かならず保険会社に連絡して適用可否を確認しましょう。
なお、保険を適用するには、クラックの発生原因が地震にあること以外にも、「木造建築であること」や「構造クラックであること」などの様々な条件があり、絶対に適用できるものではない点にご注意ください。
住宅基礎のクラック・ひび割れを理解して適切な対応を
本記事では、基礎クラックの特徴や具体的なひび割れ症状、補修方法・費用やDIYでの対応可否などについて解説しました。
住宅基礎のクラック・ひび割れは、放置すると建物全体の寿命を縮める原因となり得ます。特に以下のようなひび割れを発見した場合、放置するのは非常に危険ですので、なるべく早急に補修を行いましょう。
【早急な補修が求められるクラック】
- 幅0.3mm以上の構造クラック
- 一箇所に集中した多数のひび割れ
- 基礎を縦断するように走るひび割れ
- 水平・横方向に走るひび割れ
なお、補修方法や費用相場も見てきましたが、ひび割れが発生した場所や範囲、深刻度などによって、必要な補修方法や費用は大きく異なるため注意が必要です。
まずは自宅のケースでの見積もりを取得して、信頼できる優良業者を選んで依頼しましょう。