気が付くと、天井や壁などにうっすらと広がっている雨漏りのシミ。放置しておくとカビが生えるだけでなく、クロスなど仕上げ材が剥がれることもあります。それどころか、建物の構造そのものを劣化させる原因にもなり、住宅の寿命が短くなる危険性もはらんでいるのです。
「ちょっとぐらいなら仕方がない」と放置しがちな雨漏りですが、そのままにしておくと住宅に取り返しの付かないダメージを与えかねないので、早期に対処したいトラブルの1つと言えます。
1 . 雨漏りの症状と原因
雨漏りは経年劣化などにより発生した随所の傷みなどが原因となり、どの住宅にも発生する可能性があります。そして、その原因は1つではありません。ここでは、そうした雨漏りの症状や原因について説明していきましょう。
1-1 ぽたぽたと水が垂れてきたら末期症状!?
「雨漏り」と聞いてイメージするのは、天井からぽたぽたと水滴が垂れているような場面ではないでしょうか? 実はその状態までいくと、雨漏りはかなり進行しています。
雨漏りとは屋内でぽたぽたと水滴が垂れる現象のことではなく、住宅内への雨水の浸入を意味しています。浸入した雨水は、梁など住宅のさまざまな部位を伝ってどこかに流れ出ようとします。つまり、ぽたぽたし始めたときというのは、この雨水が室内にその姿を見せた状態であり、末期症状とも言えるのです。
病気と同じで、末期に近いものほど治療は大変になります。早期発見を心掛けるべきですが、そのためにはまず、雨漏りというものを知っておく必要があるでしょう。
1-2 雨漏りはなぜ発生する?
雨漏りが発生する原因は1つではありません。経年劣化による建物自体のゆがみや損傷など多岐にわたることも多く、場所の特定も容易ではありません。ただ、雨水が浸入する場所は主に「屋根」「外壁」「ベランダ」などに限られています。
屋根からの雨漏り
屋根から雨漏りが起こったら、屋根材の経年劣化によるひび割れや瓦屋根のズレ、板金の浮きなどを疑いましょう。屋根材の寿命は素材によって異なりますが、一般的に古くなるとヒビが入るだけでなく、素材が水分を多く含むようになり、その水はやがて透過してしまうことも。
また、災害の後に雨漏りするようになったときは、屋根にひびが入っていないかチェックしましょう。屋根材や板金部分がズレる・浮くなどの現象も起こるので、併せて確認が必要です。
外壁からの雨漏り
外壁からの雨漏りが発生した場合、最初にチェックしたいのが「コーキングの劣化状態」です。例えば、サイディングボードのジョイント部分のコーキングが劣化、あるいは切れていれば、そこから雨水は簡単に浸入してしまいます。
ほかにも外壁のひび割れが原因となることもありますが、外壁と比べてコーキングの耐用年数は短いので、先にコーキングをチェックしましょう。ちなみにコーキングの耐用年数は10年ほどです。点検時期の目安の1つにしてください。
外壁がタイル貼りの場合も、コーキングの劣化が雨漏りの原因の1つになります。
コーキングは、割れを防ぐための伸縮目地に使われており、この部分のチェックは欠かせません。また、タイル自体にひび割れが発生することもあります。
ヘアクラックと呼ばれる幅が1ミリくらいのひび割れであれば、現時点では雨漏りの原因にはなりにくいでしょう。ただし、3ミリ以上のひび割れは、雨水が浸透しやすい状態です。例え雨漏り箇所が見つかっていなくても、こうしたヒビを見つけたら雨水の浸入を疑うべきです。
さらにタイルの場合、大きなひび割れがあると剥離の危険性も高まるため、早急な対応が必要です。
ベランダからの雨漏り
ベランダは、日頃から雨風に直接さらされているので、防水層(防水の役割を果たす部材)や排水溝(ベランダに入った水が階下や近隣に流れ出すのを防ぐ設備)が劣化しやすく、雨漏りする可能性が高い部位です。次のようなケースでは、雨漏りが発生しやすいため注意しましょう。
>■ 排水溝に枯れ葉やゴミが詰まり、水はけが悪くなる
>■ 溜まった雨水がベランダの防水層の高さを超え、階下に水が漏れる
>■ 水が溜まり続けることで、防水層、防水塗装の劣化が早くなる
防水層が破損してしまうと、その補修には長いと4日くらいの日数がかかることもあります。ちなみに、費用は7万〜30万円程度が相場です。日頃から、掃除やメンテナンスを心掛け、劣化することを防ぎたいものです。
2 . 雨漏りの修理方法
ここまで雨漏りの原因と種類について解説してきましたが、その修理方法も原因によって異なります。ここでは雨漏りの原因となっている箇所ごとに、詳しい修理方法を解説していきましょう。
2-1 屋根編
屋根の修理の方法は大きく分けて、屋根をすべて張り替える「葺き替え」、既存の屋根の上に新しい屋根を被せる「カバー工法」、破損箇所だけを修理する「葺き直し」の3つがあります。
葺き替え
既存の屋根を解体し、新しい屋根材を用います。後に触れる「カバー工法」「葺き直し」に比べて費用と時間がかかり、相場は30坪の住宅で95~240万円程度です。いままでの屋根を解体する際に下地のチェックができることから、丁寧な屋根のメンテナンスが可能であり、住宅の寿命を長く持たせるのにも寄与するでしょう。
カバー工法
「葺き替え」の工法とよく比較されるのがいまある屋根を解体せず、新しい屋根を被せる「カバー工法」です。費用の目安は、30坪の住宅で70万~90万円。既存屋根の撤去や下地の修理を行わないため、「葺き替え」よりもコストが抑えられ、工期も短縮できます。
葺き直し
屋根のひび割れやズレ・浮きがあった場合は、「葺き直し」という修繕方法を採用します。問題の箇所だけを施工して対応します。一部だけ新しい屋根材を補充することが多く、既存の屋根材の形、サイズと合うかをチェックする必要があります。
2-2 外壁編
最近では外壁に使われる仕上げ材も、さまざまなものが使われるようになり、修理の方法も建材によって異なります。ここでは、その表層部分の塗装とコーキングについて解説していきましょう。
塗装補修
ひび割れしたときは、塗装補修を行います。まず必要なことは、ひび割れた部分の下処理。割れた箇所を専用のカッターでV型にカットし、コーキング剤などで補修します。雨漏りを防ぐ目的だけでいうとこれだけでもいいのですが、実際にはそこだけ色が違って見えるため、このあとに外壁全体を塗り直しすることになります。
コーキングの打ち直し
外壁と外壁にはつなぎ目があり、その隙間を埋めるコーキング。雨水の浸入も防ぐ大切な防水工事の1つですが、その耐用年数は10年程度と言われています。
コーキングがひび割れていたり、痩せが目立ってきたりすると、雨漏りが起こりやすくなるのです。そのため、そうした症状が目立ってくる前にコーキングの打ち直しを行うことが望ましいでしょう。
材料や施工業者によって金額は変わるためあくまでも目安ですが、工期は半日から2日、修繕費用は30坪の建物の場合、5~50万円かかります。
2-3 ベランダ編
雨漏りというと、屋根や外壁から起こるものをイメージしがちですが、ベランダからの雨漏りも意外に多いものです。屋外にあり、外壁との間につなぎ目があることから、防水対策が非常に重要になる部分です。
もしメンテナンスしないと劣化が早まり、雨漏りを起こしやすくなるため注意が必要です。
ベランダからの雨漏りは、つなぎ目の防水加工によって対応できます。大半がコーキングによる補修で対応可能です。ただし、小まめにメンテナンスするのがポイントとなります。
自分でできる応急処置
応急処置として行う作業は大きく分けて3つあります。屋根の補修など、高所作業を伴う場合は危険が伴いますので、十分な注意が必要です。
■ ブルーシートで雨漏りの箇所を覆う … どこが浸水しているか分からないときに有効な方法です。テープや土嚢袋などを置き、雨風に飛ばされないようにしましょう。
■ 補修テープを貼る … 浸水箇所が分かっているときは補修テープを使ってもいいでしょう。
■ コーキングを充填する … ただし隙間なく充填するのには、多少の技術が必要になります。
3 . 雨漏り修繕にかかる費用
雨漏り修繕にかかる費用は、数万円で済むときもあれば数百万円になるときもあります。工事の規模によって金額はまちまちですが、早期発見と綿密な調査をした方が安く済むことが多いでしょう。
3-1 重度の雨漏り修繕費は200万円!?
雨漏りの修理は、一律に「○○円」と決めにくいもの。その理由は、雨漏りする箇所は屋根やベランダなど、広範囲であり、原因が1つではなく、複数であることが多いためです。それゆえ安いものは数万円台で済むものから、200万円以上するものまでバラツキがあるのが現状です。こうした雨漏りの修理代は、ほとんどが次の4つの要素で決まります。
①材料費
②雨漏りの原因調査費
③職人や営業マンの人件費
④業者の利益と諸経費
ただし、こうした項目には定価がありません。また、施工会社によって積算が違うこともあり、費用にはバラツキが出てくるのが現実です。そのため、相見積もりを取り、自分が納得できる施工会社に依頼するのがいいでしょう。ただ、その金額が適正なのかどうかを素人が見定めるのは簡単ではありません。ここではその費用の目安をご紹介します。
【 坪数別の修理費用 】
一戸建て30坪の物件の雨漏り修理費用は、30万〜150万円の価格帯の中にほぼおさまります。
【 雨漏りする箇所でみた修理費用 】
次に、各箇所の修理費用の相場を見てみましょう。
【 調査費用もピンキリ 】
雨漏り修理に重要なのは調査です。それは、雨漏りはたくさんの要素が重なり合った結果として、水が染み出てくるからです。検査方法は様々で、目視調査のような簡易的なものから、発光液調査のような精度の高いものも。費用にもバラツキが見られます。そこで雨漏りの調査方法の違いによる費用の目安を挙げておきます。
■ 目視調査 … 3万円程度
■ 散水調査(外見からは分からない雨漏りの発生源や経路を把握できる)… 3〜10万円
■ サーモグラフィ調査 … 20〜30万円
■ 発光液調査 … 10〜25万円
原因が特定できないと追加工事が発生しかねません。結果として追加費用だけでなく工事に要する時間も伸びてしまいます。そのような理由から、調査費用だけは節約せず、よく調べることをオススメします。
3-2 築10年以内なら無料で直せる可能性アリ
ところで、住宅の修理の際には補助金や助成金を受けられるケースがあります。外壁塗装の場合、自治体によって異なりますが、要件を満たすと10万~20万円が支給されます。おおよそ80~120万円かかる外壁塗装の工事で、この助成金・補助金が使えるとなれば、自己資金は60~100万円と少なくて済むことになります。
たとえば東京都渋谷区では、「住宅簡易改修工事費助成」が実施されています。https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kankyo/kenchiku/shien_7.html
助成金額は、消費税を除く工事費用の20%(千円未満は切り捨て)で、上限は10万円。この助成を受けられる人は次の通りです。
■ 渋谷区に住民登録をしている個人
■ 対象住宅の所有者、所有者の配偶者、所有者の親または所有者の子である
■ 対象住宅に居住している
■ 対象住宅
■ 区内にある住宅(ただし、店舗または事務所などの住宅以外の用途に供する部分および集合住宅の共用部分は対象外)で、この助成を受けたことがないもの(注)ブロック塀など改修については、令和2年度の申請に限り過去に助成を受けていても申請可
■ 建築基準法その他関係法令に適合する建築物であること
また、対象となる工事は
■ 住宅の改修工事、および住宅と一体となっている敷地内(道路部分を除く)の外回り工事(注)新築または増築(増床、屋根の位置が高くなる、壁の位置が外側へ動く)工事を除く
■ 消費税を除く工事費用が5万円以上の工事
■ 区で行っている他の助成制度により助成対象として承認された工事箇所でないもの
■ 令和3年1月末までに申請があり、申請後に着工し、令和3年3月15日までに完了できる工事
ほかの市町村でも同様に、対象となる工事の種類や助成・補助を受けられる人の要件が定められているので、確認してみることをオススメします。一般的なリフォームや改修に加えて「エコ」や「バリアフリー」にすると、助成金または補助金を受けられるケースが多いようです。
3-3 「風災」が原因なら火災保険を適用できる
助成金や補助金以外にも、火災保険が適用できることがあります。
火災保険は火災だけでなく、落雷や風災、水災などの自然災害にも対応しています。もし、台風や大雨が原因で雨漏りが発生してしまったなら、火災保険が適用になる可能性が高いのです。大きな被害はもちろん、外壁の塗装で済むレベルの被害でも請求可能となるケースも多くあります。
この保険では、支払対象となる条件は各社で多少のばらつきがありますが、共通していることは次の通りです。
■ 火災保険に加入していて、「風災/雹(ひょう)災/雪災」で保険金が支給される契約内容である
■ 過去3年以内に風災害に遭った
■ 修理に20万円以上かかった
これらの要件を満たせば、給付金が受け取れる可能性が高まります。ただし、次の場合には火災保険が適用されませんので注意しましょう。
■ 地震により被害にあった場合
■ 経年劣化
■ 施工不良
■ ひっかき傷
■ 工事金額が保険の免責金額を下回っている
4 . 雨漏りは見て見ぬ振りをせず、定期的なメンテナンスを
雨漏りとは、ぽたぽたと水が垂れている状態のことだけを指す訳ではありません。原因や症状は様々ですが、放置していると、住宅の骨組みである躯体が損傷するほか、カビやシロアリが発生するという二次災害が発生するなどして住宅の寿命が縮んでしまいます。
これからも長く住み続ける住宅ですから、雨漏りは決して見て見ぬ振りをせず、定期的なメンテナンスを心がけましょう。
雨漏りの補修にも高額な費用がかかります。失敗を防ぐためにも、相見積もりを取り、工事内容をしっかり把握しておくことが重要です。