屋根塗装を考えるときに、気になるのが塗料でしょう。どんな塗料があるのか、その種類が分からないことには選びようがありません。また、塗料ごとの特徴やメリットやデメリットを理解していないと、適切な塗料選びができなくなってしまいます。
そこで今回は、さまざまな塗料を比較しながら、その特徴を紹介します。
1 . 屋根の塗装に使う塗料の種類
屋根塗装は下塗りをした後に中塗り・上塗りと合計で3回以上重ね塗りを行います。下塗り塗料と中塗り・上塗り塗料は別ですが、中塗りと上塗り塗料は一般的に同じものが使われます。
この重ね塗りは塗料の性能を十分に発揮するための工程であり、屋根の劣化などを防ぐためのものでもあります。
それでは各塗料の具体的な種類と特徴について見ていきましょう。
1-1 上塗り用の塗料
3回以上の塗装のうち、中塗りと上塗りに使われるのが上塗り用塗料になります。
中塗りは下塗り塗料の色を消しつつ、上塗り塗料との密着性を高めるために行います。また、上塗りはもう一度仕上げ塗料を塗ることで、雨や紫外線などへの耐久性を高め、屋根の劣化を抑えるために行います。
上塗り用塗料を2回以上塗らないと、色ムラが出やすくなるほか、塗装部分に塗料の気泡が残ってしまうなどの問題が起こってしまいます。
具体的にはどのような塗料があるのかをご説明します。
1-1-1 アクリル塗料
「アクリル塗料」の主成分は、アクリル樹脂です。アクリル樹脂は軽量で塗りやすい上に発色も良く、1㎡あたり1,000〜1,800円程度とリーズナブルですが、耐用年数が3〜8年程度と短いことがデメリットです。
以前はアクリル塗料が主流の時代もありましたが、現在は、耐用年数が短いことが理由であまり使われなくなりました。どうしても施工費を安く抑えたい人や、塗装を頻繁にする予定の人は、デメリットをよく理解した上で選んでもいいかも知れません。
1-1-2 ウレタン塗料
ウレタン塗料は、塗料の主成分がウレタン樹脂のものを指します。ウレタン塗料の特徴はゴムやスポンジのような弾性を持つことです。そのため、地震などで屋根材に衝撃が加わっても、ウレタン塗膜が柔らかく動いてくれて、塗膜のヒビ割れを抑止してくれることがあります。
また、ウレタン塗料は密着性が高く、下地にしっかりと付着してくれるので、パーツが多い複雑な形状のものへの塗装に優れています。
耐用年数は6~10年と他の塗料よりも少し短めですが、平米単価は1,800~2,000円程度ととてもリーズナブル。耐用年数が短いために塗り替えのサイクルが増え、長い目で見ると負担が多くなってしまう恐れがありますが、一度の塗装費用は抑えることができます。
1-1-3 シリコン塗料
シリコン塗料とはシリコン系またはアクリルシリコン系の合成樹脂を主成分とする塗料を指します。
この塗料は湿気を通しやすく、カビや藻が生じにくい特徴を持ちます。また、屋根は日中と夜間で温度差が激しく結露しやすい場所ですが、内部結露を防止する効果があることも大きなメリットです。
セラミック成分が配合されているシリコン塗料なら、汚れが付きにくく、断熱性・遮断性に優れています。塗膜が剥がれにくく、耐久性も十分です。一方で、ウレタン塗料に比べて弾性に劣るのでひび割れに弱いのがデメリットです。
耐用年数は8~15年と幅が広く、平米単価は2,000~3,000円程度。コストパフォーマンスに優れた塗料と言えるでしょう。
1-1-4 フッ素塗料
フッ素塗料とは塗料の主成分にフッ素が含まれている合成樹脂の塗料のことを指します。耐熱性が高く、太陽光や紫外線に強い性質を持つため、ウレタン塗料やシリコン塗料よりも優れた塗料であると言えます。
また、親水性が高いことから汚れが付着しても落としやすく、カビや藻の発生もおさえてくれます。デメリットは塗料の性能の強さです。
次の塗装しようと思っても塗料を弾いてしまうことがあるため、特別な塗料を下塗りしないといけなくなる場合があります。その場合、余計な費用がかさんでしまうことも考えられます。
耐用年数が15~20年とかなり長い分、平米単価は3,000~4,800円と高くなっています。
1-1-5 無機塗料
無機塗料とは、セラミックやケイ素などの無機物を主成分とする塗料のことを指します。耐用年数が20年以上と考えられているため、他塗料と比べてもかなり耐久性に優れていること、メンテナンス回数を減らせることがメリットといえます。
カビや藻の栄養分となる有機物の含有量が少ないため、それらの発生を抑制する効果もあります。防水性能も十分です。
デメリットは平米単価が5,000~6,000円とかなり高めである点、塗膜が硬い傾向があるためにヒビ割れやすい点が挙げられます。
1-2 下塗り用の塗料
下塗りは屋根材に塗料を染み込ませて中塗りや上塗りの塗料がしっかりと乗るようにするために行います。
もし下塗りがしっかりできていないと、高価な仕上げ塗料を使っても根本から剥がれてしまって効果が発揮されません。また、見栄えも悪くなってしまいます。そのため、下塗りはとても重要な役割があるといえます。
具体的にはどんな塗料があるのか見ていきましょう。
1-2-1 シーラー
下塗り用塗料で一般的に知られているのがシーラーです。これは下塗り塗料を屋根材に吸収させることで下地を補強し、中塗りや上塗りのときに屋根材が仕上げ塗料を過度に吸収してしまうことを抑える目的で使用されます。
また、仕上げ塗料をそのまま屋根材に塗っても上手く密着しないので、シーラーを塗って密着性を高める目的でも使用されます。
1-2-2 プライマー
シーラーは、屋根材に吸収させて機能を発揮する下塗り塗料でしたが、プライマーは屋根材に塗って凹凸面を滑らかにしていく下塗り用塗料と言えます。劣化した塗装面の奥深くまで浸透して下地を補強する浸透性プライマーもあるため、性能や機能面でシーラーとそれほど大きな違いがある訳ではなく、どちらも下地を補強しつつ上塗り用塗料との密着性を高める役割を果たします。
1-2-3 フィラー
フィラーは屋根材の傷や表面の凹凸を滑らかにして、仕上げ塗料との密着性を高める下塗り用塗料です。シーラーやプライマーとの違いはより劣化した下地に適した塗料であること。
凹凸の激しい下地を滑らかにしたり、小さなひび割れを覆ったりする役割を果たします。
屋根材の劣化が激しい場合は、シーラーを染み込ませてからフィラーを塗る場合もあります。
2 . 屋根塗料の選び方
上塗り用・下塗り用塗料の各種類の特徴をご説明しました。耐用年数や価格、機能に差があるので、どれを選べばいいのか迷ってしまう人もいることでしょう。そのため、どのような基準で屋根塗料を選べばいいのかをご紹介します。
注目すべきは耐用年数と価格、性能、臭いになります。
それでは具体的な見方についてご説明します。
2-1 耐用年数で選ぶ
上塗り塗料には耐用年数に大きな違いがあります。そのため、どれくらいのメンテナンス期間を設けたいかで塗料を決めるといいかも知れません。
例えば、ウレタン塗料なら6~10年と耐用年数が短いですが、その分費用は安くなります。しかし、こまめなメンテナンスが苦になる場合は20年以上の耐用年数がある無機塗料を選ぶといいでしょう。その分費用も高くなりますが、ウレタン塗料の2回~4回分のメンテナンス期間をカバーすることができます。
2-2 断熱・防汚など機能で選ぶ
性能から塗料を選ぶ方法もあります。
湿気が多い地域に住んでいる場合は透湿性が高く、カビや藻の発生を抑えてくれるシリコン塗料がオススメです。また、屋根を黒くしたい場合は太陽熱を吸収する傾向があるので、耐熱性に優れ、断熱・遮熱性能を付加したフッ素塗料を選ぶといいでしょう。
劣化を抑え、住宅をキレイな状態にキープしておきたいのであれば無機塗料がオススメです。
2-3 臭いが気になるかどうかで選ぶ
油性塗料にはシンナーが溶剤として使われていることも多く、臭いがきつい場合があります。屋根の塗装なら臭いが気にならないと思うかもしれませんが、2階の部屋で窓を開けていると塗料の臭いがしてくる場合もあります。
水溶性塗料なら臭いが抑えられますが、それでもまったく臭わない訳ではありません。最近では香りのついた塗料もあるため、検討してみるといいかも知れません。
2-4 外壁の塗料よりワンランク上の塗料を選ぶ
屋根は外壁よりも紫外線や風雨の影響を受ける恐れが高い場所です。晴れていれば太陽光を浴び続けることになりますし、雨が降っていれば雨ざらしになります。そのため、屋根には外壁塗料よりもランクの高いものを選ぶのもオススメです。
外壁と同じ塗料を屋根にも使用すると、外壁よりも自然環境の影響を受けやすい屋根の方が先に劣化してくることがあります。外壁塗装と屋根塗装を同じ時期に行いたい場合は、あえて塗料のグレードに差を設けておくといいでしょう。
3 . 屋根塗装で人気の塗料は?
塗料の選び方は分かったけれど、どんな塗料が人気なのかも考慮しておきたいという人もいることでしょう。
人気な塗料にはそれなりの理由があるものです。それを知っておくだけでも塗料選びに迷いがなくなるかも知れません。そこで人気な塗料の秘密をご紹介します。
3-1 シリコン塗料が選ばれる理由
一般的な外壁塗装や屋根塗装の場合、よく選ばれているのはシリコン塗料です。なぜ多くの人がシリコン塗料を選ぶのか、性能面や価格、塗装のしやすさや施工実績の4点からご説明します。
3-1-1 屋根に求められる性能を満たしている
シリコン塗料が選ばれる理由は、屋根に求められる性能を満たしているからです。耐用年数が8~15年と十分な期間があること、セラミック成分の入っているシリコン塗料であれば、汚れが付きにくく、耐久性に優れています。
とくに透湿性があって、カビやコケの発生を抑えてくれることは大きなメリットと言えるでしょう。コケは景観を損なうだけではなく、屋根材の劣化に大きな影響を与えます。それが根酸です。
コケの根からは酸性物質が発生し、本来はアルカリ性だった屋根材を酸性にし、屋根材自体の耐候性を低下させてしまう恐れがあります。
シリコン塗料は、屋根塗料として選ぶのに十分な性能を満たしているのです。
3-1-2 低価格
シリコン塗料の価格が安いことも人気の理由です。ウレタン塗料の方が平米単価が1,800~2,000円と安いのですが、耐用年数は6~10年と短めです。しかし、シリコン塗料は平米単価が2,000~3,000円ほどとリーズナブルながあら、耐用年数は8~15年と長くなっています。
1年間における費用はウレタン塗料で180~333円/㎡。シリコン塗料では133~375円/㎡とコストパフォーマンスに優れ、長期的に見ると経済的であることが分かります。
3-2-3 塗装のしやすさ
シリコン塗料は塗装のしやすさからみてもオススメです。
人気がある塗料のため施工できる業者がたくさんあり、各メーカーからも豊富な種類の塗料が発売されています。そのため、業者も選びやすく、自分の住宅に合った塗料を見つけやすいと言えます。
3-2-4 豊富な施工実績
あまりに高級な塗料や珍しい塗料を選ぶと、施工実績のない業者もあるため、しっかりとした知識を持っている業者を見つけるのも大変になります。
しかし、シリコン塗料は多くの業者に施工経験があるため問題が起きる恐れを減らせます。シリコン塗料の専門知識を持っている業者に塗装を頼めば、塗装する素材の特徴によって、シリコン塗料の中でも向いている銘柄を選んでくれるでしょう。
4 . 最適な塗料を選んで満足のいく塗装をしましょう
屋根塗装を考えている場合、優良塗装業者を選ぶのも大切ですが、希望にあった性能を発揮してくれる塗料を選ぶのも大切です。そのためには各塗料の性能やメリット・デメリットなどをしっかりと理解する必要があります。
耐用年数と価格、景観の良さ、どれを重要視するかという視点も重要です。最適な塗料を選び、満足のいく塗装ができることを願っています。