自宅を増築したり修繕したりする際は、住宅財形を活用できます。うまく活用すれば非課税で工事ができますが、工事内容によっては課税されたり資金を引き出せなかったりすることもあります。住宅財形をうまく活用するには、非課税で引き出す条件や適切な利用方法を把握しておくことが大切です。
この記事では、住宅財形を利用してお得にリフォームする方法を解説します。資金を引き出す前に、非課税で引き出す条件をしっかり把握しておきましょう。
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住宅財形(財形住宅貯蓄)とは?
住宅財形(財形住宅貯蓄)とは、住宅に必要な資金を積み立てる勤労者財産形成貯蓄制度です。勤労者財産形成貯蓄制度(財形制度)とは、勤労者の給与から一定額を天引きし、会社が金融機関に送金して積み立てを行う制度です。
財形制度には、住宅財形を含む3つの種類が存在します。
一般財形(一般財形貯蓄) | 使用用途を問わないため、生活費やレジャー、治療代などに幅広く使える。貯蓄開始から1年経てばいつでも払い出しができ、他の種類との併用も可能。 |
住宅財形(財形住宅貯蓄) | 資金の使い道は、住宅の取得や住宅関連のみの工事に限定。住宅購入や住宅工事以外の要件で払い出すときには非課税の対象外になる。ただし、災害などやむを得ない理由があれば非課税の対象になる。 |
年金財形(財形年金貯蓄) | 満55歳未満の勤労者が加入でき、満60歳以降の5年以上20年以内まで受け取りが可能。 |
住宅財形は、住宅に関わる工事のみに利用が可能です。マイホーム購入に向けて貯蓄したい人に適した制度ですが、利用時と払い出し時にそれぞれ条件があります。
住宅財形の利用条件
住宅財形を利用できるのは、以下すべての条件を満たす人です。
- 勤務先の会社が財形貯蓄制度を実施している
- 満55歳未満の勤労者
- 他の住宅財形契約をしていない
原則として1人1契約となっており、他の財形貯蓄との併用はできません。なお、実際に利用する際は、上記以外にも工事規模や範囲などの条件を満たす必要があります。
住宅財形の引き出し条件
住宅財形は、普通の預貯金のように自由に引き出すことができません。 貯めた資金を非課税で引き出すには、以下の条件を満たす必要があります。
- 契約者本人が建物に住んでいる
- 建物の床面積が50㎡以上
- 中古住宅は築20年以内で一定の耐震基準を満たしている
- リフォーム工事後の床面積が50㎡以上、かつ工事費用が75万円以上
- 非居住部分を工事する場合は、居住部分の工事費用が全費用の1/2以上
工事をする条件や内容によっては、資金の引き出しに税金がかかる場合があります。手元資金をいつでも自由に引き出したい場合は、別の方法で貯蓄することを検討した方が良いでしょう。
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住宅財形でリフォームするメリット
リフォームする際は預貯金を活用する方法が一般的ですが、住宅財形は預貯金にはない3つのメリットが存在します。勤務先の会社が住宅財形を福利厚生の制度として導入している場合は、利用を検討してみましょう。
財形住宅融資制度を利用できる
1年以上にわたって財形貯蓄をしている場合、財形住宅融資制度を利用して住宅購入や修繕工事にかかる費用を借りられます。財形貯蓄残高の10倍以内であれば、最大4000万円までの融資を受け取れます。
返済期間は新築住宅・中古住宅ともに35年となっており、ボーナス払いとの併用も可能です。手持ちの資金だけでは足りず、融資を利用したい場合には、ぴったりな制度だといえます。
普通預金よりも税金面や利率で有利になる
住宅財形は銀行の普通預金口座よりも利率が高く、資金が貯まりやすいメリットがあります。利率にそこまで大きな差はありませんが、同じ金額を入れておくなら少しでも利率が高い方がお得です。
また、住宅財形には非課税枠が設けられており、元利合計550万円までの利息は課税されません。通常、積み立て額の利息は課税対象となり、20%ほど引かれます。550万円以内に抑えられる場合は、非課税枠のある住宅財形の方が税金面で有利です。
給与天引きでお金が貯まりやすい
銀行にお金を預ける一般的な貯金とは違い、住宅財形は会社から給料が天引きされる形で資金を貯めていく方法になります。貯蓄を意識しなくても自然にお金が貯まるため、毎月コツコツお金を貯めていくのが苦手な人にぴったりです。
また、貯めたお金をいつでも手軽に引き出せるわけではないため、うっかり使ってしまう心配もありません。住宅購入に向けてしっかり貯蓄をしたい人には、利用するメリットが大きいといえるでしょう。
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住宅財形でリフォームするデメリット
住宅財形には利点が多い一方で、いくつか気を付けるべき点もあります。良い面だけ見て判断するのではなく、悪い面も確認した上で利用すべきかどうかを判断しましょう。
リフォーム前は一部しか引き出せない
住宅財形の払い出し方法には、「一部払い出し」「全額払い出し」「口座解約」の3種類がありますが、リフォーム前は一部払い出ししか利用できません。一部払い出しで引き出せる金額は、残高の9割までです。
必要な金額が残高の9割未満なら問題ありませんが、必要な額が不足している場合は注意が必要です。 なお、工事を終えた後であれば、基本的にすべての方法を利用できます。
所得控除制度がない
財形貯蓄には所得控除制度がありません。 iDeCo(個人型確定拠出年金)の場合、拠出する全額が所得控除の対象になるため、所得税や住民減の節税ができます。しかし、住宅財形には所得控除制度がないため、現役時代の所得税を軽減しながら住宅購入資金や工事費用を貯めたい人には不向きです。
勤務先に住宅財形がないと使えない
住宅財形は勤労者が勤め先の力を借りて財産形成する制度であり、勤務先に住宅財形がなければ利用できません。現在の勤務先に住宅財形があっても、転職先にない場合も考えられます。
転職先にも住宅財形があれば、所定の手続きを行うことで継続できますが、ない場合は一旦解約するか、別の金融機関への預け替えが必要です。会社によって導入状況は異なるので、勤務先や転職先の担当者に確認しておきましょう。
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リフォーム時に非課税で住宅財形を引き出す条件
自宅をリフォームする際に住宅財形を非課税で引き出すには、いくつか条件を満たす必要があります。お得に工事を進めていくためにも、事前に引き出し条件を把握しておきましょう。
非課税となるリフォーム
非課税となる工事は、以下のような大規模なリフォームに限られます。
- 増改築
- 修繕工事
- 耐震強化工事
- バリアフリー工事
- 省エネ工事
外壁を一部のみ塗り替えるなど、規模が小さい工事は非課税の対象にはなりません。なお、非課税対象となるかは、金融機関や税務機関の見解によって最終的な判断が出ます。また、工事の規模は建築士が判断するため、工事をする際は依頼先の会社や建築事務所に確認しておきましょう。
課税対象となるリフォーム
課税対象となるのは、以下の工事をする場合です。
- 太陽光パネルのみの設置
- オール電化の導入
- 非居住部分の修繕
- 親名義の実家のリフォーム
オール電化の導入は、建築士の判断によって非課税と認められる場合もあります。ただし、非課税の対象となるのは、加入者名義の住宅のみです。親名義の実家は、加入者本人が住んでいても、非課税の対象として認められません。ベランダや駐車場など、非居住部分の修繕工事も課税対象となるので注意しましょう。
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外壁塗装で住宅財形をお得に利用する方法
外壁塗装はリフォームに分類されるので、リフォーム時の払い出し条件をクリアしておく必要があります。必要以上の出費を防ぐために、住宅財形をお得に活用する方法を確認しておきましょう。
工事総額が75万円以上になるように計画する
塗装工事を業者に依頼する際は、工事費用の総額が払い出し条件の75万円以上になるようにプランニングしましょう。外壁塗装にかかる費用は、一般的な約30坪の住宅で約65~90万円程度が相場なので、75万円を下回る場合があります。約30坪以下の住宅だと、75万円を下回る可能性が高いです。
工事総額が75万円を下回る場合は、屋根も一緒に塗装工事をしましょう。外壁と屋根をセットで塗装すれば、20~50万円程度の費用が追加されるため、75万円を確実に超えられます。
また、使用する塗料のグレードを上げるのも一つの方法です。塗装工事の費用は塗料によって大きく変動するため、グレードの高い塗料を選べば、工事総額も高くなります。ハイグレードな塗料は耐久性が高いため、メンテナンスコストを抑える上で効果的です。将来的なメンテナンス計画も踏まえて、業者とよく相談しながら決めましょう。
断熱塗装でリフォームする
断熱塗装は省エネリフォームとみなされ、払い出しの対象になる場合があります。 断熱性能や遮熱性能を持つ塗料で工事を行えば、住宅財形をお得に利用できるだけでなく、住宅の省エネ性を向上させる上でも効果的です。
また、断熱塗装で使用する塗料はグレードが高いことが多く、一般塗料を使用する場合に比べて施工費用が2~3割ほど高くなります。そのため、外壁塗装だけでも工事総額が約75万円を超えやすく、払い出し条件をクリアできます。
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住宅財形で外壁塗装のリフォームを成功させよう
住宅財形は普通預金よりも利率が高く、効率的に資金を積み立てられるのが魅力です。給与から天引きされて積立ができるため、毎月コツコツお金を貯めていくことが苦手な人に向いています。積み立て額が増えるほど税金が有利になるので、普通預金をするよりもお得です。勤務先が導入している場合は、制度の利用を検討してみましょう。
ただし、非課税で引き出すには、いくつか条件を満たす必要があります。工事の内容によっては非課税にならない場合があるため、業者とよく相談しながら準備していくことが大切です。費用面で損しないために、計画的な工事を行いましょう。
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