外壁・屋根の塗装をする際には、ケレン作業が欠かせません。しかし中にはケレンという単語について、聞き慣れない人も多いでしょう。
そこで本記事では、ケレンの意味を解説するとともに、ケレン作業が塗装に欠かせない理由を紹介します。外壁や屋根のリフォームを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
ケレンとは?
ケレンとは、塗装を行う前に下地のサビや凸凹、汚れなどを落とす作業のことを言います。
外壁や屋根に塗られた塗料は、数年経つとサビや塗膜の剥がれが発生します。あらかじめ塗膜やサビを取り去り、下地を清掃しておくことによって、塗料と接着面の密着度が高まり、劣化具合を遅め、美しい仕上がりが実現できるようになるのです。
本記事の後半でも解説しますが、具体的な作業内容としては、塗装する部分の表面を削る、または擦ることで素地をキレイに整えます。作業にはケレンディスクサンダーなどの電気工具を使用する場合もあれば、やすりやワイヤブラシなどを使った手作業を行う場合もあります。なお、建築現場では「下地処理」「素地ごしらえ」などの言葉も使用されますが、作業内容は同じです。
ケレンの語源と由来
ケレンは英語の「クリーン(clean)」が由来とされています。明治時代に日本に来た外国人の技師が清掃を促す際に英語で「クリーン」と言ったことから、日本人が「ケレン」と訛って使い出したと言われています。
ケレンが必要な理由
ケレンは塗装前の重要なプロセスであり、外せない工程です。なぜ塗装前にケレンを行う必要があるのか、その理由は主に3つあります。
1. 塗料を密着させる
上述した通り、ケレンを行う最大の理由は、塗料の密着度を高めるためです。下地にサビや汚れが残っていると、上から塗装をしても塗料がうまく密着しません。また、サビや汚れのある箇所だけ不自然な厚みが生じてしまい、仕上がりも綺麗にはなりません。
塗装する箇所と塗料を密着させるには、ケレンによる下地の調整が必要です。塗料を塗る前に異物を取り除き、塗装面を整えることによって、塗料の密着度が高まります。塗料の密着性が高いほど塗装は長持ちして、仕上がりも美しくなるのです。
2. 塗膜の剥がれを防ぐ
塗膜の剥がれを防ぎ、塗膜を長持ちさせることも、ケレンを行う理由の一つです。 ケレンを行わずに塗料を塗布すると、下地と塗料が密着しないため、塗装して数ヶ月もたたないうちに塗料が剥がれてしまいます。
下地にサビが残った状態で塗装した場合、塗料の下でサビが浸食してしまう可能性もあります。サビが浸食すれば塗料は剥がれやすくなり、塗膜の寿命は短くなります。サビが浸食した塗料が風雨や紫外線にさらされれば、塗面は簡単に剥がれてしまうでしょう。ケレンで下地処理を行い、サビや汚れをしっかり落とすことで、塗料が密着して塗膜の剥離を防げます。塗装の耐久性も向上するため、長期間にわたって外壁を保護する効果を発揮します。
3. 塗料の性能を発揮させる
ケレンには塗料が持つ効果を十分に発揮させるといった目的もあります。塗料にはサビ止め、遮熱、防水、防カビといった複数の機能が付加されたものがあります。ケレンを行わずに塗装のフェーズへと移ってしまうと、塗料がうまく密着せずにすぐに剥がれてしまうため、塗料が持つ本来の性能を発揮できません。
仮に15年以上の耐久性能を持つ高い塗料を使用したとしても、ケレンを行わなければ2~3年で劣化症状が始まることもあります。劣化が早まれば再度塗装を行わなければならず、余計な出費につながってしまうこともあります。塗装を耐用年数まで持たせるためにも、ケレン作業をしっかり行うことが必要なのです。
ケレンの4つの種類
ひと言でケレンといっても、軽めの作業から重い作業まで、大きく分けて4種類があります。劣化の度合いによって種別が分けられており、劣化が最も酷い場合は1種ケレンで対応します。
一般的な住宅では3種ケレンを行うことが多いですが、場所に応じて複数のケレン作業を使い分けることもあります。ここでは、1種から4種までのケレンの作業内容を確認しておきましょう。
1種ケレン
1種ケレンは、ケレンの中でも腐食が非常に激しい場合に行われる作業です。ブラスト法という特殊な工法や、剥離剤という特殊な薬品を用いて行う大規模な作業のため、一般住宅で行われることはほとんどありません。
ブラスト法では、研磨材を表面に高速で噴射して不純物を完全に取り除きます。手作業でケレンができないほど腐食やサビ付きが進んでいる場合に有効な方法ですが、大きな騒音や粉じんの飛散が発生するのが難点です。そのため、一般住宅ではなく、主に橋梁や船舶の防食目的で行われます。
2種ケレン
2種ケレンはディスクサンダーやグラインダーといった電動工具を使用して、下地のサビや古い塗膜などを除去する作業です。サビの範囲が塗装面の30%を超えている場合に適用されることが多いです。
塗膜の劣化や腐食が進行している場合に行われるものの、住宅ではあまり用いない方法であり、主にビルやマンションなど鉄骨鉄筋構造の建造物や橋梁、鉄塔などで使用されます。
3種ケレン
3種ケレンは、密着性が保たれている塗膜(活膜)を残して、劣化して剥がれやすくなっている塗膜のみを除去する作業です。現在、鉄筋コンクリートや戸建て住宅では3種ケレンが主流となっています。
1種や2種のケレンでは活膜も含めてすべての塗膜を取り除く一方、3種ケレンでは活膜を残しながら、部分的なサビを電動工具と手工具を併用して除去します。
相場は1㎡あたり約800円となっていますが、作業内容に応じても変動するため、あらかじめ見積もりを取ることが重要です。
4種ケレン
4種ケレンは、紙ヤスリや研磨スポンジなどの手工具のみを使用し、ホコリなどの軽い汚れを落とす作業です。サビの範囲が狭い場合や、作業が必要な塗付面が5%以下の場合など、全体的に劣化が少ないケースでは4種ケレンが適用されます。3種ケレンに比べても作業工数も少ないため、1㎡あたりの相場は約350円が目安となっています。
塗料の密着性を高める目粗しの作業も、4種ケレンを行う目的の一つです。サンドペーパーなどで下地の表面を軽く擦り、塗料を塗る面に細かな傷をつけることで、塗料の密着性が向上します。
ケレン作業を業者に依頼するべき?選び方や価格について
本記事で解説した通り、ケレンは塗装において欠かせない工程となっています。しかし、ケレンが必要であるにも関わらず、ケレンを省いてしまう、悪質な業者も存在します。そのため、業者選びは慎重に行う必要があります。下記からはケレン作業を業者に依頼する方法を解説するので、参考にしてみてください。
DIYでケレンを実施するのはコストがかかりやすい
塗装費用を安くするために、DIYでケレン作業をしようと考える方も少なくありません。しかし、結論から言うと、DIYで対応するとかえって高いコストがかかるためおすすめできません。
ケレン作業をする際は、スクレーパーやワイヤーブラシ、グラインダーなどの専門工具を一通り揃える必要があります。道具を揃えるだけでも費用がかかりますが、作業にも時間と手間を要します。 また、サビや劣化状況など、どの部分を、どの工具で作業すれば良いのかを見極めるのは素人には非常に困難です。
そのため、実際は業者に依頼したほうが時間・金額的なコストを安く抑えられるケースがほとんどです。時間とお金を節約して高品質な塗装を実現するためにも、はじめから専門業者に依頼したほうがベストな選択です。
メンテナンス・塗装の頻度を適正に
家のメンテナンスを放っておいたままの場合、劣化が進み、その分、ケレンの作業も多がかかりなものになってしまいます。最悪の場合はメンテナンスではなく、補修といった事態につながることもあるでしょう。
このように、劣化状況に比例してケレンの費用は上がります。そのため、定期的なメンテナンスを実施しておくことが大切です。早めに劣化を見つけることで、長期的にケレンの費用を抑えられるようになります。
相見積もりを取る
業者選びで失敗しないためにも、事前に複数の業者から相見積もりを取りましょう。
ケレン作業の費用や工法は業者によって大きく異なります。また屋根は細かい箇所が見落とされることも少なくないため、複数の業者の見積もりを比較して優良業者を選ぶことが大切です。
見積もりを比較することによって、業者がきちんとケレンを行ってくれるかどうかを確認できると同時に、適切な費用相場を確認できるようになります。また、工事内容を比較して事前に手抜き工事を防ぐことができるため、悪徳業者へ依頼するリスクも軽減できます。工事内容・価格の妥当性を確かめるためにも、見積もりは最低でも3社以上に依頼しましょう。
なお、相見積もりを取る際には、「外壁塗装の窓口」が役立ちます。全国の優良なリフォーム・塗装業者のみを厳選して紹介。相見積もりも、複数社から無料で取得することが可能です。まずは是非一度お問い合わせください。
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ケレン作業をするときは優良業者に依頼しよう
ケレンは塗料の密着度を高めて、塗装をきれいに仕上げるために欠かせない作業です。ケレンによって下地を整えることによって、塗装後に剥がれなどの劣化が起きにくくなり、塗料の性能が十分に発揮されるようになります。
外壁や屋根の塗装を業者に依頼するときは、見積書にケレンが記載されているかをしっかりと確認しておきましょう。ケレン作業の記載がない業者やケレンを無償で対応するような業者は、手抜き工事をされる可能性があるため注意が必要です。
ケレンの必要性や作業にかかる費用を丁寧に説明してくれる業者であれば、安心して工事を依頼できます。ケレン作業をするときは必ず相見積もりを取り、優良業者に依頼しましょう。