近年、自分で材料や道具を用意して自宅をDIYする人が増えています。
今回は、外壁塗装をDIYするメリットとデメリット、必要な道具、大まかな手順などをご紹介します。外壁の塗装は、大切な住宅を守る上で重要な役割を果たします。何が必要か、どんな手順で行うかを頭に入れて作業しましょう。
DIYには費用を抑えられるなどのメリットがある一方で、作業内容によっては業者に頼んだ方がいい場合もあります。この記事では、「こんなときは業者に依頼すべき」という基準についても触れますので、外壁塗装のDIYを検討する際に役立ててください。
1 . 外壁塗装のDIYに必要な道具と手順
DIYに大事なのは道具です。「刷毛」ならば、材質や毛の長さによって、塗りやすさや仕上がりが変わりますし、剥離剤の種類によって剥がれ方にも違いが表れます。また、塗料も基材が異なれば、仕上がりや耐用年数に影響を及ぼします。
1-1 道具・塗料選び編
DIY用に販売されている塗料は、一般的にプロが使う塗料に比べてグレードが低いものが多いようです。従って、グレードが高い塗料を使いたい場合はメーカーから取り寄せる必要があります。
外壁塗装には、思ったよりも多くのアイテムが必要になります。しかし、その中に手に入りにくいものはほとんどなく、ホームセンターや通販で購入できるものばかりです。買い忘れがないようにチェックしましょう。
外壁塗装のDIYに必要な道具は、大まかに以下の通りです。
■ 塗料
■ ローラーまたは刷毛
■ ローラー皿
■ バケツ、バケット
■ マスク、ゴーグル、ビニール手袋
■ ウエス
■ 高圧洗浄機
■ 養生シート、ブルーシート
■ マスキングテープ、養生テープ、マスキングテープ
■ スクレーパー、はく離材
■ ワイヤーブラシ、金属製のたわし、サンドペーパーなど
■ ローラーの延長棒
塗料は上塗り用と下塗り用の2種類が必要です。また、塗装に失敗したときのために、塗装を落とせる洗剤や「うすめ液」などがあるといいでしょう。
このほか、安全確保や近隣への配慮のために、脚立やはしご、ヘルメット、塗料固化剤、飛散防止カバーなどの道具が必要です。
また、どれだけ安全な装備をしたからといっても、高所でのDIYは控えましょう。2階部分の外壁塗装には転落等のリスクが伴い、プロであっても細心の注意が必要です。素人にとっては大変危険ですので、DIYではなく業者に依頼することをオススメします。
1-2 DIYの手順
DIYの手順は6つの工程があります。1つでも工程を省いてしまうと、仕上がりや塗装の「持ち」に影響が出ます。自分のペースで作業ができるのがDIYの利点ですから、丁寧に作業できるような無理のない計画を立てましょう。
1-2-1 洗浄
最初に、塗料の密着性を高めるために、高圧洗浄機やホースを使って汚れやコケなどの汚れを洗い流しましょう。汚れがあると塗膜が長持ちしません。
もし、汚れやホコリ、カビなどを除去しきれないまま塗装をすると、1年もしないうちに塗膜が剥がれてしまうでしょう。洗浄の際は、水道水のほかに薬品を利用するケースもあります。
1-2-2 養生
塗装時は、ほかの外壁や地面、設備に塗料が飛散しないように、マスキングテープや養生シートなどで養生します。窓や植木、車などにも塗料が飛び散る可能性があるので、しっかりと養生しておきます。丁寧に養生すれば、塗装の仕上がりが美しくなります。
1-2-3 下地処理
もし、下地が凹凸になっている場合は、表面を滑らかにしておきます。洗浄したとはいえ、劣化した外壁にすぐ塗装をしてしまうと塗料が剥がれてしまいます。古い塗装を剥がした後は、サンドペーパーを使って表面を滑らかにするほか、パテやコーキングなどの補修材を使ってひび割れを補修するなどして、下地調整を行います。
小さなひび割れや欠けは、多くの場合コーキング材だけで補修できます。コーキング材とは、隙間を埋めるための弾力性のある充填材のこと。「コーキングガン」というチューブからコーキング剤を絞り出すための機械を使い、ひび割れや傷にコーキング材を充填し、サンドペーパーで表面を整えます。
1-2-4 コーキングの打ち直し
水が入らないように、コーキングの打ち直しを行います。コーキング材は、シーリング材とも言います。
変性シリコンまたはウレタン製で、「コーキングガン」にコーキング材をセットして使います。押し出す力によって、コーキング材が出る量が異なりますので、ちょっとした「コツ」が必要です。
絞り出したら、「パテベラ」を使って均一になるように直します。余分なコーキング材は拭き取りましょう。このときにしっかり充填しないと隙間から水が入ってしまうため、丁寧な作業が必要です。
1-2-5 下塗り
上塗り材と外壁の塗料をしっかり接着させる目的のほか、外壁が塗料を吸収することを防ぐために、下塗りを行います。下塗りを厚く塗るのは禁物です。塗料は塗り過ぎないように、刷毛・ローラーで塗りましょう。
下塗り用の塗料は2種類あります。
1つ目の「シーラー」は、外壁に吸収されやすい性質を持ち、傷のない外壁に適した「水性シーラー」と、外壁に吸収されにくく傷がある外壁や劣化の激しい場所に適した「油性シーラー」があります。「油性シーラー」は30~60分ほどで乾きますが、「水性シーラー」は、「油性シーラー」よりも時間がかかるのが特徴です。
2つ目は「フィラー」です。凹凸のある外壁の表面を滑らかにするために使う塗料です。粘性があるために、素人には取扱いが難しいと言われています。
下塗りを疎かにすると、塗料が剥がれやすい外壁となってしまいます。塗りムラがないように、しっかりと塗装しましょう。広い面にはローラーを使い、角などの細かな部分には刷毛を使うなど、面倒臭がらずに、塗る場所によって道具を変えることがキレイに塗装を行うコツです。
1-2-6 上塗り
塗装の耐久性を上げるために、上塗りをします。下塗りの塗料が乾いてからでないと、すぐに剥がれてしまうため注意が必要です。
上塗りは一般的に2回行います。2度塗りをすることで塗り残しを防止できる上、見た目もきれいに仕上がります。また、耐用年数を長くする効果もあります。
上塗り用の塗料には、おもに「アクリル」「ウレタン」「シリコン」「フッ素」の4つの種類があります。下記の表に特徴を書いておきます。
耐用年数は、「アクリル」が3~8年、「ウレタン」が5~10年、「シリコン」が7~15年、「フッ素」が12~20年くらいと言われていますが、塗り方や塗る回数、下地の仕上げ方によってもかなり「持ち」が異なります。
2 . DIYのメリット・デメリット
次は、「DIY」のメリット・デメリットについて見ていきます。仕上がりを見て「こんなはずじゃなかったのに……」とならないように、施工前にきちんと把握しておきましょう。
2-1 メリット
外壁塗装のDIYを行うメリットは、業者に依頼するよりも費用が安く抑えられることと、作業の時間を自由に設定できることでしょう。自宅にいる時間が長い人はもちろん、勤めに出ている人でも、自分のスケジュール調整をすればいいだけですから、会社を休むことなく休日だけで塗装することも可能です。スケジューリングを自分で自由にできるのは、大きなメリットと言えます。
2-1-1 業者に依頼するより費用を抑えられる
塗装を自分で行う一番のメリットは、業者に依頼するよりも、費用が安く抑えられることです。業者に依頼すると、材料費のほかに工賃がかかりますので、費用は必然的に高くなります。自分で行う場合は、工賃がかからない上、材料のグレードを落とすなどの選択はすべて自分で行うため、費用をコントロールできます。
2-1-2 業者との日程調整など、手間が省ける
もう1つは、塗装業者に合わせることなく、自由な時間に塗装を行えることです。業者に依頼すると打ち合わせの時間が必要になり、施工時には立ち会いを求められるなど、時間を取られてしまいます。
その上、工期は業者のスケジュールに合わせなければならないケースも少なくありません。スケジュールを自分の都合に合わせられるのは、DIYの大きなメリットです。
2-2 デメリット
一方のデメリットは、当然のことながら業者に頼むよりも塗装の仕上がりが劣ることです。さらには、高所での作業には転落などの危険も伴います。DIYでの塗装を検討する際、メリットよりデメリットが多いと思ったら、業者に発注した方がいいかも知れません。
2-2-1 高所での作業など、危険が伴う
外壁塗装には2階などの高い部分での作業が必要であり、危険が伴います。2階建て以上の建物は、足場を組む必要がありますし、平屋でも脚立に乗って作業しなくてはならず、転落リスクをゼロにはできません。
2-2-2 塗りムラが発生する
塗装作業は一見簡単に見えますが、熟練した技術を必要とする作業です。不透明な色の塗料を塗るときはもちろんですが、透明なものも均一に塗らないと、「ムラ」になるだけでなく、塗装が剥がれやすくなってしまいます。剥がれを放置すると、雨漏りを引き起こしてしまうこともあるため、注意が必要です。
2-2-3 耐久性を確保できない
DIYで塗装を行うと、十分な耐久性を確保できない可能性が高まります。市販の塗料はプロ仕様のものに比べて安価である一方、耐久性が低く、短期間で塗膜が劣化しやすいというデメリットがあります。
また、塗膜の劣化は壁面に均一に起こる訳ではありません。場所によって塗る「厚さ」なども異なりますので技術を要します。そのため、専門家が塗った壁に比べ、DIYで仕上げた壁は耐久性が悪いのです。
● DIYによってかえって費用がかさんだケース
「DIY=安く済む」という方程式が、常に当てはまると思っていませんか。一般的には、業者に発注するよりも、DIYの方が安く済むのですが、そうでない場合も結構あるようです。
例えば、素人では材料をどのくらい使うか分からないため、施工完了後に余ってしまったり、反対に追加で購入したりします。余った場合は処分費もかかります。また、足場だけを単体で業者に発注すると、外壁塗装と一緒に発注したときよりも割高になるケースが多いことも覚えておきましょう。
長期的に見ても、DIYの方が費用が嵩んでしまうこともあります。業者による塗装よりも耐用年数が短く、雨漏りのリスクや構造体への負担が大きくなることを考えたら、DIYをせずに、初めから業者に発注した方がいいこともあります。
3 . 業者に依頼すべきケースとは?
DIYのメリットとデメリットについて見てきましたが、思ったよりもメリットが少ないと感じた人も多いでしょう。ここからは、DIYでは対応できないケースについて見ていきます。
無理に自分で作業を行おうとすると、前述の通り、余計な費用がかかってしまうこともあります。DIYでできることとできないことの基準を把握し、必要に応じて業者への依頼を検討しましょう。
3-1 高所での作業
2階以上の外壁や屋根を塗装する場合は危険が伴うため、業者に依頼した方がいいでしょう。高所作業には、プロであっても落下事故のリスクが伴います。そのためプロは、落下防止のために安全ベルトをする、ヘルメットをかぶる、滑らない工夫がされた安全靴を履くなどの対策をしながら作業をしています。
それでも、「労災」が起こってしまいます。素人が高い所で作業をするなら、さらにリスクが高くなるでしょう。
3-2 同時に屋根も塗装したい
外壁と屋根を塗装したいなら、費用や作業効率の面でも、業者に依頼した方がお得です。高所の作業には足場が必要になり、業者に組み立てを依頼しますが、その費用は予想以上に高額で、作業にかかる費用の中でも大きな割合を占めるものです。
外壁と屋根を別々に塗装するとなると、足場を2回組み立てなくてはなりませんので、さらに高額な費用がかかります。一緒に施工するなら、足場の設置も一度で済み、組み立て代が節約できるのです。また、足場の組み立てと塗装を一緒に発注すると割引をしてくれる業者も多く、足場だけを業者に頼み、自分で塗装するよりもコストを抑えられるのです。
外壁と屋根はどちらも築10年が塗り替えの目安です。同じタイミングでメンテナンスを行った方が、統一感が出て、見た目もキレイです。
3-3 素人では対応できない欠陥がある
外壁の塗膜が剥がれ、長時間放置されたときなどは、住宅の内部にまで損傷が及ぶことがあります。外壁の損傷部から雨水が浸入し、内部を浸食してしまうと、最終的には住宅の基礎部分が腐食してしまうこともあります。
例としてひび割れを挙げると、幅0.3mm以下なら、最低限の技術さえあれば補修が可能ですが、0.3mm以上のひび割れの場合、内部までトラブルが及んでいる可能性があるので、プロに依頼すべきです。
外壁の表面を塗装するのはDIYで対応できますが、内部の工事になると素人では工事が難しくなります。専門業者に相談しましょう。
3-4 美しい仕上がりにしたい場合
美しい仕上がりにしたいなら、DIYではなく、業者に塗装してもらうことをオススメします。素人が塗装をすると、どうしても「塗りムラ」が目立つためです。
使う塗料によって基材が異なるため、「塗りムラ」が余計に目立つものもあります。美しい仕上がりをめざすなら、色の選定にも気を遣うべきです。
「下塗り不要」「これ1本でOK!」などのキャッチコピーがついていて、1種類で塗装ができるような塗料が市販されていますが、要注意です。このような塗料では塗膜が薄くなり、剥がれやすくなります。素地を傷める上に、剥がれが目立ち、美しくありません。
業者が使う塗料は色のバリエーションが豊富です。業者用の塗料を発注してDIYで塗装をするという選択肢もありますが、色のトーン調整など高度な技術が必要になる場合も少なくありません。美しい仕上げにこだわりたい人は、業者に発注すべきです。
4 . けっして無理をせず、業者に依頼することを検討しましょう
DIYで外壁を塗るために必要な道具や工程、メリットやデメリットについて紹介しました。一番大きなメリットは、費用を削減できることですが、材料を買い過ぎたりすると、かえって高く付くことがあります。
メリットよりもデメリットの方が大きいと思ったら業者に発注をすべきです。また、素人が2階の外壁などの高い場所の塗装をしようとすると、危険が伴います。無理して作業するのは止めましょう。
外壁の塗装は、住宅の基礎部分や建材部分など、住宅の「要」となる部分が劣化するのを防ぐためにも大切な作業です。DIYで塗装する際には作業順番を守り、手を抜かずに丁寧に作業し、場合によっては無理をせずに、業者に依頼することを検討しましょう。